東京電力・福島第一原発事故から15年 原発ゼロを次世代へ
8月30日、福島県内で「原発ゼロと住民本位の復興を求める8・30ふくしま集会」を開催。8・30ふくしま集会実行委員会が主催し、全国から1500人を超える参加者がプラカードを掲げ、未来へつなぐ決意を固め合いました。(髙瀬佐之記者)
復興の主体は住民
全体集会に先立ち、「住民本位の復興」「再エネ・省エネ」「運動交流」の3つのテーマ別セッションを開催しました。
「住民本位の復興」では「原発災害から15年を迎え、人と地域社会の復興とは何かを考える」をテーマに、福島大学元学長の今野順夫さんが、住民のくらしを中心に据えた復興のあり方を提起しました。
原発事故で避難が長期化し、福島県では津波などによる直接死だけでなく、震災関連死が非常に多く、2025年12月31日時点で2350人を超えています。今野さんは、「国と東京電力は、避難によって健康や生活を奪われた人びとの実態を捉え、考える必要がある」と強く訴えました。
福島県は震災後、「原子力に依存しない社会」「日本一安心して子どもを産み育てられる県」を復興の理念に掲げました。しかし現在、浜通りではドローンやロボットの実証試験を柱とする「福島イノベーション・コースト構想」がすすみ、地域住民からは「費用対効果が薄く、生活再建につながるのか」と疑問の声も出ています。
今野さんは、関東大震災後に経済学者の福田徳三が唱えた「人間の復興」にも触れ、「インフラは人間が生きるための手段。復興の主体は住民」と強調しました。また、「放射性物質は持ち出す側と受け入れる側を対立させてはいけない」と話しました。福島だけに負担を押しつけることも、他の地域に十分な説明や合意なく持ち込むことも問題だとして、原発事故を起こした国と東電が責任を果たし、住民同士を分断させず、国民的な議論を重ねる必要性を強調しました。
15年たっても「終わらない」
全体集会では、福島復興共同センターの野木茂雄代表委員が福島の現状を報告。
「福島第一原発には約880トンの燃料デブリがあると推計されるが、2023年度後半から取り出されたのはわずか0・9グラム。本格的な取り出し開始も延期され、国と東電が掲げる2051年廃炉完了は見通せない」と指摘。「ALPS処理水の海洋放出は続き、新たな汚染物質も発生し続けている」と語りました。
また、全体集会では住民訴訟の原告、農家、女性、学童指導員ら各分野から8人が発言しました。
帰還困難区域も7市町村が残り、避難生活は続いています。病院や商店、学校など生活基盤の回復も道半ば。農業や漁業も事故前の水準には戻っていません。
果樹農家の安倍哲也さんは、事故後に福島県産の桃が買いたたかれ、当時の厳しさをふり返りました。「全国からの支援で、ようやくここまで来た」と語る一方、原発をめぐる問題が起きるたびに、ふたたび福島県産が敬遠されるのではないかという不安が続いていると訴えました。
学童保育に携わる佐藤秀樹さんは、事故後、福島に残るか県外へ避難するか、多くの家庭が決断を迫られたことをふり返りました。「原発事故によって子どもたちから奪われた成長の時間や経験は戻らない。大人はその事実にむき合い、同じ事故をくり返してはならない」と訴えました。
自分の目で見る
集会では、被災地フィールドワークに参加した青年も登壇。マイクを握る青年は、「15年たっても変わっていない風景がある。見なければ分からないし、伝えなければ伝わらない」と話し、事故当時を知らない世代が現地を訪れ、被害の実相を自分の言葉で伝える重要性を語りました。
集会アピールは、「原発事故から15年たっても被害は終わっていない。福島の経験を『過去』にしない」と呼びかけました。また、「いのちと原発は共存できない」と訴え、原発に頼らない社会と住民本位の復興を実現しようと確認しました。
(民医連新聞 第1861号 2026年10月5日号)
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