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民医連新聞

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相談室日誌 連載607 生活を見越した転院調整 身寄りのない車上生活者(長崎)

 Aさんは当院回復期リハビリテーション病棟へ県外から転院してきた患者です。
 紹介元病院からの転院相談は、「住所は長崎にあるが、身寄りなしの車上生活者で生活背景が複雑。受傷起点不明の外傷性脳挫傷の診断。年金収入はあるが管理は不十分で認知症もある。成年後見申立てを検討も住所地管轄の裁判所で手続きが必要であり、本人も長崎に戻ることを希望している」というものでした。
 Aさんは長崎出身で高校卒業後、電気会社に就職。その後、独立し船舶エンジンの製造会社を設立。取引先は国内外問わず、取引先に長期滞在することもあったそうです。数年前に取引先の顧客に損害を負わせてしまい取引中止。県外に留まりしばらくはビジネスホテルを利用していましたが、支払いも難しくなり車上生活にいたったようです。住民票上の住所地はすでに解体され更地となり、帰る場所はありません。
 状況を鑑み、リハビリをしながら住まいの調整や成年後見申立ての準備も行うことを想定し、当院での受け入れを決定。しかし、転院当日、当院に到着するなり玄関で興奮。脳挫傷による高次脳機能障害や認知症の影響と考えられましたが、あまりの興奮状態に入院評価を行うより精神面のフォローが必要と判断し、早々の精神科紹介方針を主治医が決定しました。ところが背景が複雑すぎること、精神面の評価歴が浅いことを理由に転院調整は難航。連携室内で相談したところ、「紹介先も治療後の退院調整で難航するリスクを見越して前むきな検討ができない可能性もある。専門治療後の入居先を調整しつつ転院相談をしてみては」とアドバイスがありました。そこで身寄りなしケースの受け入れ実績のある施設へ相談。施設側は治療後の入所を快諾し、精神科にその旨を伝えてあらためて相談すると無事転院先も見つかりました。成年後見申立てについては当院入院中Aさんから同意をもらえず、転院先へ対応を引き継ぐことになりました。
 この事例を通して、ただ単に転院調整をするのではなく、患者の治療後の生活を見越して先に施設調整を行い、転院相談をする交渉技術を学びました。

(民医連新聞 第1857号 2026年8月3日号)