相談室日誌 連載608 住居失った労働者の支援 脳梗塞で意思決定困難な例(北海道)
苫小牧は工業都市。製造業従事者について、市の相談窓口の担当者と懇談していると、労働条件に「社員寮あり」を求めて道外から苫小牧にたどり着くケースも多いと。しかし、病気などで仕事ができなくなると、同時に住みかも失います。
50歳代後半の男性Aさんは、派遣会社で自動車部品の箱詰め作業に従事し、会社の借り上げアパートで一人ぐらしをしていました。職場に出勤していないので自宅を訪ねると、倒れているところを職場の同僚が見つけ救急車で搬送。脳梗塞の診断で急性期病院に入院し当院にリハビリで転院してきました。Aさんは道外出身で近くに頼れる家族や知人はおらず、発症後は仕事ができなくなったことで退職となりました。
退職にともない会社からアパートの退去を求められましたが、荷物の保管場所の確保を会社側と交渉し、リハビリスタッフの協力を得ながら本人と荷物整理を行いました。また、新たな住居探しでは、保証人の不在や過去の信用情報に傷がついているため、契約できる物件が限られました。不動産会社へ本人の支払い能力を説明し、保証会社の緊急連絡先となる親族にも保証人との違いを説明して理解を得ることで、最終的に賃貸契約を結ぶことができました。
生活費は傷病手当金の申請を支援しましたが、職場の担当者変更による引き継ぎ不足、発症から5カ月が経過しても支給の目途が立たず、支給が大幅に遅れたため、一時的な生活資金を確保する目的で生活保護の申請を行いました。医療費の支払いも困難だったため、生活保護の申請までは無料低額診療事業を申請しています。その後、Aさんは体力低下やめまいが残るものの、歩行可能な状態まで回復。退院し、定期的に外来通院しています。Aさんは派遣会社の勤務で、傷病手当の対象が正職員に限られるものと勘違いし、受給できる権利があることさえ知りませんでした。
脳梗塞などの疾患を発症し、自分で考える能力が低下した人で、家族などの支援が不在の場合には手続きができないことも多々あります。ソーシャルワーカーが支援者としての役割をになっていると思いますが、本人が申請しなければ給付されないシステム自体に課題があると感じています。
(民医連新聞 第1858号 2026年8月17日号)
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