いつでも元気

2016年7月30日

認知症Q&A 第8回 「認知症に効く薬を教えて下さい」4種類へ増えた治療薬 お答え 大場敏明さん(医師)

認知症治療の新時代

 最近は認知症に効果のある薬が増え、“認知症治療の新時代到来”と言われています。これまで、抗認知症薬はドネぺジル(商品名アリセプト)しかありませんでしたが、五年前からガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(イクセロンパッチ)、メマンチン(メマリー)の三種類が追加されました。
 これらの四種類の薬はアルツハイマー型認知症(ATD)に有効で、認知機能の改善や認知機能障害の進行抑制が期待できます。ドネペジルはレビー小体型認知症にも適応が広がりましたが、脳血管性認知症や前頭側頭型認知症には効果がありません。

進行度などによる使い分け

 ATDの進行度やBPSD(周辺症状)に応じて薬の使い方が異なります。二種類の薬の併用や、他の脳機能改善薬、漢方との組み合わせなど選択肢は多様です。
 進行度に応じた使い分けは以下の通りです。
(1)軽度~高度‥ドネぺジル
(2)軽度~中等度‥ガランタミンとリバスチグミン(貼付剤)
(3)中等度~高度‥メマンチン

 BPSDの合併例には、ドネペジル以外を選択し、少量の向精神薬を使用するとともに、漢方も組み合わせます。

注意したい副作用

 薬の副作用としては、(1)吐き気や嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛など消化器症状(2)不整脈の一種である「徐脈」(3)興奮しやすくなったり、頭が混乱する、などがあります。
 「易怒性」(ささいなことで不機嫌になる、怒りだす)が少ないと思われるメマンチンも、感情が激しく高ぶる「激越」の副作用が出ることがあります。私も診療の現場でこうした副作用を経験し、薬を減量したり中止をしたことがあります。

早期に薬を使う意味

 近年、ATDの早期診断と早期治療の重要性が強調されています。早めに対策をとれば、進行を抑えることができます。わずかな記憶障害が出た時点から、適切な治療とケアが効果的です。
 私の経験でも、薬の使用初期の段階で「本人に元気が出てきた」「明るくなってきた」など、ご家族が効果に気づくケースがあります。本人が薬の効果を確認して自信を取り戻し、脳トレなども併用して数年後に薬を卒業できた例もありました。
 早期に薬を飲み始めた場合、「数年経つと薬の効果が薄れてしまうのでは」と心配するご家族もいますが、薬の組み合わせを変更すれば効果は長く持続することが期待できます。


薬がうまく飲めない時は

三郷しいの木薬局(埼玉県三郷市)
薬剤師  藤竿千恵美

 薬を飲むことを忘れるだけでなく、薬を飲んだことを忘れ余分に飲んでしまうなど、介護する方の悩みはつきません。薬を上手に飲むための工夫を紹介します。
●医療機関で薬を出してもらう時に
 一番の対策は、薬を少なくすることです。医師に状況を説明し、回数を減らすなど飲み方がシンプルになるようにまとめてもらいます。 薬剤師には、1回分を1袋に包む「一包化調剤」をしてもらいましょう。
●飲み忘れないための工夫
 一包化した薬に飲む日付や曜日を記入しましょう。お薬カレンダーや服薬ボックスにセットしたり、カレンダーに一包化した薬を貼り付けると、家族や周囲の人も服薬の状況が分かりやすくなります。
●薬を飲むことを嫌がる時
 食後にこだわらず、おやつの時間など楽しみな時間に合わせると飲んでくれることも。生活習慣にあわせた対応が大切です。きつく指示したり怒ると、マイナスイメージが強くなります。飲み過ぎや服薬を忘れることで重篤な症状が起きない場合は、見守りましょう。

いつでも元気 2016.8 No.298

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