いつでも元気

2017年3月31日

認知症Q&A 家族の接し方

お答え・大場敏明さん(医師)

Q 昨年、同い歳の妻が認知症と診断されました。家事もうまくできず、どうしてもイライラしてしまいます。最近は財布などが見つからないと、疑いの目を私に向けます。また帰りが遅いと、 「女のところに居たのか」と責めます。どう接したら良いのでしょうか?

(65歳・自営業男性)

A 家族は認知症患者にどのように接したらよいのか、基本となるポイントを4つ挙げます

(1) まず、受け入れる
 認知症は記憶障害を中心とした脳の病気で、人格や性格が変わったために起きたものではありません。認知症の影響で家事などに失敗した場合、本人は失敗したことは忘れても「何かまずいことをやってしまった」と気にしたり落ち込んだりしています。失敗を否定せず「そうだね、困ったね」と話を合わせるなど、優しく受け入れてください。
(2) 失敗を責めない
 本人を叱ったり注意をすると、逆効果になる場合があります。失敗した行為自体を忘れているので、なぜ叱られるのかが分からず納得できないうえ、悲しみや悔しさなど嫌な感情だけが残ってしまいます。叱責や注意が重なると、家族への反発や怒りの感情が溜まったり、本人がうつ状態になることもあります。
(3) なるべく生活を変えない
 「認知症になったから」と家事を取り上げるなど、今までの生活スタイルを変えがちですが、これも逆効果です。本人の自信を失わせ、認知症をかえって悪化させかねません。例えば患者が主婦なら、できる範囲で家事を続けられるように、家族が上手に支えることが大切です。
(4) 医療と介護の利用にも援助を
 認知症患者の中には、自分が病気だと思っていない方も少なくありません。医療機関への受診を嫌がる場合は、「健康診断」と称して受診するのも一案です。また、「体の不調を相談してみては」と家族が説明して、継続して通院できるように配慮してください。デイサービスへの通所も、「健康にいいよ」などと声を掛け、続けられるように支えてください。

妄想への対応方法

高杉春代(保健師・主任介護支援専門員)

 「財布を盗られた」と訴える「物とられ妄想」は、認知症患者に最も多い妄想です。身近な介護者が犯人にされ、「盗っていない」と否定したり、「忘れたんでしょ」と事実を告げると、かえって興奮し時には暴力を振るいます。本人は被害者になっていますから、「財布がないと困るね」と一緒に探しましよう。
 一定の時間が経ったら「おやつを食べてから、もう一度探しましょう」など違う場面へ切り替えると、騒いでいたこと自体を忘れることがあります。また、同じ財布を2つ用意しておいてもいいでしょう。
 相手に嫉妬する「嫉妬妄想」も、よくある妄想です。ある認知症患者は「こんな私になって夫に嫌われているのではないか、重荷になっていないか、不安でいっぱい。施設に入れられてしまうのではないかと考えると恐ろしい」と語っています。そんな心持ちにあるため、ふとしたきっかけで嫉妬妄想に陥ってしまうのです。
 このような場合は、家族が「あなたが居るだけで幸せ」と口に出して伝えると、患者はその言葉に救われます。また外出する際は、あらかじめ行き先と会う人を明確にしておきましょう。出先から電話で「誰と合っている、何時に帰る」と頻繁に連絡しておけば安心します。

いつでも元気 2017.4 No.306

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