MIN-IRENトピックス

2015年6月30日

特集1 戦場へ行きますか? 「安保法制」を考える 「弟は栄養失調で死んだ」 戦争につながる一切を許さない 仲里利信衆議院議員(沖縄4区)に聞く

写真は陸上自衛隊ホームページより

写真は陸上自衛隊ホームページより

 政府は五月一五日、自衛隊が世界中に出撃できる「安全保障法制」(安保法制)を国会に提出しました。六月二四日が期限の会期を大幅に延長し、八月までに成立をもくろみます。安保法制が国会で成立すれば、自衛隊はもはや「自衛」の部隊ではなくなり、たとえばアメリカが始めた中東の戦争にも駆けつけ、武器を使用できます。従来の専守防衛の原則をくつがえし、実質的な憲法改悪です。
 一九六〇年代のベトナム戦争から最近ではイラク戦争まで、米軍は沖縄の基地から出撃しました。安倍政権が沖縄県民の反対を無視して建設をすすめる辺野古新基地は、米軍と自衛隊が共同で訓練し、ともに紛争地へ向かうために造られます。元自民党沖縄県連幹事長で、昨年一二月の総選挙で「辺野古新基地反対」を掲げて当選した仲里利信衆議院議員(無所属)にインタビューしました。沖縄戦で家族を亡くした仲里さんは、「オール沖縄」の立役者と言われます。

 

毒入りのおむすびで妹に死を迫った日本軍

 ─(編集部)県民の四人に一人(一二万人超)が亡くなった一九四五年の沖縄戦(※1)。当時八歳の仲里さんも戦渦の中を逃げ惑い、父親と弟を失いました。

仲里利信(なかざと・としのぶ)  衆議院議員(無所属)。1937年、沖縄県南風原村(当時)生まれ。92年から沖縄県議会議員(4期)、2006年に県議会議長。自民党沖縄県連の幹事長、副会長、顧問を歴任。14年の総選挙で沖縄4区から出馬し初当選

仲里利信(なかざと・としのぶ)  衆議院議員(無所属)。1937年、沖縄県南風原村(当時)生まれ。92年から沖縄県議会議員(4期)、2006年に県議会議長。自民党沖縄県連の幹事長、副会長、顧問を歴任。14年の総選挙で沖縄4区から出馬し初当選

仲里 私は那覇市から東に六キロの南風原町で生まれました。五人兄弟の次男です。沖縄戦直前の二月に、家族で北部の宜野座村に疎開しました。
 四月になると、アメリカ艦隊の艦砲射撃が始まりました。砲弾がヒューヒューと音を立てて飛んできたため、私たちはガマ(壕)に隠れました。三歳の妹と同い年の従妹の二人は、ガマの中が暗くて怖いからと泣き止まない。すると日本兵三人が毒入りのおむすびを取り出し、「これを食べさせなさい」と命令するのです。二人を殺せ、というわけです。
 家族で話し合い、「死ぬ時はみんないっしょだ」と、ガマを出て隠れる場所を探しました。アメリカ兵に出くわし、慌てて逃げるうちに家族がバラバラになりました。一歳にもならない末の弟をおんぶした私と母の二人は、数日間は何も食べずに山の中を歩き家族を探しました。
 ようやく金武町で家族と再会できましたが、弟は栄養失調で亡くなりました。賢い子でね。不思議なことに、満一歳の誕生日のちょうど生まれた時刻に息を引き取りました。戦場の地獄を知るものとして、戦争につながるあらゆることを許すことはできません。

次に出てくるのは徴兵制

 ─安保法制が国会に提出されました。国会議員のほとんどは戦争を知りません。

仲里 国会では、亀井静香さん(無所属)と同じ七八歳の最高齢。大変な法案が提出されているのに、若手議員は意味のわからないまま拍手やヤジを飛ばし、とても真剣に議論しているとは思えません。神聖なる国政の場がこれでいいのか。戦争になっても、自分たちは特権階級だから免除されると思っているのではないか、と感じました。
 安保法制が国会を通り、いざ「戦場へ行け」と言われても、今の自衛隊員では行きたくない人が多いはずです。私の知り合いにも自衛隊の家族がいますが、「安保法制が通ってしまったら辞めづらくなるので、今のうちに自衛隊を退職した」という人がいます。
 自衛隊員が減れば、次に出てくるのは徴兵制ですよ。徴兵制が施行されたら、若者が銃を担いで戦場に行くことになります。戦争を知らない議員は事の重大性に気づいているのか、心配です。

 ─安倍政権は県民の反対を無視して辺野古に新基地建設をすすめています。なぜ、ここまで強引なのでしょう。

仲里 安保法制自体が辺野古新基地ありき、だからです。政府は辺野古に新基地を造る理由として「普天間基地を移転するため」と主張するが、真っ赤な嘘。辺野古は二本の滑走路と、航空母艦も接岸できる軍港を備えた最新鋭基地です。辺野古新基地を中心に沖縄を要塞化し、海外に出撃しようとしているのです。
 沖縄は七〇年前、本土決戦を引き延ばすための“捨て石”にされました。県民にとって、この法案は戦争を想起させる以外の何ものでもありません。

辺野古から世界へ出撃

オール沖縄の源流

 ─オール沖縄(※2)の源流は、二〇〇七年の沖縄県議会にあると言われます。教科書検定で沖縄戦の集団自決(※3)に関する記述から「日本軍の強制」という主語を削除する国の方針に対し、県議会が抗議の意見書を採択しました。「本当に軍の命令があったのか」と疑問視する県議もいましたが、その時、「私が証人だ」と議長だった仲里さんが沖縄戦の体験を語り、議場は水を打ったように静まり返ったそうです。

仲里 家族にも沖縄戦の体験を話したことはなかったが、黙っていられなかった。痛ましい集団自決の事実を否定し、歪曲することはどうしても許せなかった。

 ─その後、教科書検定意見撤回県民大会を開き、一一万六〇〇〇人余の県民が参加しました。仲里さんは大会実行委員長を務めました。

仲里 県民大会に向け、「県民のアイデンティティーにかかわる問題に、保守も革新もない」と繰り返し訴えました。この大会をきっかけに、米軍基地問題で主義主張を超えて集まることができるようになり、今のオール沖縄の流れができたのです。

「自民党は変わってしまった」

 ─仲里さんは、自民党県連幹事長や顧問、自民党県議を務めました。今の自民党は変わってしまったのでしょうか?

仲里 沖縄も、そして中央の自民党も明らかに変わりました。かつては自民党の中にも戦争体験者がいて、「戦争だけは絶対にいけない」との思いと、そのためのとりくみもあった。ところが、二〇〇七年の教科書検定(第一次安倍政権)の頃から、「過去の戦争は立派だった」「侵略の定義がない」「他国が悪い」との風潮や見直し論が出てきた。安保法制につながる一連の流れで、極めて危険です。
 保守政党とは本来、地域の声を丁寧に聞き、文化や伝統を踏まえ、党内でさまざまな論議を経て政策を決めるはず。自民党を離党しましたが、今でも私が本来の自民党だと思っています。

 ─国会議員として東京に長くいるようになりました。基地問題に関して、本土と沖縄の温度差を感じますか?

仲里 政府の情報操作で、本土の人は本当のことを知らない。世論に酷い影響を与えたのは、一昨年一二月の仲井真前知事の発言です。安倍首相から三四六〇億円の“沖縄振興予算”を提示され「有史以来の予算」「良い正月を迎えられる」として、引き換えに辺野古新基地を容認した。「沖縄県民は金さえもらえれば言うことを聞く」との誤解を与えてしまった。
 しかし、この三四六〇億円には、空港整備事業や学校耐震化、不発弾処理など国の直轄事業が多く含まれています。前知事が新基地を容認したことで、沖縄にはあたかも他県の通常予算とは別に振興予算が交付されているという印象を与えていますが、大きな誤解です。
 また、二〇〇二~一一年まで、沖縄から国に持ち出された税金は二兆六〇八〇億円、対して国から沖縄への財政移転は二兆四九三〇億円。沖縄から国へ持ち出された金額の方が多いのです。こんなことは、本土の人は知らないでしょう。

 ─戦前は鬼畜米英、そして今は「嫌韓・反中」と、再び排外的なムードが高まっています。

仲里 平和を守るなら、なにより中国と仲良くすべきです。たとえ、アメリカとはある程度距離を置いても、隣国の中国と手を携え、平和な東アジアを構築する努力が必要でしょう。
 私には四人の子どもと一一人の孫がいます。子どもを、孫を、戦争に行かせたくない。国会でも安保法制には絶対に反対します。

聞き手・新井健治記者
写真・五味明憲


※1沖縄戦 第二次世界大戦で日本における唯一の地上戦。1945年3月に始まり6月23日に終わった。市街地のほとんどが破壊され、当時約50万人の県民のうち12万人以上が亡くなった。沖縄の司令部は本土に降伏を申告したが、大本営は本土決戦を引き延ばすため徹底抗戦を命令。米軍は沖縄戦の最中から住民の土地を無断で接収し、これが現在の米軍基地に続いている
※2オール沖縄 2013年に沖縄県内の全市町村長らが署名した「建白書」の一致点に基づき、普天間基地閉鎖、辺野古移設阻止、オスプレイ配備撤回を求める県民総ぐるみ運動の総称。従来の保守と革新の垣根を乗り越え、昨年11月の県知事選は歴史的な大差で翁長雄志知事を誕生させ、12月の総選挙では全選挙区で自民党候補に勝利したことで有名
※3集団自決 沖縄戦で住民が米軍の捕虜にならないよう、日本軍の命令などで親が子どもを殺すなど家族での殺し合いを強いられたこと。文部科学省は2007年、高校日本史の教科書検定意見で、集団自決の記述について日本軍による命令、強制、誘導等の表現を削除、修正するよう指示。以後の教科書から「日本軍の命令」という主語が削除された


憲法違反の“戦争立法”
国会に反対の意志を届けよう

安保法制Q&A
若手記者が弁護士に聞いてみた

 五月二六日から国会で審議が始まった「安全保障法制」。一一本もの法案を一括で審議し、その内容は、法律の専門家ですら把握が難しい複雑なもの。安保法制とは? 法案が通ると日本はどのように変わってしまうの? 本誌の寺田希望記者(二六)が、「明日の自由を守る若手弁護士の会」事務局長の早田由布子さん(三二)に聞きました。

安全保障って何ですか?

寺田 安全保障法制について勉強はしましたが、いまいち…。
早田 わからないですよね。弁護士ですら、理解するのがやっと。それくらい複雑な法案です。
寺田 そもそも「安全保障」とは何ですか?
早田 国民の命や国土などが、脅威に晒されないよう守ること。幅広い概念で、外交や経済的な協力で国と国との信頼関係を築くことも安全保障です。国連もその一つです。
寺田 政府が考える安全保障は「軍事力」との印象が強いですね。
早田 国会で審議中の安保法制は、自衛隊の活動内容を決めるものばかりで軍事力の話です。
寺田 そこで気になるのが、今回の法案が憲法違反に当たるのではないか、ということです。武力を持つことを憲法九条は禁止しています。
早田 「武力によって平和をつくる」というのが安倍首相の考え方の基本です。有事には戦う、武力行使には至らなくてもすぐに戦える体制を整えておく。そのことが抑止力となって平和を守るというのが、安倍首相がとなえる「積極的平和主義」の中身です。
 日本国憲法は武力を持たないことで平和をつくる「恒久平和主義」です。だから憲法九条は武力も戦争も放棄しています。積極的平和主義は憲法と矛盾しています。
寺田 抑止力については、「中国が攻めてきたら、どうする」という話になりますが、本当にその可能性はありますか。
早田 中国は経済大国になりましたが、他国との貿易で今の繁栄があるわけです。日本やどこかの国と戦争を始めたら、世界中の非難を浴びて貿易ができなくなります。そんなリスクを本当にとると思いますか。
 また、中国の問題は、日本が攻撃された場合の“個別的自衛権”のケースです。国会で議論されている“集団的自衛権”とは関係ありません。
寺田 え、そうなんですか。
早田 そうです。政府は今までも、日本が直接、攻撃された時は「憲法九条のもとで反撃できる。個別的自衛権の行使は認められている」と説明してきました。
寺田 安倍首相は、国民の不安を煽っているだけに思えます。
早田 中国の脅威を指摘するのは、外交上でマイナス要素です。外交努力をしないで「脅威だから」と自衛隊の権限を拡大するのは、自分で火をつけて、その火を消さなきゃと言っているようなものです。

こんなに多数の法案が

寺田 今回、一〇本の法律改正と一本の新法案が提出されていますが、どうしてこんなに多くの法律が必要なのでしょう。
早田 自衛隊の活動範囲や活動内容を全面的に変えようとしているからです。関連する法律は、全部取り替える必要があります。
寺田 それは、今までにできなかったことをできるようにするということですか。
早田 そうです。政府の狙いは三つあります。一つは集団的自衛権の行使です。今までの自衛隊は日本が攻撃を受けた時か、間近に攻撃の危機が迫る場合に防衛出動ができました。法改正で日本が攻撃されていなくても出動できるようになります。
 二つめは武力衝突に至っていなくても、日本に重大な影響が及ぶ紛争が起きた場合に、日本が他国の軍隊を支援できるようになります。
 三つめは自衛隊の海外派兵です。今まではイラク特措法やテロ特措法のように、必要な時に法律を作って対応していました。新法(国際平和支援法)ができれば、個別に法律を作らなくても、常に自衛隊を海外に派兵できるようになります。
寺田 「平和」でも「安全」でもないのに、安倍政権は安保法制を「平和安全法制」と名付けています。
早田 国民の眼くらましです。“平和”と名前をつけておけば、ごまかせると思っているのでしょう。

乱立する「事態」

寺田 法案の中身を見ると、存立危機事態や重要影響事態など「事態」との言葉が多く使われていますが、事態とはどういう意味ですか。
早田 「事態」とは「こういう場合は、こういったことができますよ」ということ。世界で起きるさまざまな事件や紛争すべてに「○○事態」という名前をつけ、自衛隊が各段階に応じた“切れ目のない”対応をすることをめざしています。
寺田 どんなときでも自衛隊を海外に派兵したいということですか。
早田 そうです。どの段階でも何かしらのことができるように、自衛隊の縛りをなくしたいのです。
寺田 「新しい法律を一つ作ればいいのでは」とも思いますが。
早田 自衛隊が出動するイメージの違いだと思います。一般の人は、自衛隊が出動するのは日本が戦争をする時というイメージですよね。でも、そこまで至らなくても海外に派兵しようとすると、さまざまな「事態」を作らなければいけません。

まさか戦前のようには…

寺田 自衛隊が武力を使えるのはどんな「事態」ですか。
早田 日本が直接攻撃される「武力攻撃事態」と、アメリカなど日本と密接な国に武力攻撃が発生した場合の「存立危機事態」です。存立危機事態とは違う「重要影響事態」や「国際平和共同対処事態」でも、戦争に「後方支援」という形で協力できるようになります。
 後方支援は戦闘中の軍隊に弾薬や燃料を補給すること。「支援」と名付けて戦争のイメージを薄めていますが、相手国から見れば軍事行動そのもの。前線部隊より補給部隊を狙い補給路を断つのは戦術の基本で、自衛隊も攻撃の対象になります。一度でも攻撃を受ければ、武力攻撃事態に切り替わり戦闘に突入します。
寺田 とはいえ、「まさか戦前のような時代にはならないだろう」と考えている人も多いと思います。
早田 今回の法案では、尖閣諸島の衝突などでも、警察ではなく自衛隊が出動できるようにしようとしています。自衛隊が出ていけば本格的な紛争につながります。いったん紛争が起きれば、際限がなくなることは歴史が証明しています。
 アメリカは集団的自衛権の名のもとに、アフガニスタンやイラクを空爆しました。空爆で平和は訪れましたか? 「テロを撲滅する」といいながら、犠牲になったのは一般市民や子どもたち。日本も集団的自衛権を使い、アメリカの戦争に協力していいのでしょうか?

私たちの生活は変わる?

寺田 この法案が成立したら、私たちの子どもが戦争に行かされることになりますか。
早田 私は昔の徴兵制のような仕組みにはならないと考えます。徴兵制は大きな反戦運動につながるからです。徴兵制じゃないからこそ、一定層の人たちにとって安保法制は他人事で、安倍首相はその状態を維持したいと思っているはずです。
 ただ、法的に強制はしなくても自衛隊に志願せざるを得ない「経済的徴兵」はあるでしょう。実際、中高生の有力な就職先が自衛隊という地域もあります。このまま格差と貧困がすすめば「国家公務員で給料も保障されている」と自衛隊に“就職”する人が増えるでしょう。
寺田 自衛隊が海外で一度でも武力を使ったら、日本が攻撃対象になることはありますか。
早田 十分にあり得ます。戦争までいかなくても、テロの対象にはなります。一度武力を使うと、相手国には必ず犠牲者が出ます。その犠牲者の恨みが次の紛争を生む。それが今の「イスラム国」です。武力で平和が訪れるという考えは間違いです。
寺田 法案を廃案にするために、私たちは今、何をすべきでしょうか。
早田 国会に反対の意志を届けることです。居住区から選出された国会議員、特に与党議員に対して住民の声として意見を届けることを徹底的にやりましょう。議員面会要請や、国会に行けない人はファックスやメール、電話でも構いません。
 また、国民の関心を高めないと、「一部の人が言っているだけ」と思われてしまいます。国民の大多数が反対している状況を作らなければなりません。無関心な人、関心はあるがよく分からなくて賛否を決めかねている人に、法案の危険性を知らせ、反対世論を高めることが大切です。私たち弁護士も憲法カフェやインターネットなど、あらゆる方法で知らせていきます。


 安全保障法制の全法案
(政府は「平和安全法制)と命名)
【新法案】1本
・国際平和支援法
【改正法案】10本
・武力攻撃事態法
・重要影響事態法(周辺事態法から名称変更)
・国連平和維持活動(PKO)協力法
・自衛隊法
・船舶検査法
・米軍等行動関連措置法(米軍行動関連措置法から名称変更)
・特定公共施設利用法
・海上輸送規制法
・捕虜取扱い法
・国家安全保障会議設置法


明日の自由を守る若手弁護士の会
(通称・あすわか) 自民党の「日本国憲法改正草案」に反対する若手弁護士有志で2013年に発足。憲法カフェを開いたり、パンフレット、紙芝居、動画などで、改憲草案の危険性や集団的自衛権について知らせている。ホームページで安保法制について解説。
http://www.asuno-jiyuu.com/


表

「安保法制」のポイント

(1)存立危機事態、重要影響事態、国際平和共同対処事態を新設
(2)存立危機事態なら自衛隊が海外で戦える
(3)重要影響事態や国際平和共同対処事態なら、自衛隊が海外で戦争に参加できる
(4)国連平和維持活動(PKO)協力法の改正で自衛隊の活動範囲を大幅に拡大

「安保法制」の危険な中身を見てみると

自衛隊が海外で戦える(集団的自衛権を認める)
●武力攻撃事態法(改正)
 存立危機事態を新設。存立危機事態なら自衛隊が海外で武力を使える(第2条の8「対抗措置」で認める)。
 ※存立危機事態とは 「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」(第2条の4より)

【解説】武力攻撃事態法は既に2003年に制定。従来は武力攻撃事態のみ。武力攻撃事態とは、直接、日本に対して外部から攻撃が発生した事態のことで(第2条の2)、この場合には自衛隊が武力を使えた(個別的自衛権)。法改正により、日本に対する攻撃がなくても政府の解釈で集団的自衛権を使えるようにする。

自衛隊が海外で戦争に参加できる

●重要影響事態法(周辺事態法を改正し名称も変更)
 重要影響事態を新設。重要影響事態なら、自衛隊が海外で他国軍の後方支援をできる。
 ※後方支援とは 「合衆国軍隊等に対する物品及び役務の提供、便宜の供与その他の支援措置」(第3条より)。他国軍への燃料補給など、いわゆる兵站活動で実質的には戦争に参加すること。
 ※重要影響事態とは 「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」(第1条より)

【解説】1999年に制定した周辺事態法から「我が国周辺の地域における」を削除。世界中どこへでも自衛隊を派兵できる。

●国際平和支援法(新設)
  国際平和共同対処事態を設定。国際平和共同対処事態なら、自衛隊が海外で他国軍に協力支援活動ができる。協力支援活動は物品及び役務の提供で、兵站活動に当たる。
 ※国際平和共同対処事態とは 「国際社会の平和及び安全を脅かす事態」(第1条より)

【解説】重要影響事態は日本にかかわることだが、国際平和共同対処事態は直接、日本に影響がなくても「国際社会が一致して対応すべき戦争や紛争」なら世界中どこへでも派兵できる。

自衛隊の活動範囲を大幅に拡大

●国連平和維持活動(PKO)協力法(改正)
 治安を守る巡回や検問、離れた場所に駆けつけ他国軍や民間人を警護する。妨害勢力の鎮圧や掃討など任務遂行のためには武器を使用できる。

【解説】1992年制定のPKO法は復興支援が中心だったが、改正で治安維持活動ができるように。従来は自分の身を守るためだけに武器を使えたが、今度は任務遂行でも武器を使える。また、これまでの国連主導の人道・復興支援から、国連が関与しない平和維持活動などにも参加できるようにする。


力をあわせて改憲ストップ!

5・3憲法集会に3万人

 五月三日、「平和といのちと人権を!5・3憲法集会」が横浜・臨港パークで開かれました。集団的自衛権行使のための法整備がすすめられ、憲法改悪の危険が迫るなか、昨年まで別々に集会を開いてきた「憲法集会実行委員会」「フォーラム平和・人権・環境」などが共同で開催。会場を埋め尽くす三万人以上が集まり、「平和憲法を守り、いかそう」と声をあげました。

力こめてスピーチ

 呼びかけ人を代表して、作家の大江健三郎さん、澤地久枝さん、落合恵子さん、憲法学者の樋口陽一さんらがスピーチ。女優の木内みどりさんが司会をつとめました。
 作家の雨宮処凛さんは、貧困に陥った若者を軍隊に動員する「経済的徴兵制」の問題を指摘。「戦争法制と貧困を広げる政策は一体です。戦争は究極の貧困ビジネス。もうけ・利潤のためにいのちを犠牲にする社会にしていいのか」と問いかけました。
 精神科医の香山リカさんは、「どんなに時代が変わっても、平和が大切というのは変わらない真理」と強調。在日朝鮮人に対するヘイトスピーチや政府によるメディアへの介入に触れながら、「生存権や表現の自由など、今の憲法を十分に使いこなすことこそ求められている」と訴えました。
 民主・共産・社民・生活の各党が連帯あいさつをおこないました。

「何とか止めたい」

 「沖縄県民と連帯する府中の会」(東京)の旗を持って参加した桃井勝さんは、「これだけ多くの人たちが集まったのは、安倍政権の“戦争する国づくり”を何とか止めたいという国民の意志のあらわれです」と。東戸塚九条の会(神奈川)の仲間と参加した宜保芳清さんは、沖縄県の出身です。「四人に一人が亡くなった沖縄戦の悲惨さを母親から聞いて育った。いのちが粗末にされる戦争は絶対にダメ」と語りました。
 三多摩健康友の会(東京)の志賀徳繁さん・光子さん夫妻は、「私たちおとなが平和憲法の大切さを次世代に語り伝えていかなければ」と前を向きました。

文・武田力記者


「9の日新聞」大反響

和歌山・生協こども診療所

 和歌山民医連の生協こども診療所では、佐藤洋一所長の発案で昨年10月から「9の日新聞」という壁新聞を制作。和歌山での災害対応訓練に参加したことで、地元でも話題になった「オスプレイ」を第1号のテーマに選びました。
 その後、事務部と看護部が交互に制作を担当。写真・イラストを多く使って、小学生でもわかるように工夫しました。掲示場所も試行錯誤を重ねた末、診察を終えた患者さんとその家族が必ず座るスポットを確保。
 「沖縄の基地問題」や「憲法9条」、「子どもの医療費助成」などのテーマをとりあげ、反応を確かめるためのシール投票もおこないました(第7号まで発行)。
 制作に参加した職員からは、「わかりやすく伝えるためにいろいろ調べるので、とても勉強になった」「普段からニュースや時事問題に関心をもつようになった」などの声があがりました。

いつでも元気 2015.07 No.285

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