いつでも元気

2018年10月2日

けんこう教室 頭痛

京都家庭医療学センター 原 奈央

京都家庭医療学センター
原 奈央

 今号は私たちを悩ます頭痛のお話です。医者も「頭痛の診断で頭が痛い…」となってしまうくらい(?!)、頭痛には数多くのタイプがあります。なかには放っておくと命にかかわる危ない頭痛もあるので、注意が必要です。危ない頭痛と慢性的な頭痛について解説します。

危ない頭痛

(緊急性の高い頭痛)

 くも膜下出血や脳腫瘍、慢性硬膜下血腫や髄膜炎など、脳や頭部の病気の症状として現れる頭痛は、危ない頭痛です。危ない頭痛を見分けるポイントを知っておいて、症状が出た時は大至急受診してください。

● 見分けるポイント
・突然の頭痛(1~5分以内に痛みがピークに達する)
・今まで経験したことのないひどい激痛
・普段と明らかに様子が異なる
・痛みの頻度や度合いが高まっていく
・口角が下がる、顔が歪む、喋りにくい、呂律が回らない、片側の手足に力が入らないなどの症状を伴う
・意識が朦朧とする、失神する、痙攣などの症状を伴う
・発熱に加え、むかつき・嘔吐・羞明(まぶしさ)を伴う
・眼痛・視力障害・目の充血を伴う
・鼻閉感(鼻づまり)、膿性鼻汁がある
・外傷後の頭痛

慢性的な頭痛

(緊急性の低い頭痛)

 これまでお話ししたような頭痛ではなく、以前から同じような頭痛を経験している場合は、緊急性の低いものが大半です。
 その中で最も頻度が高いのは、「緊張型頭痛」と「片頭痛」です。緊張型頭痛は4~5人に1人、片頭痛は約12人に1人に見られると言われています。それぞれの特徴を表1に示しました。

● 緊張型頭痛とは

 緊張型頭痛は「精神的な緊張」と「頭や首、肩の筋肉の緊張した状態が長く続くことによる血流の悪化」という2つの要因によって生じます。
 締めつけられるような非拍動性(周期的でない)の頭痛で、多くは両側が痛みます。頭痛の程度は軽度~中等度で、頭痛のために日常生活に支障が出ることはあっても寝込んでしまうほどではありません。夕方に症状が強くなり、入浴で改善するような場合には、まず緊張型頭痛を疑います。
 発作が少なければ日常生活への支障も少なく、治療や通院の必要はありません。しかし、発作が多く慢性になると、薬物治療が必要になります。

● 緊張型頭痛の治療

 まずはストレスの除去に努めながら、緊張緩和を目的に体操やマッサージを行います。入浴もお勧めです。
 さらに、痛みを抑えるためにアセトアミノフェンや非ステロイド系消炎鎮痛薬といった鎮痛薬を処方します。ただ、鎮痛薬の飲み過ぎによって脳が痛みに過敏になり、薬が効きにくくなることがあるため(薬物乱用性頭痛)、注意が必要です。鎮痛薬の内服は週2~3回を超えないようにします。
 頭痛が何度も反復する場合や慢性化している場合には予防治療を行います。一般的に抗うつ薬などを処方する他、過度なストレスが原因となっていることも多いので、カウンセリングや心理療法も検討します。

● 片頭痛とは

 片頭痛の病態はまだはっきりとは解明されていません。何らかの刺激によって、三叉神経(顔の感覚を脳に伝える神経)から脳の血管を拡張させる物質が放出されて起こるとも言われています。
 片頭痛の診断基準を表2に示しました。この他、発症前にキラキラした点が見えたり、チクチクする感覚が生じたりなど前兆のあるタイプの片頭痛もあります。
 家族内で複数人が発症することも多く、遺伝的要素も考えられています。片頭痛は女性に多く(男性の約3・5倍)、30代女性に限ると5人に1人が片頭痛持ちという報告もあります。片頭痛持ちの女性のうち、半数の人が月経と関連した頭痛を経験しており、その場合は女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が影響していると言われています。

 

● 片頭痛の治療

 片頭痛の人の多くが中等度~重度の頭痛であり、仕事や学業、日常生活に支障をきたしています。治療は薬物療法が中心です。
 痛みを抑えるためにアセトアミノフェンや非ステロイド系消炎鎮痛薬を用いる他、重症度の高い場合はトリプタン製剤を処方します。トリプタン製剤も薬物乱用頭痛を引き起こすため、内服は週1~2回にとどめます。
 月2回以上、片頭痛がある人には予防療法を検討します。片頭痛とともに視野がぼやける、力が入りにくいなどの神経症状が現れる場合にも予防療法を勧めます。抗てんかん薬や抗うつ薬など複数の薬があり、患者さんの持病によって使い分けます。

頭痛対策あれこれ

 すぐにできる頭痛対策を2つ紹介します。

● 頭痛ダイアリー

 頭痛の起こった日付、時間帯、痛みの程度や頻度、薬を飲んだか、その他の症状、月経の有無などを記録することで、自分の頭痛のタイプや頭痛の誘因について知る手がかりになります。
 医療機関を受診する際にも診断の手助けになりますので、ぜひ記録してみてください。「日本頭痛学会」のホームページに見本が載っていますので、参考にしてください。

● 頭痛体操

 片頭痛の予防や緊張型頭痛の緩和に有効な体操をイラストで紹介します。しっかり2分間以上行うのがポイントです。
 頭痛ダイアリーや頭痛体操を予防・治療に役立てながら、危ない頭痛の場合にはすぐに医療機関を受診してください。


片頭痛を引き起こす食べ物?

 片頭痛は脳血管の拡張・収縮と関係していると言われています。
 例えばポリフェノールには血管を拡張させる働きがあるため、アルコール(特に赤ワイン)やチョコレートなどポリフェノールを多く含む食品は片頭痛を引き起こす恐れがあります。
 同様に亜硝酸化合物を含むベーコンやソーセージ、グルタミン酸ナトリウムを多く含むカップ麺やスナック菓子も片頭痛の原因になり得ます。
 また、逆に血管を収縮させる働きをもつチラミンも、その反動により片頭痛を引き起こすと言われます。チーズや玉ねぎ、柑橘類などは要注意です。

※個人差があります。

いつでも元気 2018.10 No.324

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