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民医連新聞

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相談室日誌 連載612 ささえになったつながり自宅で近所の人が看取り(愛媛)

 Aさんは70代前半男性。婚姻歴なく、県外に姉がいますが、身近に頼れる家族や親族はいませんでした。日雇いの仕事に従事するも、次第に仕事が減り、生活保護を利用していました。入院中も口癖のように「ありがとう。福祉にお世話になっとるけん、迷惑はかけられんよ」と、できることは自分で行い、市販薬でその場しのぎの対処をしていました。入院後、悪性リンパ腫と診断され、予後は数週間と考えられる状態でした。医師から病状を聞いたAさんは、「大家さんに家賃を払いたいし、お世話になった大家さんや友だちがおるけん、家に帰りたい」と迷うことなく話しました。その思いを実現するため、入院から約2週間後、自宅に退院。「家が汚れとって、ごめんな」と帰りの車内で話すAさん。自宅は物があふれ、お酒の空き缶、弁当の空容器・馬券などが散らばり、療養環境としては不安がありました。しかし長年くらしてきた大切な「自分の家」。訪問医、在宅スタッフといっしょに片付け、安心して眠れる場所を確保しました。さらに大きなささえとなったのが、地域のつながり。大家さんや近隣住民との助け合いの関係がありました。大家さんは空室のある近隣別宅を用意し、衛生環境の整った部屋で療養することとなりました。近所の人たちも毎日訪れ、話し相手になったり、新聞や食事を届けたりしました。自宅退院から4日後に亡くなりましたが、最期まで近隣の人たちが見守り、遺体の搬送時まで寄り添ってくれました。
 一人ぐらしであっても、決して「一人で生きている」とは限りません。友人や近隣の人などとのつながりや心のつながりは、その人の人生をささえる大切な力になります。他界後、姉から病院に連絡があり、Aさんとの思い出を涙ながらに語りました。姉は定期的にAさんに連絡を取っていましたが、ここ数カ月は自身の療養で連絡することができなかったとのことでした。
 人それぞれ、家族や友人、仕事、趣味、お金など、大切にしているものがあると思います。「自分にとってささえになっているものは? 失いたくないものは?」と、ふと考えさせられました。今を大切にしながら、これから出会う患者一人ひとりに向き合っていきたいと思います。

(民医連新聞 第1863号 2026年11月2日号)