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民医連新聞

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5つのテーマで学び深める

第17回 看護介護活動研究交流集会 神奈川県横浜市

 看護介護活動研究交流集会では5つのセミナーが行われました。概要を紹介します。

セミナー1 困ったところに民医連あり

 セミナー1「困ったところに民医連あり」では、3つの指定報告がありました。
 横浜市寿町健康福祉交流センター診療所の弓野綾さん(医師)は「横浜・寿町から考える地域医療」をテーマに報告。寿町は日雇い労働者が集まり、5300人が簡易宿泊所で生活。高齢化率53%で生活保護利用率は93%、最近は外国人住民が増加。貧困、社会的排除、医療アクセスの障害というSDH(健康の社会的決定要因)の視点を強調。寿町に医療機関があっても恐怖や孤立などで受診できていない患者が多いため、「医療の側が方法を変え、必要なケアを届ける、普通の医療にたどりつく工夫をしたい」とのべました。
 神奈川・川崎協同病院の和田浄史さん(医師)は「ヘイトスピーチと医療機関」について報告。2019年12月に「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」が制定され、2020年に全面施行。ヘイトスピーチを罰則付きで禁止しています。しかし公園を借りるなどしてヘイトスピーチの集会を行うことはできませんが、SNS上のヘイトは続いています。2002年には川崎協同病院で「気管チューブ抜去・薬剤投与死亡事件」が発覚し、警察や検察に事情聴取を受け、お詫びと説明のため、多くの地域を訪問しました。厳しい意見もありましたが、多くの外国籍の患者から、地域になくてはならない医療機関との励ましもありました。「川崎協同病院は無差別・平等の医療を継続するなかで、地域から助けられてきた。これからも地域の人びとと力を合わせ、共同のいとなみを続けたい」と和田さんはのべました。
 東京・ケアサポートセンター千住の石田美恵さん(主任介護支援専門員)は「生活保護制度の実態~地域から声をあげよう~」と題して報告。「生活保護利用者が看護小規模多機能居宅介護を利用するのはぜいたくだ」と福祉事務所に言われた例を告発しました。足立区は東京都内で生活保護世帯数、利用率とも最も高く、福祉事務所は、介護扶助的成果専門員を配置し、生活保護利用者のケアプランの点検・確認を理由に、利用の切り捨てを行っています。共産党足立区議団にも申し入れ、区議会でも追及。「人権が保障されるよう、代弁者として活動が必要。地域から声をあげ、ともにたたかうことが力になる」と訴えました。

セミナー2 ケアとまちづくりの融合〜ケアが循環する社会をめざして〜

 セミナー2では、全日本民医連まちづくり委員会委員長の根岸京田さん(医師)が、「ケアとまちづくりの融合~ケアが循環する社会をめざして~」と題して講演しました。
 太古の人類の大腿骨骨折の治癒痕を「ケアの起源」と指摘したうえで、文明や資本主義の発達とともにケアが周辺化(すみに追いやられる)された歴史を紹介しました。複雑化した現代社会の「生きづらさ」を克服するために、ケアをまちづくりに組み込んでいく必要性とその方策についても説明。民医連がケアの倫理を学び深める意義にも触れ、「一つひとつの診療や介護、班会や居場所づくりが“ケアが循環するまち”につながり、誰も孤立しない地域社会を育んでいく」とまとめました。
 指定報告として3人がまちづくりの実践を報告。「認知症になっても地域の仲間として暮らせるまちづくり」(千葉市あんしんケアセンター幕張・鋤本綾子さん/看護師)、「川崎市生活支援コーディネーターとして」(なかはら看護小規模多機能ホーム・辻岡ひろみさん/介護福祉士)、「だれも一人ぼっちにしない友の会無料塾」(よこはま健康友の会新鶴見支部・西村知子さん)の活動報告がありました。

セミナー3 すべての人が大切にされる社会を創るには〜障害者支援から人権を考える〜

 「すべての人が大切にされる社会を創るには~障害者支援から人権を考える~」がテーマ。日本障害者協議会代表で、きょうされん専務理事の藤井克徳さんが講演しました。
 藤井さんは、障害者手帳などの所持者(2026年〈令和8年〉版障害者白書より)は身体・知的・精神障害者合わせて1152万8000人で、国民の約9・3%におよぶと紹介。障害を持ちながら、手帳を持つに至っていない人もいます。しかし実際は「障害を持った人びとを含めて社会のありようが考えられているかというと、そうはなっていない」と指摘し、1948年に制定された優生保護法に言及しました。
 日本では同法のもとで、障害などを理由に、多くの人びとが本人の意思に反して不妊手術や人工妊娠中絶などを強いられました。この法律は約48年間にわたって日本社会に優生思想をひろげ、障害者に対する誤った認識を助長する一因になりました。
 2006年には障害者権利条約が国連で採択されました。条約の策定過程では「私たちのことを私たち抜きで決めないで」(Nothing about us without us)というスローガンが。また、条約には「他の者との平等を基礎として」というフレーズが繰り返し登場します。
 藤井さんは、2018年に始まった、優生保護法をめぐる国家賠償訴訟を紹介。2024年7月の最高裁大法廷で、この法律は制定当時から憲法違反だったと判断されました。
 藤井さんは「学ぶこと、つながること、伝える力、そして、気づく力が大切。知ることはわかることの出発点です。歴史をふり返り、高齢者、外国人、障害者など、さまざまな人の関係に目を向けてほしい。自分と関係のない人、自分の考えと違う人と付き合う力も必要。押し流されないことも大切です」と強調。「問題は政治にある。しかしもっと問題なのは、それに慣れてしまうこと。優生思想は、『おかしい』と言うだけではなくならない。障害者が置かれている状況を変えること、これが一番大事」とのべました。

セミナー4 え、ケアに満ち溢れた職場づくり!?

 教育社会学者で自由学園最高学部特任教授の桜井智恵子さんが「え、ケアに満ち溢れた職場づくり!?」と題して講演しました。
 自身が『民医連医療』誌で連載した「知らぬ間に能力主義―普通を変える」の内容を紹介。現代は「自分ががんばってなんとかしないといけない」という価値観で、自己を苦しめて病んでしまう社会になっていると指摘。初期の社会ではケアが中心に置かれていたが、資本主義が生まれた近代以降、外に追いやられてしまったと話します。「自分で自分をケアし、互いのケアもして、少ない人員や予算のなかで苦しくてもケアを職場に溢れさせるというのは、新自由主義の考え方」と桜井さん。制度を変えず、個人を救済する方向に日本社会が変化していることに触れ、「市民社会がおかしなことに気づけず、制度を変えることをあきらめてしまっている」とのべました。
 新自由主義の考え方のもとで、公的支出がどんどん削られ、自助(自己責任)と地域社会の連帯による福祉の形成が求められるようになった経過を説明。また、近代の南欧や東アジア、日本では家族主義が根強く、すべてのケアを家族(女性)に背負わせてきたことを指摘しました。「養ってやるからケアしろ」というように、ケアと暴力が密接に結びついてきた歴史にも言及。ケアは価値が高いもので、「養うからケアしろ」などと言えるものではなく、お金もケアも必要に応じて互いに受け取る共同性が必要だと語りました。
 最後に桜井さんは、「日々の実践でおかしいと思ったことは、社会的・政治的課題につながっている」と指摘。「民主主義のはじまりはおしゃべり。忙しさの合間を縫って短時間でもおしゃべりをしてほしい。そうすることで価値観の枠をひろげ、社会と自分の日常をつなげて、『自分たちで乗り越えない社会』を皆で分かち合ってください」と呼びかけました。

セミナー5 ケアする惑星Café

 セミナー5では全体会で「ケアする惑星」と題して講演した小川公代さんも参加。グループにわかれて講演で学んだことをもとに交流しました。
 同セミナーでは最後に、参加者全員で今日持ち帰りたい言葉や誰かに伝えたい言葉を星形の付箋に書いて、「ケアする惑星」のポスターを完成。付箋には「ムダは大切」「優劣よりもユニークを」「時にはゆっくり歩いてみよう」「気持ちに寄り添いつづける看護をしていきたい」などの言葉が。互いの言葉に耳を傾け、さまざまな気づきが生まれたCaféとなりました。

(民医連新聞 第1863号 2026年11月2日号)