MIN-IRENトピックス

2018年11月30日

けんこう教室 
お腹が痛いときは すぐに診断がつかないことも

「お腹が痛い」とは?

大阪 西淀病院 山本 安奈

大阪 西淀病院
山本 安奈

 みなさんも今までに一度は「お腹が痛い」という経験があるのではないでしょうか?
「お腹が痛い」って辛いですよね。
 ひとくちに「お腹」と言っても体の中の広い部分を占めますから、上の方だったり、おへそのあたりだったり、下腹や横腹など、実にさまざまな部位を私たちは「お腹」と呼んでいます。
 ということは、「お腹が痛い」と言っても実にさまざまな原因があるんです。胃や腸といった消化器系、腎臓や膀胱といった泌尿器系、子宮や卵巣といった婦人科系、そのほかに筋骨格系、あるいは皮膚…。このように原因も多岐にわたりますから、「お腹が痛い」は実は医師にとっても手ごわい症状で、診察には気を遣います。

「お腹が痛い=お腹の病気」ではない

 ちょっと意外かもしれませんが、「お腹が痛くてもお腹の病気ではない!」ということもあるので要注意です。
 気をつけておかなければならないのは心臓。心筋梗塞は血流が滞って心臓の動きが悪くなる病気ですが、胸ではなく「胃のあたりが痛む」と言って病院に来られる方もいらっしゃいます。
 普段、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、コレステロールが高い、タバコを吸っているなど、動脈が硬くなる動脈硬化のリスクをお持ちの方は特に注意が必要です。

怖いお腹の痛み

 ここで一般的に「怖いお腹の痛み」についてお話しします。
・突然最強になる痛み
・今まで味わったことのない痛み
・冷や汗を伴う
・眠れない、もしくは痛みで起きてしまう
・いつもより血圧が低い
 このような時にはすぐに受診してください。また、血便があった場合も診察が必要です。お腹が痛くて(もしくは嘔吐や吐き気で)水分も摂れない状態の時は、脱水の危険がありますので受診をお勧めします。

何を聴かれるの?

 このようにさまざまな臓器にわたる「腹痛」は、何科に行けばいいのでしょう。
 迷ったらまずは一般内科、総合診療科をお勧めします。診察の後に原因に合わせて適切な科をご紹介させていただく場合があります。
 医師はみなさんにいろいろなことを聴いて、それをヒントに診断をつけていきます。どんなことをみなさんにお伺いするかというと…
(1)痛みの始まりの様子は? いつから/急にあるいはジワジワ/そのとき何をしていましたか(食事、運動など)
(2)どの部位が痛みますか? 痛みは移動しますか?
(3)何をしたら悪く(もしくは良く)なりますか?(例えば食事や排便、体を動かすとその痛みはどうなりますか?)
(4)自分の言葉で痛みを表現すると? 「チクチク」「ズーーンと」など
(5)お腹が痛い以外の症状はありますか? 嘔吐/下痢/排尿/発熱/皮膚の状態
(6)痛みはずっと続きますか? 痛みに波がありますか?
 また、お腹の手術歴も聴き取りの大きなポイントです。女性の場合は生理周期や妊娠の可能性についても伺います。
 食事内容も、診断をつける上で非常に大きなヒントになります。食べたものを過去に遡ってメモして来ていただけると、診断の助けになります。特に生もの、鶏肉、生卵を召し上がっていたら教えてください。(とはいえ、意外に過去の食事って覚えていないものですよね?! さあ脳トレ! おとといの昼ごはんは? うふふ)
 また、普段かかりつけ医がおられる方は、どこで何を診てもらっているのか教えてください。非常に大きなヒントになります!
 お薬を飲まれている方は、必ずお薬手帳をお持ちください。

経過観察とは

 みなさんは「えーー?!」と思うかもしれませんが、受診してすぐに診断がつかないこともしばしばあります。経過観察といって、経過を追って初めて診断がつくことがあるのです。
 だから病院から帰って調子が悪くなった時に、すぐに「あそこの医者はヤブだ!」なんてそっぽを向いて病院を変えてしまうのは、実はもったいないことです。病院を変えるとかえって経過が分からず、なかなか診断がつかないということも起こりえます。
 一度受診して変だと感じたら、もう一度同じ病院を受診するのがお勧め! 同じ医師に「症状が治らない(もしくは悪化した)」ことを相談し、病院を変わるとしても先に受診した病院の紹介状を持って他院に行かれると連続的な医療を受けることができます。

お腹が痛くならない生活とは?

 お腹が痛くならない生活というのはなかなか難しいですが、普段から偏りのない食事と水分の摂取、適切な運動を心がけ、排便コントロールを行いましょう。お腹を冷やさないようにすることも大切です。
 毎日便が出なくても構いません。ご自身の体調に応じて、3日に1回程度排便があれば結構です。可能なら毎回、便の色や性状を観察する習慣があると良いですね。また年に1回程度、検診(胃カメラ、大腸カメラなど)でチェックできると完璧です。
 女性の方は普段から生理周期を整えたり、婦人科検診を受けておくことも大切です。

不安を解消して

 最近はインターネットも普及して、みなさんが医学的なことをよく調べていらっしゃいます。親しい方や芸能人が〇〇という病気で、「自分も同じではないか」と心配して来られることもあります。
 そういう場合も遠慮せずにおっしゃってください。みなさんの心配ごとを医学的に判断し、検査などで確かめたり、医学的に病気の可能性が低ければ安心できるよう説明できると思います。不安が解消しなければ痛みは解消しませんからね。
 さあみなさん、体、心、社会的な不安を解消して、健康に安心して元気な毎日を過ごしましょうね!


「胃腸炎です」と言われても…

 たとえば有名な「モウチョウ」―正式には虫垂炎と言いますが、はじめはみぞおちが痛く、そのうち右下の方に痛みが移ってくるというのが典型です。
 受診して「胃腸炎です」と言われても、その後右下に痛みが移ってきた場合は、もう1度受診しましょう。
 病院に行って診察を受け、医師からある診断を受けた場合、見通しとしてどんな症状がどれくらい続くのか、どんな時に再診の必要があるのかなど、しっかりと確認しておきましょう。

いつでも元気 2018.12 No.326

お役立コンテンツ

▲ページTOPへ