いつでも元気

2006年10月1日

いったい、誰がテロリスト? レバノンでは1000人以上が犠牲に

米政府はイスラエルへの援助やめよ

アメリカで反戦大集会

写真と文 円道まさみ(サンフランシスコ在住)

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「占領は犯罪」と書かれたプラカードを持って集会に参加するレバノン系アメリカ人の少女

 イスラエルに対する国際批判が強まっている。レバノンへの無差別攻撃により、すでにレバノンでは一〇〇〇人以上の犠牲者と、一〇〇万人を超す避難民が出ているのだ。しかしブッシュ大統領は「テロとの戦い」と称して、イスラエルを擁護し続ける。レバノンで、人々は問う。

 「一体、誰がテロリストなのか」

 八月一二日、レバノン攻撃が始まって一カ月。暑い日差しの下、平和と正義を求める市民が超大国でふたたび 声をあげた。首都ワシントンでは約三万人、西海岸の反戦メッカ、サンフランシスコでは約一万五〇〇〇人(主催者発表)が、反戦・反占領集会に参加。会場に は幼い子どもを連れたレバノン出身の家族や、アラブ系アメリカ人の姿が目立った。戦火で傷ついた祖国を胸に、彼らは訴える。

 「アメリカはイスラエルへの援助をやめろ!」「イラク、レバノン、パレスチナ、すべての戦争と占領をやめろ!」

イスラエル非難はタブー

 集会を主催した「戦争と差別をストップする連帯行動(Answer Coalition)」のリチャード・べッカー代表はこう話す。

 「イスラエルのレバノン侵攻に対し、米議会は全面的にイスラエル支持を表明しました。イラク戦争に反対した議員でも、イスラエルとなるとノーといえない。今こそ市民が立ち上がるときです」

 アメリカには「アメリカ・イスラエル委員会」という強力なイスラエル支持の圧力団体がある。イスラエルを非難するジャーナリストは職を失うといわれ、平和グループでも、イスラエル非難の集会には参加しないところがあるほどだ。

 集会参加者は口々にいう。

 「マスコミのアラブ人に対する差別、偏見はひどい。どれだけの命がイスラエルによって奪われようと、目を向けようとしない。アラブ人の純粋な抵抗運動もすべてテロ行為だと批判する」

国民生活は火の車に

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「戦争と占領ではなく、雇用、医療、教育を!」横断幕を掲げ行進する人々

 年間三〇億ドル以上といわれるアメリカのイスラエルへの経済・軍事援助。その“援助”がパレスチナやレバノンで殺戮の道具として使われている。

 その一方で国内では、財政難のため、教育や福祉予算が大幅に削減されている。とくにブッシュ政権誕生後は最悪の赤字財政が続き、国民生活は火の車である。

 多くのアメリカ市民は問いはじめている。「一体、だれのための戦争なのか。こんな政策をとり続けることでアメリカが安全になるのか」

 この日、カナダ、スペイン、ケニア、シリア、チリ、インド、トルコ、オーストラリア、ブラジルなど世界各地で連帯行動がおこなわれ、アメリカとイスラエルの軍事政策に「ノー」の意思表示をした。

八月一四日、国連安全保障理事会決議にもとづく停戦が実現したが、五日後にはイスラエル軍は攻撃を再開。またイスラエルがクラスター爆弾を三五九カ所に落とし、一〇万発以上の不発子爆弾が居住地にばらまかれていることが判明。国連次長は記者会見で「非人道的」と非難した。


イスラエルはなぜレバノンを攻撃?

第二次世界大戦後、国連は、パレスチナとイスラエルを二つの国家として樹立する「分割決議」を採択した。しかし双方の意見を十分聞いたものではなく、双方が無視。一方的にイスラエルが独立を宣言した。

“イスラエル”対蕫追い出されたパレスチナ人と彼らを支えるアラブ諸国﨟の戦争が、一九四八~七三年に四回もおきている。

 イスラエルにとって、周囲で反イスラエルの武装勢力が台頭することは常に脅威であり、一九八二年にもイス ラエルはレバノンを大規模攻撃した。PLO(パレスチナ解放機構)が、当時レバノンを拠点としていたからだ。PLOを支援していたレバノン国民を武力で動 揺させ、結局PLOを、チュニジアに追放してしまった。

 今回のレバノン攻撃も同じ戦略だ。ヒズボラに拉致された二人のイスラエル兵を取り返すというのが建前だ が、狙いは「ヒズボラがいるとこんなひどい目にあう」と多くのレバノン国民に思わせて、ヒズボラへの支持をやめさせ、ヒズボラを孤立させることである。昨 年の選挙でヒズボラが躍進し、入閣したことが脅威だったのだ。

 パレスチナでも今年一月、選挙で抵抗勢力ハマスが躍進し政権についた。イスラエルは〇四年にシャロン前首相がパレスチナ国家を容認したが、ガザ地区への攻撃を再び強めている。

 アメリカは「分割決議」の主張者であり陰のスポンサーだった。中東での利益を実現するためにイスラエルを利用し支援している。

幸野 堯(中東問題研究家)

いつでも元気 2006.10 No.180

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