いつでも元気

2022年8月31日

球状の碑

文・武田力(編集部) 写真・酒井 猛

ステンレス製の碑は「いま生きているあなたを映す」

ステンレス製の碑は「いま生きているあなたを映す」

 東京都内で初めての「九条の碑」が足立区柳原に完成。
 東京民医連の健和会が、敷地を提供するなど全面的に協力しています。
 球体の表面に憲法九条の条文を刻んだ“球状の碑”に込めた思いとは。

 完成したモニュメントの名前は「憲法九条 球状の碑~いま生きているあなたを映す~」。直径1mのステンレス製で、憲法九条の条文がピンクの文字で刻まれています。足立区の建築家・よしだきんじさんと娘のみきさんがデザインしました。
 「今までにない斬新なデザインにしたかった」ときんじさん。
 「“何だこれは?”となにげなく読みながら碑を回るうちに、憲法九条に出会ってしまう。九条を知ったら、もう簡単にはそっぽを向けなくなるでしょう」と話します。
 「若者や子どもにも注目してもらえるような、モダンでアートな碑にしたかった」と話すのは、「『九条の碑』を建立する会」事務局の中田順子さん。足立健康友の会の会員です。
 順子さんの夫で事務局長を務める好美さんは「この碑の前に立つと、自分の姿がモニュメントに映り込み、九条の条文と重なる。理屈ではなく、生きているあなたのいのちと九条とのつながりを体感できる空間です」と語ります。

戦争を防ぐ外交努力こそ

 6月19日に行われた除幕式と完成のつどいには、約170人が参加。晴天のもと、トランペットの「歓喜の歌」(第九)が高らかに鳴り響き、白い幕の下から銀色に輝く碑が姿を現しました。
 小森陽一・九条の会事務局長(東京大学名誉教授)がお祝いのスピーチ。「ウクライナに戦争を仕掛けたロシアの東の隣国は日本です。国際紛争を解決するために、九条の理念を生かす外交努力こそが求められている」と語りました。
 「建立する会」共同代表の石川晋介医師(みさと健和病院院長補佐)は「平和憲法を変えようという声が大きくなる中で、憲法が誕生した歴史を学んだり、九条の理念を国内外に広げていく端緒にできれば」と挨拶しました。

全国から募金

 碑が建立されたのは、柳原リハビリテーション病院に隣接する敷地。きっかけは2020年1月に地域の「千住九条の会」が開いた講演会でした。
 ジャーナリストの伊藤千尋さんが、カナリア諸島やトルコ、沖縄など各地にある九条の碑を紹介。その後の「千住九条の会」世話人会議で「ぜひ東京にもつくろう」と決め、広く呼びかけて同年11月に「建立する会」が発足しました。
 インターネットやSNSを活用して宣伝。活動が新聞にも取り上げられるなど反響を呼び、1年半の間に全国約800の個人や団体から500万円以上の募金が寄せられました。
 除幕式に駆けつけた伊藤さんは、日本にある九条の碑(23基)についてまとめた『非戦の誓い』(あけび書房)を出版したばかり。「新刊には間に合わなかったが、続編に載せたい」と笑顔を見せました。
 伊藤さんは「球体の頂上に刻まれた“9”の文字が、(地球にたとえれば)北極星の位置にある。九条が私たちの指標であることを表している」と力を込めました。

平和の観光名所に

 「建立する会」では今後、碑の周辺地域のガイドマップ作製や「ピースウオーク」などを計画。前出の中田好美さんは「碑を平和の観光名所としてアピールし、足立から九条の風をどんどん吹かせたい」と意気込みます。
 順子さんは「碑は“戦争は絶対イヤ”“九条を守りたい”という多くのみなさんの思いの結晶です。改憲阻止の力として活用したい」と語りました。

いつでも元気 2022.9 No.370

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