相談室日誌 連載609 問い合わせは最初の入口 当事者の思いへ支援模索(長野)
近頃、若い人からの問い合わせで「無料低額診療事業」(以下、無低診)を知りたいといった相談が増えました。どうやってこの制度を知ったかを確認すると、「Google」や「AI」が教えてくれたと話し、県外からの問い合わせもありました。
40代後半のAさんから電話で問い合わせがあり、面談しました。九州の工場を退職後、アパートの家賃が支払えず引き払い、少しでも涼しい場所へと長野県に来て、車上生活をしていました。小児期よりアトピーと喘息がありましたが、薬を切らしていました。退職で無保険になり、医療費を軽減する方法を携帯電話で調べたところ「無低診」を知り、連絡をくれました。
日雇いのバイトに合わせて、県内各地を移動。エリアを決めてしまうと不審車両と思われることを懸念し、日替わりで移動することにしているそうです。ゆくゆくは社員寮がある会社へ就職し、社会保険に加入をしたいので、生活保護利用は考えられない、国保にも加入しないとのことでした。
ひとまず薬の継続が必要と判断し、受診と同時に無低診の申請手続きをしました。数日後、無低診の制度が通ったことを伝えるために電話をしましたが、何度連絡をしてもつながりませんでした。その後、本人から連絡があり、判定の結果と今後、再度相談したい旨を伝えましたが、仕事が忙しく、すぐには来院できないということでした。その後本人から連絡はなく、こちらから連絡しても、つながらない状況で、連絡は途絶えてしまいました。
「ひとまず今、薬だけもらえれば」との要求に、こちらは「まず身体と生活を整えませんか」と伝えたいところですが、それぞれの事情もあり難しさを感じています。
問い合わせは最初の入り口で、「その場しのぎ」の感覚であったとしても、私たちがかかわることで、今後の生活を現実的にみすえたものにしていくか、SWとしての力量が試されていると感じています。
人工知能の発達により、当事者自らが情報を得て発信しやすい時代になったのかもしれません。そこは時代の変化による強みとも考えられますが、その後、自分たちがどうかかわれるかが肝心であり、今後も支援のなかで模索していきたいと思います。
(民医連新聞 第1859号 2026年9月7日号)
