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民医連新聞

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地域 民医連 ケア 三つの「丸ごと」で介護保険制度の抜本改善を 全日本民医連事務局次長 加藤久美さんに聞く

 全日本民医連は6月、介護保険制度の抜本改善を求める「介護ウエーブ2026基本方針」を決定し、全県に発信しました。中央社保協とともに新しい介護請願署名を作成し、運動を大きくひろげようと提起しています。全日本民医連事務局次長の加藤久美さんに話を聞きました。(多田重正記者)

 介護保険制度は2000年4月、「介護の社会化」を掲げて始まりました。「介護の社会化」とは、介護を家族だけでなく、社会保障制度など社会全体で担うことです。
 しかし国は同制度の発足後、逆の政策をすすめてきました。保険料は年々上がり、1割負担で始まった利用料も一定以上の年収を条件に2割、3割負担が導入されてきました。介護を受ける権利が十分保障されているとは言えず、介護を苦にした心中、殺人などの事件が今も後を絶ちません。
 実施したサービスに応じて、介護事業所に入る介護報酬も抑制され続けた結果、介護従事者の賃金は全産業平均より8万円以上低くなっています。今年6月、処遇改善加算が増額(最大一人当たり月1万9000円増)されたものの、格差解消には程遠く、人材確保に困難を生じています。
 これらの現状を打開するために、全国で大きく運動をひろげ、介護保険制度の抜本改善と、介護従事者の大幅な処遇改善を実現しようと提起したのが、「介護ウエーブ2026基本方針」です。

制度の根幹を壊す
改正介護保険法の問題点

 基本方針では、具体的な方針として次の四つを掲げています。
 方針の一つ目は、今年6月に国会で成立した改正介護保険法の問題点を、利用者や地域の介護事業所にひろげて共有することです。
 改正介護保険法には、大きく二つの問題点があります。
 問題点その1は「特定地域」の導入です。中山間・人口減少地域を「特定地域」とし、新たな給付や事業を創設します。都道府県が「特定地域」に指定すれば、「特定地域サービス」「特定地域居宅介護サービス等事業」を行うことができます。市町村だけでなく、もっと狭い範囲(学校区など)でも設定できるとされています。
 特定地域サービスでは、人員配置基準を緩和できます。介護報酬も包括化(複数以上のサービス内容をひとまとめにして定額に)でき、介護報酬が低く抑えられる危険もあります。
 特定地域居宅介護サービス等事業では、人員配置基準などはこれから検討するとしています。もっとも重い要介護5の利用者もこの事業の対象にできます。
 これら「特定地域」の導入は、全国どこでも同じサービスを受けられる介護保険制度の根幹を崩す、重大な改悪です。住む地域によって受けられる介護の内容が違う、という事態が起きる危険が高くなります。介護の質低下、利用者の安全面なども危惧されます。
 問題点その2は、有料老人ホームやサービスつき高齢者住宅(サ高住)の相談に関する有料化(ケアプラン作成)の導入です。
 有料老人ホームには大きく「介護付き」と「住宅型」があります。「介護付き」はケアプラン作成も老人ホームの介護サービスとみなされるため、利用料が発生します。一方「住宅型」は介護サービスの提供を外部から受けるため、ケアプランは、在宅で介護サービスを受ける時と同様に無料です。
 今回の改正介護保険法では、後者(住宅型)とサ高住のケアプラン作成を施設間の「均衡を保つ」として有料化しました。
 しかし政府は、これまでもたびたびケアプランの全面有料化を掲げてきました。今回の有料化を許せば、今後すべての介護サービス利用者のケアプラン有料化につながる恐れがあり、見過ごせません。

新介護署名を使って
学び合い対話を

 方針の二つ目は、新介護署名の内容を学習し、改正介護保険法と同様に利用者や地域の介護事業所にもひろげることです。
 新介護署名は、(1)訪問介護の基本報酬をはじめ、介護報酬全体の大幅な底上げを行うこと、その際はサービスの利用に支障が生じないよう、利用者負担の軽減などの対策を講じること、(2)介護保険の利用に困難をもたらす利用料2割負担の対象拡大、有料老人ホーム入居者のケアプランの有料化などの見直しを行わないこと、人口減少地域の介護サービスの基準緩和、保険給付はずしを行わないこと、(3)全額国庫負担により、すべての介護従事者の賃金を全産業平均まで早急に引き上げること。介護従事者を大幅に増やし、一人夜勤の解消、人員配置基準の引き上げを行うこと、(4)すべての地域において、必要なときに必要な介護が保障されるよう、介護保険料、利用料、居住費・食費などの費用負担の軽減、サービスの拡充による介護保険制度の抜本的な見直しを行うこと。介護保険財政に対する国庫負担の割合を大幅に引き上げること、を要請項目に掲げています。来年5月末までに中央社保協全体で50万筆、そのうち民医連で25万筆を目標としています。
 署名用紙の裏面は、学習資料になっています。図1~4のようなグラフも交えながら、介護現場の人手不足が深刻で介護従事者の処遇改善がすすんでいないこと、事業所の倒産・廃業件数が過去最多となっていること、介護保険料が上がり続けていることを解説しています。前述の特定地域の問題にも触れています。
 「基本方針」にくわえて、署名用紙も活用し、職員同士で学び合い、利用者や地域の介護事業所と対話して、署名をひろげてもらえればと思います。

利用者・介護事業者の声を
国や自治体に届け反映させよう

 方針の三つ目は、利用者や介護事業所から寄せられた声を集めて国会や厚生労働省、自治体に届けることです。
 2024年の介護報酬改定では、1・59%の介護報酬改定でしたが、0・98%が介護従事者の処遇改善加算で、訪問介護の基本報酬はのきなみマイナス改定でした。これも引き金になって、介護事業所の倒産・廃業は2024、2025年と2年連続で過去最多を更新しています。民医連が各地で訪問介護事業所などに聞いたアンケートでも「加算を増やしても、基本報酬が下がってしまえば事業の経営は成り立たない」などの声が殺到しました。このような現場の実態を踏まえたリアルな声をもとに記者会見を開くなど、マスコミに積極的に発信することにも挑戦してほしいと思います。
 方針の四つ目は、自治体の第9期(2024~2026年度)の介護保険事業計画の進捗(しんちょく)状況を把握し、利用者や介護事業所の声も届けて、第10期介護保険事業計画(2027~2029年度)に反映していくことです。
 介護保険料の軽減や人材確保の他、「特定地域」導入によるサービス後退を許さないとりくみも重要になります。

事例や現場の実情も出し合い
幅ひろい人びとと対話しよう

 基本方針では、介護ウエーブを「地域丸ごと、民医連丸ごと、ケア丸ごと」の三つの「丸ごと」のとりくみとして推進することを強調しています。ここでいう「ケア丸ごと」とは、介護だけでなく、医療や保育、そして利用者、患者、認知症の人と家族の会など、ケアにかかわるすべての人です。幅ひろい人びとと対話し、ともに運動をすすめてほしいと思います。
 政府は、介護保険制度の改悪を繰り返してきました。たとえば、介護保険制度開始からわずか5年後の2005年に、施設入所者の食事代や居住費を自費に。2012年には訪問介護の生活援助の単位を60→45分に短縮しました。
 2015年には、特別養護老人ホームの入居者を要介護3以上に限定。2割負担が導入されました。
 2017年には要支援1・2の通所介護・訪問介護を全市町村で介護保険からはずし、自治体の「介護予防・日常生活支援総合事業」へ移行。2018年には3割負担が導入されました。
 さらに政府はこの間、利用料2割負担の対象拡大、ケアプランの全面有料化、要介護1・2の生活援助の保険はずしなどをねらってきました。民医連はこれを介護保険の「3大改悪」と呼び、阻止のためにたたかってきました。運動の力で、昨年も押しとどめることができましたが、政府は今もあきらめていません。
 こうした改悪が続くのは、政府が介護をはじめとしたケアを軽視しているからです。しかし介護は高齢者をはじめ介護を必要としている人たちがその人らしく生きることをささえる大切な仕事です。
 介護保険の報酬改定は3年に1度です。次の改定は2027年ですが、今年6月に不十分ながらも処遇改善加算の「期中改定」が実現した背景には、「これでは事業が成り立たない」「人材が確保できない」という全国の介護従事者をはじめとした運動の力がありました。
 政治は動かすことができます。介護実践のなかで感じた喜びややりがい、逆に苦労や悩んでいることなどを事例と合わせて出し合い、共有して、介護の魅力や現場の実情も発信して、介護保険制度の抜本改善、介護従事者の大幅な処遇改善を実現しましょう。

(民医連新聞 第1859号 2026年9月7日号)