MIN-IRENトピックス

2017年11月2日

守りたい9条 
アベノミクスと“大日本帝国”の野望

浜矩子さん

浜矩子さん

 10月22日に総選挙が行われます。
 自民党は史上初めて、公約の柱として9条に自衛隊を明記する改憲を掲げました。
 「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」呼びかけ人の浜矩子さん(同志社大教授)に、今回の解散劇を聞きました。
 経済学者の浜さんは安倍首相の経済政策「アベノミクス」を「アホノミクス」と命名し、早くから批判しています。

聞き手・新井健治(編集部)写真・五味明憲

希望の党に“希望”はあるか?

―突然の解散劇。どう見ますか?
 一言で言って恥も外聞もない、私利私欲丸出しの解散。まず理由が分からない。消費税の使用目的も後付け。よほど臨時国会で、「森友・加計学園」問題を追及されるのが嫌なのでしょう。
―自民党は9条に自衛隊を明記する改憲を公約に掲げました。
 たとえ9条の1項、2項を残しても、3項に自衛隊を加えれば9条は無力化します。1、2項を残すのは国民の目を欺くためで、極めて卑劣で極めて姑息。議論に値しない。
―災害救助で、国民の自衛隊に対するイメージが良いのが気になります。
 過去の施政方針演説でも、安倍首相は必ず自衛隊の“お涙頂戴”の逸話にふれ、イメージ向上を図ってきました。災害救助を評価するなら、自衛隊の名称を「災害救助隊」に変更すればいい。国民が自衛隊を評価しているから憲法に明記するという主張は、議論の混同とすり替えにすぎません。
―解散のタイミングを見計らったように、「希望の党」が出現しました。
 代表の小池百合子さんは、安倍首相と同様に改憲して海外派兵をもくろむタカ派。民進党議員との合流についても、安保法制と改憲に賛成することを条件にリベラル派を排除している。
―希望の党は「政権交代が可能な二大政党制を実現する」と主張しています。
 理念が違う二大政党なら政権交代に意味もありますが、自民も希望も改憲右翼政党。どちらに投票しても“絶望”にしかなりません。今回の選挙構図は明らか。自民、公明、希望、維新の「改憲」グループと、立憲民主党など民進のリベラル派、共産、社民の「護憲」グループのたたかいです。

日本経済は良くなる?

―安倍首相は今回の選挙で「アベノミクス」の加速を公約に掲げました。「何となく経済が良くなる」との幻想を持っている人もいますが、そもそもアベノミクスとは何でしょうか?
 「大胆な金融政策」「機動的な財政出動」など、個々の政策を云々しても意味がない。アベノミクスの目的はただひとつ、「21世紀版大日本帝国」を実現するため、“強い国家”のベースになる“強い経済”を造ることにある。
 安倍首相は「アベノミクスでデフレを脱却しGDPを増やすことができれば、国防費を増やせる」と明言しています。アベノミクスで“富国”し、改憲で“強兵”する、アベノミクスと改憲は表裏一体で、戦前の富国強兵の復活です。国民のためにやっているわけではない。政権は美辞麗句を並べ、私たちは詐欺に引っかかっている。
―アベノミクスで、日本経済は良くなるのでしょうか?
 結果を見れば一目瞭然。一部の富裕層だけが豊かになり、庶民の生活水準は全く上がっていない。非正規労働者が増え、労働者全体の賃金も年々目減りしています。
―それでも、安倍政権の支持率はなかなか下がりません。
 それだけ、世の中に不安と恐れに駆られた人が多い証拠。日本は少し前までは終身雇用が多く失業率も低い国だった。今は「中小零細企業の経営者」と「若者」、この2つの階層が一番追い詰められている。「強い日本を取り戻す」というメッセージは、一番傷んでいる人たちを引き寄せる。ヒトラーが支持されたのと同じ構造です。
―安倍政権の狙いが、多くの人に伝わらないのはなぜでしょうか?
 アベノミクスを喧伝するマスコミの責任は大きいでしょうね。「アホノミクス」は木を見て議論してもだめなんですよ。そもそもの目的、森を見て全否定でかからないと。
 もうひとつ、やっかいな心理があります。私は全国でアホノミクスの狙いを講演していますが、行く先々で「まさかね、考えすぎでしょ」という反応がある。「今時、大日本帝国なんて」と“善良”な市民なら、そう考えるでしょう。しかし、この世に“悪”があることを、忘れてはいけない。「こんなはずじゃなかった」と思った時は既に遅し。善良な人々で構成される“まさかの壁”を、どう突き崩すか。
―浜さんは、憲法を守る運動でも先頭に立っています。
 憲法はその前文で、国民自身が気概を持って平和の守り手になることを呼びかけています。「諸国民との協和」は21世紀のグローバル社会の鍵を握る言葉。前文にはまた「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」とあります。アメリカのように“我が国ファースト”ではだめ。国際経済が専門の私にとっても日本国憲法は指針となるもの。ようやく時代が憲法に追いついたのです。

 民医連も参加する「安倍9条改憲NO! 全国市民アクション」が9月8日に発足しました。3000万筆を目標に9条改憲に反対する署名運動を提起。民医連の目標は300万筆です。

安倍9条改憲NO!全国市民アクション
http://kaikenno.com/


浜矩子(はま・のりこ)
1952年、東京都生まれ。一橋大学経済学部卒。同志社大学大学院ビジネス研究科教授。三菱総合研究所を経て、2002年より現職。専門はマクロ経済分析、国際経済。『世界経済の「大激転」 混迷の時代をどう生き抜くか』 (PHPビジネス新書)『どアホノミクスの断末魔』(角川新書)など著書多数

いつでも元気 2017.11 No.313

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