副作用モニター情報〈666〉 経腸栄養剤の変更に伴うワルファリンの作用増強と電解質異常
ワルファリンカリウムは血栓塞栓症の治療・予防に用いられる経口抗凝固薬で、食事や経腸栄養剤に含まれるビタミンK摂取量の変動により作用が変動します。今回、経腸栄養剤の変更に伴うPT‐INR(プロトロンビン時間‐国際標準比)の著明な上昇が報告されたので紹介します。
症例
80代後半女性、身長155cm、体重49kg
既往歴:心原性脳梗塞、急性心不全など
併用薬:スピロノラクトン25mgほか
変更3週間前:F2ショットEJ(食品栄養剤)1000g/日で経腸栄養中(ビタミンK約150μg/日、ナトリウム約1360mg/日)。ワルファリン4~4.5mg投与中。
変更2日前:Na127mEq/L、K4.8mEq/L、PT‐INR1.97。
変更日:退院調整に伴いラコールNF半固形(医薬品栄養剤)900g/日へ変更。ビタミンKは約56μg/日、ナトリウムは約664mg/日へ減少。
変更15日後:Na116mEq/L、K5.2mEq/L、PT‐INR8.98と著明上昇(出血症状なし)。ワルファリン中止、ケイツーN静注20mg投与。翌日PT‐INR1.08へ改善、スピロノラクトン中止・塩化ナトリウム3g/日補充開始。
変更21日後:ワルファリン1.5mgで退院。
退院1カ月後:Na131mEq/L、PT‐INR2.15で安定。
本症例では、栄養剤変更によりビタミンK摂取量が約94/日減少しており、これがワルファリン作用の増強とPT‐INR上昇に大きく関与した可能性が高いと考えられます。食品・医薬品の別にかかわらず、製品ごとにビタミンKや電解質組成が異なるため、変更前後の成分比較が不可欠です。また、ナトリウム摂取量が食塩換算で約3.45g/日から約1.71g/日へ半減しており、スピロノラクトンの継続とあいまって、低ナトリウム血症および高カリウム傾向に関与した可能性があります。経腸栄養剤変更時は、ビタミンK含有量と電解質摂取量を確認し、変更後数日以内を目安にPT‐INRと電解質を再確認することが重要でしょう。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
(民医連新聞 第1861号 2026年10月5日号)
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