これでばっちりニュースな言葉 こたえる人 働くもののいのちと健康を守る全国センター 事務局次長 徳山 通さん 10月からカスハラ対策が義務化! ~患者・利用者も職員も大切にされる現場へ~
「カスタマーハラスメント対策」と「就職活動中の学生に対するセクハラ(就活セクハラ)防止措置」が、事業者の法律上の義務になります。改正法(労働施策総合推進法など)が今年10月1日から施行され、すべての事業者・法人に義務付けられます。働くもののいのちと健康を守る全国センターの徳山通さんが解説します。
Q1.義務化の背景は?
理不尽な暴言や過剰要求で、働く人が心の病を抱えたり、離職に追い込まれたりする被害が深刻化していることが背景にあります。
Q2.法律で義務化されるなら安心?課題はあるの?
今回の法改正には重要な課題が残されています。
第一に、日本の法律は事業主に「相談窓口をつくる」などの管理体制を義務付けただけで、「ハラスメント行為そのものを法律で禁止」していません。一方で自治体の条例などで規制する動きもあります。
第二に、政府の捉え方は「働く環境の不快感」という労働管理の視点が中心ですが、ハラスメントの本質は「個人の尊厳を傷つける人権侵害」です。国際労働機関(ILO)が定めた「ILO第190号条約」ではハラスメントを人権侵害と位置づけ全面禁止を世界基準としており、日本でも世界基準に追いつく包括的なハラスメント禁止法の制定が求められています。
Q3.何が「カスハラ」にあたる?判断の難しさはどこにある?
現場でもっとも悩ましいのが、「正当なクレーム」と「カスハラ」の境界線を見極める難しさです。
医療や介護の現場では、説明不足や待ち時間、医療への不安などから患者・利用者側が強い意見をのべることがあります。なかには医療の質や安全に必要な「正当な意見や改善の要望」も含まれており、ひと括りに「カスハラ」として排除してはなりません。
一方で、主張内容にかかわらず「長時間の不当な拘束」「大声での暴言や脅迫」「SNSへの投稿を示(し)唆(さ)して脅す」といった過剰・攻撃的な言動(手段・態様)はハラスメントにあたります。「要求内容」と「伝え方」の両面から冷静な判断が求められます。
Q4.医療や介護の現場でのカスハラの実態は?
厚生労働省の調査では、カスハラ相談があった業種のなかで「医療・福祉」が53・9%でトップでした。患者や家族からの不当な暴言・脅迫はペイハラ(ペイシェントハラスメント)とも呼ばれ、京都医労連の調査でも、職員の約4割が「被害を受けた、または見聞きした」と答えています。誰にも相談できず我慢を重ねて休職や退職に追い込まれるケースも。病棟や外来だけでなく、訪問現場での複数訪問などの対策も切実な課題です。
Q5.これから事業所や法人(病院・施設)で何をすべき?
今後カスハラ対策は、労契法にもとづく事業主の「安全配慮義務」の一環としても強く求められるようになります。放置して職員が健康を害した場合、事業主が安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われるリスクもあります。現場個人の問題にせず、組織全体で対応する仕組みが必要です。(表)
働くもののいのちと健康を守る全国センターの季刊誌2026年夏号・108号はカスハラ対策の特集です。ぜひご一読ください。

(民医連新聞 第1859号 2026年9月7日号)
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