いつでも元気

2020年2月28日

けんこう教室 
花粉症

北海道 勤医協札幌西区病院  統括院長 小市 健一

北海道
勤医協札幌西区病院
統括院長
小市 健一

 スギ花粉症の皆さんにとっては、また嫌な季節がめぐってきましたね。
 花粉症の患者は日本人の約30%に上ると推定され、この20年間で急増しています。特に患者の70%を占めるスギ花粉症は社会問題化しています()。
 急増した背景には、戦後の積極的な植林による花粉飛散数の増加と、大気汚染など生活環境の悪化があると考えられています。また、約4割の家庭に花粉症の子ども(高校生以下)がいるという調査もあり、若年化も問題になっています。
 花粉症を引き起こす植物は、日本では50種類以上が報告されていて、季節や地域によって差が大きいのも特徴です。代表的な花粉としては、初春のスギやヒノキ、春のシラカンバ、初夏のイネ科(カモガヤ、オオアワガエリなど)、初秋のキク科(ヨモギ、ブタクサなど)が挙げられます。

症状と原因

 花粉症は「花粉によって生じるアレルギー疾患の総称」です。花粉が鼻に入ると、直後にくしゃみや鼻水、少し遅れて鼻づまりが生じます。花粉が鼻からのどへ流れ、のどのかゆみや咳も出てきます。目に花粉が入ると目がかゆくなり、涙が流れて目が充血します。
 また頭が重い感じがしたり、だるさや微熱、集中力の低下、イライラ感、睡眠障害など全身症状が出やすいのも特徴です。
 花粉症はどのようにして起こるのでしょうか。
 花粉(アレルゲン、抗原)が体の中に吸い込まれると“この花粉は異物だぞ!”という情報が細胞へ送られ、それに反応する物質(IgE抗体)ができます。IgE抗体は皮膚や粘膜にあるマスト細胞の表面にくっつきます(感作)。この状態で再び花粉が侵入してIgE抗体と反応すると、マスト細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出されてさまざまなアレルギー症状を起こします()。
 本来、くしゃみや鼻水、鼻づまりは花粉を体内に入れないようにするための防御反応ですが、抗体の過剰反応によって花粉症のつらい症状が引き起こされるのです。

診断

 花粉症は症状に季節性があることから、詳しく症状を聞くことで一定の診断がつきます。年間を通して症状があるときは、ハウスダストやダニなどが原因の通年性のアレルギー性鼻炎を疑います。
 小さなお子さんの場合は、鼻をいじる、目をこする、顔をしかめるなど、ただの癖のように見えるしぐさにも花粉症が原因の場合があるので、注意してください。
 耳鼻科ではまず鼻鏡で鼻の粘膜をよく診ます。さらに、鼻水の中に「好酸球」というアレルギーの細胞が増えていないかどうか検査します。副鼻腔炎の有無をみるために鼻のレントゲンをとることもあります。
 花粉症かどうかを診断した上で、原因になっている花粉を特定します。原因になっている花粉を調べるには、皮内(皮膚)テストや血液検査を行いますが、通常は血液検査で診断がつきます。ぜひ、ご自身の花粉症の原因を調べてもらいましょう。

治療

 花粉症の対策で最も有効な方法は、花粉にできるだけ接触しないことです。しかし、花粉は広範に飛散していて回避するのが難しく、多くの場合は症状を和らげるお薬が必要になります。点眼薬や点鼻薬による局所療法と、飲み薬による全身療法が主になります。
 医師は個々の症状の強さや時期に合ったお薬を選択して処方します。お薬では効果が出にくい鼻づまりに対して、鼻の粘膜にレーザーをあてるレーザー治療は効果的です。
 健康保険組合連合会が昨年、花粉症治療薬の一部を「健康保険の適用対象外に」と提言しましたが、とんでもないことです。治療が必要な患者さんを医療機関から遠ざけることになりかねません。
 むしろ花粉が本格的に飛散する前に、症状が少しでも出たらすぐに受診することをお勧めします。また症状がなくても、飛散が予測されている日から治療を開始する初期療法で、症状を軽くすることができます。
 従来の対症療法に対して、根治療法として「アレルゲン免疫療法」(減感作療法)が注目されています。微量のアレルゲンを少しずつ体内に入れて慣れさせ、症状の発生を抑える治療法です。
 スギ花粉症に対するアレルゲン免疫療法では、軽症もしくは症状がなくなった患者さんが80%以上おり、その高い効果が確認されました。以前は皮下注射が主流でしたが、2014年から舌の下に薬液を滴下する「舌下免疫療法」が保険適用となり、有効性・安全性・患者満足度・QOL(生活の質)の改善など、いずれの面からも高く評価されています。

セルフケア

 患者さん自身でできる対策としては、まず花粉が飛散する時期(特に晴れた風の強い日)の外出はなるべく避けましょう。インターネットなどの花粉の飛散情報も役立ちます。
 外出時は、鼻と目に花粉が付着しないようにすることが基本です。通常のメガネをかけるだけでも、目に入る花粉は半分以下になります。またマスクの着用も、花粉の吸いこみを3分の1以下にする効果があります。帰宅後は衣服をはたき、うがいをしたり顔や頭を洗ったりして、花粉を家の中に持ち込まないようにします。
 洗濯物の取り込みや換気の際にも注意が必要です。絨毯、畳、マットなど床に敷いている物に花粉が残りやすいため、なるべくフローリングにして、まめに掃除機をかけるのも有効です。雑草の花粉が原因と分かっている場合は、開花前に庭を除草しておくことも重要です。また、発作の誘因を減らすため、かぜをひかない、酒・タバコを控える、ストレスを避けて睡眠を十分とるなど、日常生活の管理にも気を配りましょう。

果物や野菜にも注意!

 花粉症の方は、「口腔アレルギー症候群」を併発することがあります。花粉症を起こすアレルゲンに類似するたんぱく質を摂取することで、アレルギー反応が起きるためと考えられます。
 りんごやスイカ、トマトなど生の果物や野菜を食べたときに、口の中やのど、耳の奥などにかゆみや痛みを感じることはありませんか? 目・鼻・皮膚症状や胃腸症状、重症の場合は血圧低下などを伴うアナフィラキシーショックを起こすこともあり、注意が必要です。

いつでも元気 2020.3 No.341

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