私たちが求めるケア ⑭介護は迷惑? 文/芦野 正憲
共生社会の実現を推進するための認知症基本法が2024年に施行されています。その根本には、認知症の人を含めた国民一人ひとりが個性と能力を十分に発揮し、ささえあいながら生活できることが謳(うた)われ、認知症になっても何もできないわけではない、だれもが認知症になることに備え、意識することが必要とされています。
当事者団体である認知症の人と家族の会は、以前からこのような理念や考えをもとに活動し、社会に訴えてきました。国がようやく法制化したわけですが、社会での意識は変わっているでしょうか。
この法令が国会で審議され話題になっているころ、利用している銀行から郵便が届きました。それは、民間介護保険の勧誘広告でした。“あなたが認知症になった時、老々介護が必要になった時、愛する家族は精神疾患に…介護で家族に迷惑をかけたくない方に読んでほしい”という文言や不安に悩む介護家族の声が載っていました。
私の両親は亡くなるまで介護保険サービスを利用していました。日々の生活や病院への付き添い、ケアマネジャーとの打ち合わせの立ち合いなど、時間をとられることもありました。それが迷惑だったか、精神に影響をおよぼす負担だったかというと、看取った後になった今では断言できません。ですが、介護=迷惑、負担、家族の分断、心身に不調をきたす、など可能性のある事例を過剰に取り上げて勧誘につなげることに、疑問を感じてしまいます。実績がすべての企業広告ですから、このような表現がされることはある程度は理解できます。人や条件によっても違いがあります。しかし、認知症とともに生き、介護を必要としている人や家族、介護を仕事としている従事者にとっても重いメッセージになってしまうのではないか、と広告を読みながら考えてしまいました。
基本法が施行されて2年が経ちます。意識や捉え方、広報や広告などでの表現・表記の仕方、理解の醸成を期待しながら、当事者団体の活動を続けています。
あしの・まさのり 認知症の人と家族の会理事 福島県支部郡山地区会代表
(民医連新聞 第1863号 2026年11月2日号)
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