私がここにいるワケ 目の前のひとりをささえ その声を社会へつなぐ
民医連で働く多職種のみなさんに、その思いを聞くシリーズ。第21回目は、東京・大田病院で働く社会福祉士(SW)の宮本麻子さんです。
(髙瀬佐之記者)
■患者のくらしにかかわりたい
宮本さんの原点は、大学卒業後に医療事務として就職した京都の民医連診療所にあります。生活困窮者や外国籍の人、精神疾患を抱える人など、さまざまな背景をもつ患者が訪れる地域でした。
そこで目にしたのは、病気だけでなく、患者のくらしに踏み込んでいく職員の姿です。「自分も、もっと主体的に患者の生活にかかわる仕事がしたい」。その思いで、働きながら通信課程で社会福祉士(SW)の資格を取得。「勉強していても、教科書の文章より先に、患者さんの顔が浮かんでくる」。現場で出会った一人ひとりが、SWとしての土台になっています。
■「民医連だから」
宮本さんと民医連との出会いは、幼少期。家族とともに民医連の病院に受診をしていました。医師に進路相談をしたこともあり、「民医連にはもともと信頼感があった」と話します。
「お金があるか、ないかで対応を変えない。金もうけに走らない。それを当たり前にやっている医療従事者たちを見てきた」。その経験が、民医連への揺るがない信頼につながりました。
社会福祉士の資格取得を機に一度退職。再就職先を探していた時、大田病院の求人を見つけました。
■無低診を「美談」にしない
民医連などの一部の病院が独自に行う無料低額診療事業(無低診)。宮本さんは、無低診にとりくむ病院がテレビなどで紹介されるのを見るたび、複雑な思いになると話します。
「無低診は必要。でも、そもそも国の仕事でしょう、と思うんです」と宮本さん。本来、国がめざすべき姿は、無低診がなくても、誰もがお金の心配をせずに必要な医療を受けられる社会です。「この患者を無低診で救えた、で終わってはいけない。その人の困難を、社会や制度を変えることにつなげないと」。宮本さんは、目の前の一人をささえることと、社会の仕組みを問い直すこと、その両方が必要だと訴えます。
■患者を守るため、職員も
無差別・平等の医療は、それを担う職員が守られなければ事業は続きません。「職員が『自分は大切にされていない』と思いながら、患者や職場をずっと大切にすることは難しい」と宮本さん。医療費も制度も、職員の処遇も、くらしも政治と切り離すことはできません。宮本さんは、「結局、全部政治につながっている。無関心ではいられても、無関係ではいられない」と力をこめます。
■支援が届く社会に
「民医連は、『その人をみる』組織。病気だけでなく、その人がどんな人生を歩み、どんな家族や環境でくらしてきたのかを見る」と宮本さんは話します。
大田病院でも、治療が終わっても簡単には退院先が決まらない事例もあります。それでも、事情をチームに相談すると「じゃあどうしようか」と、方向性をいっしょに探します。「患者を放り出さない姿勢に、ここで働いていてよかったと思う」と前をむきます。
今後の目標を尋ねると、「SWがいなくても、誰もが生きやすい社会になればいいんですけどね」と宮本さん。生活上の困難から必要な医療や福祉につながれず、行政への情報提供や制度申請にSWが奔走し続ける現状への思いを語ります。
日々の業務で、困難の背景に、社会や制度の課題が見えてきます。そして、その課題を社会へ発信し、より良い社会をめざす行動を起こすことも、社会福祉士の役割・価値の一つです。
患者の生活に寄り添い、そこから見えてくる社会の課題にも目をむける。目の前のひとりをささえ、その声を社会へつなぐ。「その人を見る」民医連のSWの実践が、誰もが安心して医療を受けられる社会への一歩になります。
東京・大田病院(社会福祉士) 宮本麻子さん
(民医連新聞 第1861号 2026年10月5日号)
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