いつでも元気

2022年3月31日

未来を担うみなさんへ

聞き手・楠本 優(編集部)

撮影・酒井 猛

撮影・酒井 猛

 新型コロナが猛威をふるうなか、今年度も民医連は新しい仲間を迎え入れました。私たちの活動理念とは何か。医療と介護の現場で、何を大切に仕事をすればいいのか─。
 全日本民医連の増田剛会長に話を聞きました。

 医療・介護の現場で働く人たちは、代表的なエッセンシャルワーカーと言えます。新型コロナで感染の危険にさらされ、場合によっては風評被害も受けます。でも誰かがやらなければならない仕事だし、現場へ行かないと仕事になりません。
 今回の新型コロナウイルスパンデミックに際して、民医連の各事業所は積極的に発熱外来に取り組み、病床のひっ迫で入院できない在宅患者を訪問するなど、いのちを守る活動を献身的に続けてきました。その姿は住民をはじめ、地域の医療・介護機関から高い評価を受けています。
 こうした民医連の医療と介護の職場に皆さんが来てくれたことを本当に嬉しく思います。一緒に頑張りましょう。
 今までケア労働の社会的価値が低いまま放置されてきました。例えば介護業界は賃金が低いことが問題です。一方、コロナ禍で介護の大切さがより鮮明になりました。コロナで辛い思いをしている人々のために、よりよい医療と介護を実現したい。ともにケアの価値を考え、ケア労働者が輝く時代を創りましょう。

地域のよりどころ

 戦後、医療に恵まれない人々の要求にこたえようと、地域住民と医療従事者が協力して、民主的な医療機関が各地に誕生。それらの連合体として、1953年に全日本民医連は結成されました。今では全国47都道府県で約1800の事業所が加盟し、8万4000人の職員と363万の共同組織の仲間がいます。
 民医連は職員と共同組織(健康友の会会員や医療生協組合員)の方々が力を合わせ、無差別・平等の医療と介護を実践しています。「経済格差がいのちの格差につながってはいけない」との理念のもと、社会保障制度の拡充を目指しています。
 さらに核戦争を阻止するために被爆者とともに核兵器廃絶の運動を進め、ジェンダー平等やLGBTQs(性的少数者)をめぐる個人の尊厳を守る活動にも積極的に取り組んでいます。
 「人びとの困難あるところに民医連あり」─。民医連の性格は、こんな言葉で表現することもできると思います。困ったら民医連へ。そういう存在でありたいです。

「困りごと」に寄り添って

 目の前にいる患者、利用者の権利や尊厳を守るには、その人が困っていることの原因を考え生活レベルまで掘り下げることが必要です。どうしたら、その人が幸せに暮らしていけるのか、そのためにはどのような援助ができるのかを考えます。
 アルコール依存症の患者さんが来院したケースを考えてみましょう。一般的には肝臓を治療したうえで禁酒を勧めます。けれど民医連は「なぜこの患者はこのような生活になってしまったのか」と、SDH(健康の社会的決定要因)の視点を大事にします。
 「なぜ、そんなに悪くなるまでお酒を飲んでしまうようになったのか」まで掘り下げていくと、患者の“自己責任”ではすまされない問題が見えてきます。「困りごと」に寄り添い、その背景までみて対応することで、生活全般への支援につながります。
 民医連はそこで終わりではありません。事業所に来ることができず、さまざまな理由で患者・利用者になれない人がいます。目の前に現れることができない人を想像して仕事をすることが大切です。
 例えば病院に来なくなった患者さんがいたとします。来ないのは医療機関の責任ではないのかもしれませんが、私たちは「なんで来られないのだろう」と考えます。
 場合によっては患者さんに電話をかけ、家にも行くことで生活背景が分かり、受診できない理由を知ることができます。抱えている困難を一緒に解決して患者が健康を取り戻し、生活できるように援助することが民医連医療です。

世界に目を向けよう

 いま、世界中で個人の尊厳や公正な社会の実現を求める大きなうねりが広がっています。ジェンダー平等の実現や格差の是正、気候危機阻止、核兵器廃絶など、その運動の中心にいるのは若者たちです。
 「自分の周りには自己責任論が蔓延しているけれど、どうやらこの考え方は世界標準ではないらしい」「人権や男女の格差といった問題で、実は世界に比べて日本は遅れているのではないか」と、気付く材料がたくさん発信されています。
 日本のジェンダー・ギャップ指数は、世界156カ国中120位と先進国で最低レベルです。けれども日本にいると、「そういうものだ」と思い込んでしまったり、違和感を感じていても言えない人がたくさんいるのではないでしょうか。
 「医療機関がなぜ、署名や平和活動をするのだろう」と疑問に思う人もいるかもしれません。私たち民医連は、医療・介護機関として人権と平和を大切にする理念を持ち、声をあげることが重要だと考えているのです。
 民医連は2月にオンラインで総会を開き、今後2年間の活動方針を決めました。新入職員のみなさんは総会方針をはじめ、憲法や社会保障制度など大いに学んでください。人権が大切にされる社会の実現に向けて、ともに未来を切り開きましょう。

いつでも元気 2022.4 No.365

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