いつでも元気

2022年12月29日

まちのチカラ 
絶景に浸かる癒やしの農村

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

馬曲川上流にある「馬曲温泉 望郷の湯」の露天風呂

 長野県の北端に位置する木島平村。
 日本を代表する米の産地で上杉謙信も食べたといわれる笹寿司や絶景の馬曲温泉などが魅力。
 アウトドアスポーツも盛り上がりをみせています。
 自然豊かな美しい村の魅力をご紹介します。

感染対策をしたうえで取材しています

 北陸新幹線飯山駅からバスで15分、のどかな田園風景が広がる木島平村に到着しました。長い裾野を引く形から「高井富士」と呼ばれる高社山(1351m)をシンボルに、千曲川に注ぐ支流である樽川と馬曲川が流れます。
 長い時間をかけて出来上がった緩やかな扇状地になっており、豪雪に由来する豊かな水と肥沃な大地に恵まれた米どころ。「米・食味分析鑑定コンクール 国際大会」で8年連続通算9回金賞に輝いた、いわば日本を代表する米の産地です。
 村の面積の8割を森林が占め、農地や住宅地は西部に集まっています。東部に位置するカヤの平高原は、樹齢200~300年のブナの原生林が広がる観光スポット。豊かな農村風景にたたずむと、体が喜んでいるのを感じます。

上杉謙信も食べた!?
笹寿司

 村の郷土料理を求めて、地域のコミュニティースペース中町展示館を訪れました。季節の料理を寄り合って作る「まめっこの会」の女性たちが作ってくれたのは、笹寿司。クマ笹の葉の上に酢飯と具材や薬味をのせた、北信地方に伝わる郷土料理のひとつです。
 笹寿司の歴史は古く、上杉謙信と武田信玄が北信濃の支配権を巡り、5回も合戦した「川中島の戦い」(1553~1564年)まで遡ります。
 上杉謙信が村のお隣、飯山市の富倉街道を通って合戦に出陣した際、富倉地区の村人たちが、殺菌作用のある笹の葉の上にご飯とおかずを一緒にのせて献上したのが笹寿司の始まりといわれます。
 具材は炒めたゼンマイとくるみ、錦糸玉子、紅ショウガなどを彩りよくあしらいます。ゼンマイは春に採って乾燥させたものを戻します。
 「村の女性たちが集まると、魔法のようにテキパキと笹寿司を作るんですよ」と語るのは、埼玉県から村に移住して7年目の西澤仁美さん。あっという間に完成した笹寿司が美しく盛り付けられました。大勢の人が集まった時にわきあいあいといただく“おもてなし”の文化です。一口食べれば村人の優しさが腹の底に伝わります。

トレイルランニング
奥信濃100

 スキー場を中心とする宿泊施設が多い木島平村。コロナ禍でスキー客が減少するなか、2021年8月に新しいイベント奥信濃100が誕生しました。奥信濃エリアの使われていなかった古道を整備し、100kmのロングトレイル(長距離自然歩道)を走る大会です。主催者はトレイルランナーで宿泊施設も営む山田琢也さんです。
 村出身の山田さんはヨーロッパでスキー選手として活躍。海外で気付いた村のアウトドアフィールドとしての魅力を発信しています。第2回の奥信濃100(22年6月)では、感染対策を徹底したうえで、1000人以上のランナーが大自然の中を駆け抜けました。
 「コロナ禍での大会実施は本当に不安で、これで『村に居づらくなってしまうのでは』とも思いました。大会をやりきった後は、また次もやりたい、トレイルランニングと奥信濃が100年続くように本気で活動していこうと思いました」と情熱的に語る山田さん。1年を通じて山道の整備をしています。村を訪れたらぜひ、ブナ林が広がる美しい森の中を歩いてみてください。

絶景の秘湯
馬曲温泉

 最後にご紹介するのは、絶景を望む天空の秘湯馬曲温泉 望郷の湯です。車で行ける馬曲川上流の山間、標高700mの高さにあり、三方を戦国時代の山城がある山々に囲まれています。
 眼前に広々と開けた視界の先には、遠く北アルプスまで望むことができます。露天風呂からの眺望は、日本経済新聞が選定した「雪景色が素晴らしい温泉」で“東日本一”と評価され、全国から湯治客が訪れます。
 素泊まり専門の簡易宿泊施設が隣接し、何度でも温泉に浸かることができます。冬は雪見風呂、春は花見風呂、風薫る新緑の湯や秋の紅葉も。西向きなので夕暮れのグラデーションはすばらしく、星空の下の湯など、季節や時刻によって表情を変えるのも魅力です。
 慌ただしい日常を離れ、温泉と絶景にゆっくり浸かってココロもカラダもリフレッシュ。懐の大きな村の豊かな自然があなたを迎えてくれるでしょう。

■次回は山形県大蔵村です。

まちのデータ

人口
4231人(10月1日現在)
おすすめの特産品
米、きのこ、笹寿司、名水火口そば
アクセス
東京駅から飯山駅まで新幹線で約2時間、飯山駅から木島平村役場までバスで15分
問い合わせ先
木島平村観光振興局
0269-82-2800

いつでも元気 2023.1 No.374

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