これで学ぶ 暮らしのなかの社会保障 ⑤OTC類似薬の「一部保険外療養」の導入は、国民皆保険体制を掘り崩す
健康保険法等改定法は、改悪に反対する国民の声を無視し、十分な審議を尽くすことなく2026年5月29日に可決・成立しました。
改定では、(1)OTC類似薬に関して「一部保険外療養」の導入、(2)後期高齢者医療制度において、保険料・一部負担算定に金融所得を反映、(3)高額療養費制度に年上限設定、(4)国民健康保険における子どもの均等割保険料を高校生まで半減する、などです。
現在保険給付と保険外給付の併用が認められているのは、「保険外併用療養(評価療養、患者申出療養、選定療養)」のみですが、今回OTC類似薬給付の一部(25%)を保険給付外とする「一部保険外療養」が創設されました。医師が療養に必要とし処方した薬が、すでにOTC薬が存在することを理由にOTC類似薬費用の一部を保険給付外とすることは、医師の治療における裁量権の否定につながります。
同制度の導入により、対象となるOTC類似薬と、OTC薬との価格差が縮小し、多くの患者が病院受診を回避し、ドラッグストアなどでOTC薬を購入することとなります。疾病は、素人が「軽い」と考えても、実は重篤な疾病の前触れかもしれません。受診抑制は、医療における早期発見・早期治療との基本理念を崩し、日本の皆保険体制崩壊の「蟻の一穴」となりかねません。
政府は、2026年5月21日の参議院厚生労働委員会で、「法案第63条第2項第6号の規定だけを見ると、薬剤以外の療養の給付全般を対象にしている」との法解釈をしめしましたが、その立法事実を説明できず、1週間後の審議で「薬剤のみを対象としたもの」と法解釈を修正しました。白川容子議員(共産党)は、「薬剤のみが対象との解釈をしめしたのだから、『一部保険外療養』も対象は薬剤以外の療養を含むことができないよう条文上明確に規定すべき」としましたが、高市早苗首相は「『その他の療養』の前段に『代替性が特に高い薬剤を用いた療養』と記載されていること、附則の検討規定を踏まえると、一部保険外療養の規定の趣旨としては薬剤のみを対象としたものと解釈している」と明言し、「条文の見直しは考えていない」と回答しました。
「代替性が特に高い薬剤を用いた療養」に関して、厚生労働省や首相は、「薬剤」のみが対象としましたが、法文上「療養」となっていることから、薬剤以外も含むものと読み取れ、将来的には、その解釈が「療養全般に拡大する」余地を残しました。
法改正により「一部保険外療養」制度が導入されたことで、今後は成分・対象薬剤の種類、保険給付外の割合、薬剤のみを対象とするのかなどに関しても、国会の審議・決議が不要の「政省令」で定められることとなり、政府の恣意的操作が危惧されます。
社会保障研究者・水彩画家
芝田英昭
(民医連新聞 第1859号 2026年9月7日号)
