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民医連新聞

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「食べることは生きること」口から治療に貢献する歯科衛生士 山口・宇部協立病院

 病棟における歯科衛生士の役割が注目されています。宇部協立病院(山口県宇部市)を訪ねました。
(多田重正記者)

 「失礼します。私の目を見て。覚えています?」「覚えとる、覚えとる」「濱本です。今から歯磨きしますね」―昼下がりの病棟で歯科衛生士の濱本操さんが患者に声をかけ、同じく歯科衛生士の高山亜希恵さんが表情や反応を見ながら、歯ブラシ、糸ようじなどを使って口腔ケアをしていきます。
 同院の歯科衛生士配置は2018年から。学習会も行い、口腔ケアが誤嚥性肺炎、感染症、術後の合併症を予防すること、口から食べられれば栄養状態の改善につながることなどを学びました。高齢者の口腔評価にとりくむこと、看護師による口腔ケアの負担軽減も目的に、歯科衛生士を配置しました。
 当初は協立歯科に勤めていた濱本さんを、再雇用のタイミングで病棟に配置。現在は高山さんとの2人体制で、濱本さんが療養病棟、高山さんが急性期病棟を中心に担当しています。

医療の質向上 病院内に変化が

 歯科衛生士の配置は、医療の質向上につながっています。
 「たとえば全介助の患者のADL(日常生活動作)が改善すれば、座位を保つ、口を開く、歯ブラシを自分で持てるようになるなど、できることがひろがり、歯科衛生士や看護師のかかわり方も変わります。歯科衛生士は入院時に持ち込まれた義歯を見て、そのまま使っていいのか判断しますし、全身状態が悪ければ口腔状態も悪化していることがあるため、観察します」と高山さん。「必要に応じて口腔内の状態、義歯の使用に関する注意点、処方が必要ではないかと思われる病状なども、看護師に伝えます」。
 病棟は3つですが、歯科衛生士は2人。全患者の口腔ケアを歯科衛生士だけでになうことは困難で、看護師の協力は不可欠です。病院全体で口腔ケアをすすめた結果、看護師が口腔ケア用のスポンジブラシの残数を点検し、足りなければ補充し、「これがあれば、私たちも口腔ケアができる」との声も聞かれるなど、変化が生まれています。
 変化は他の職種にも。「口の健康は食事がきちんととれることにつながり、リハビリにとっても大事です」と理学療法士の角優作さんは話します。歯科衛生士は、リハビリ技術者と同じ臨床技術部の所属になっています。「患者が『口のなかが痛い』と言っても、私たちでは問題の箇所がわからないことも多い。歯科衛生士が来たことで、リハビリ技術者も気軽に相談できるようになり、口腔内の健康に対する意識が高まった」と角さん。
 入院時のアセスメントでも、口腔内を評価。最近も、股関節の骨折で入院した90代患者の顎骨壊死が見つかりました。骨粗しょう症の薬剤によるものでした。
 認知症があったため、同居の家族もそのままにし、受診していませんでした。隣接する協立歯科の歯科医師に依頼して、病棟まで往診に。看護師と歯科衛生士が連携してケアを続け、現在は状態も安定しました。整形外科の主治医も治療の必要性を家族に伝えました。今は家族の協力で月1回、近隣病院の歯科を受診しています。

歯科衛生士を中心に病院の口腔ケア充実を

 抱負をたずねると、臨床技術部長の服部晶子さん(薬剤師)は、「歯科衛生士を中心に、口腔ケアに求められる情報を積極的に発信し、病院全体の口腔ケアを充実させたい」と語ります。
 濱本さんは「健文会(法人)に就職した際に、食べることは生きること、と大先輩に教えられてきました。私の担当する病棟は認知症の患者が多く、口から食べられない患者も多いのですが、人として寄り添った口腔ケアを行うことで、せめて入院期間中は患者に満足してもらえるようなケアをしていきたい」と話してくれました。

(民医連新聞 第1858号 2026年8月17日号)