• メールロゴ
  • Xロゴ
  • フェイスブックロゴ
  • YouTube
  • TikTok

民医連新聞

民医連新聞

医療機関受診に遠いギャンブル依存症 回復の基本は対話と患者のつながり

 アルコール依存症、薬物依存症などで受診する患者に接する機会はありますが、パチンコなどのギャンブル依存症の多くはお金の問題に困ることが多く、医療機関につながりにくい問題があります。愛媛生協病院 精神科・心療内科の今村高暢さんに聞きました。
 (長野典右記者)

 依存症は、わかっちゃいるけどやめられない状態で、嗜癖とも言いますが、ほぼ同じと考えてもらっていいです。依存症は大きく二つに分けられます。アルコールや薬物などは物資的な嗜癖、ギャンブル、ゲーム、万引き、摂食障害などは行為的な嗜癖です。
 嗜癖の共通性は、適切な範囲を超えた慢性進行性の行動障害、身近な家族や他者を巻き込む、気分を劇的に変化させる作用、問題の否認、再発が多いことですが、なかでも背景に対人関係障害の存在があります。依存症の患者は、自己評価が低く自信がもてない、人を信じられない、本音を言えない、見捨てられる不安が強い、孤独で寂しい、自分を大切にできない特徴があります。これは、幼少時から生育環境、親との関係で安心感や安全感を持てなかったことに起因することが多いです。

■意思の弱さでなく脳疾患

 依存症は単なる「心の甘え」や「意思の弱さ」ではなく、脳の機能変化をともなう慢性の脳疾患です。心理的要因とともに脳内の神経伝達物資や報酬系の異常が疾患形成に深くかかわっています。
 依存症者の脳内では、アルコール、ギャンブル、薬物、ゲームなどで快楽や安心を得たいという報酬系ドーパミンが過剰に活性化します。このために、快感、安心、幸福感を一時的に得られ、「つらさを忘れたい」という現実のストレスや不安から一時的に逃げたいという欲求が強くなります。また並行して、意思決定や理性、判断力をつかさどる前頭前野の機能が低下し、「やめたいのにやめられない」状態になります。

■オンラインギャンブルへ変化

 ギャンブル脳は、「三ザル状態」と「三だけ主義」が特徴です。三ザル状態は「見ザル、聞かザル、言わザル」です。自分の病気が見えず、助言も受け付けず、自分の心中を言いません。「三だけ主義」は「金だけ、今だけ、自分だけ」です。家族を財布としか見ず、刹那主義で犯罪にもつながります。
 ギャンブルへの強い欲求や執着が、借金などの民事問題や横領、詐欺、窃盗などの刑事問題にもつながります。依存症の治療や回復支援がなされないまま、法律問題だけにとどめ債務整理に家族などが借金を肩代わりしていると、結局ギャンブルがくり返されます。
 ギャンブル依存症の精神病理として、いじめや厳しいしつけ、過剰な親の期待のもとで生き延びてきたことで、生きづらさと心理的孤立を抱えている人が目立ちます。
 現在、ギャンブルの種類がパチンコやスロットからネット競馬やネット競輪やFX(外国為替証拠金取引)などオンラインギャンブルに変化しています。私たちはスマートフォンから手軽にギャンブルができる環境にくらしています。かつて金融庁は消費者金融会社に対し、郊外のパチンコ店や競馬場の近くへのATMや無人契約機の設置の規制を要請しましたが、政府はカジノを推進するなど、ギャンブル依存症を減らすどころか増やす政策をすすめています。

■依存症の背景にある事実

 当院のギャンブル依存症の治療は、ギャンブルとのつきあいをふり返るレポートをもとに話し合う認知行動療法、動機づけ面接を行い、何より対話とつながり続けることを重視し、自助グループへの参加、家族会などの参加を推奨しています。自助グループでは他人の経験を聞くことで自らを語ることができるようになり、それが自己洞察につながります。依存を手放せない自分との葛藤はつらいものです。しかし回復した患者の話は励ましになり、自分のことしか考えられなかった患者が、まわりに気遣いができるようになり、心の余裕ができ、依存症から脱却していった人も多くいます。回復の基本はつながり続けることです。
 ギャンブル依存症の患者は自ら外来診療に来ることはまれです。医療従事者として、ギャンブル依存症の背景を正確な知識として理解することが大切です。患者の自己責任にすぐに結びつけるのではなく、「人権と倫理のタイムアウト」を参考に、依存症の患者を診たら、その背景を立ち止まってゆっくり考えて欲しいと思います。

(民医連新聞 第1860号 2026年9月21日号)