いつでも元気

2023年5月31日

青の森 緑の海

2015年夏  宮古島にて

2015年夏 宮古島にて

 海というのは特別な場所だ。原初の地球で生命が誕生した場所であり、食を通じてサンゴや僕たちを養うだけでなく、雨をつくり二酸化炭素や熱を吸収する気候調節効果を通じて生存そのものも支えている。
 僕たちの体内の約60%は海と同じ性質の水分で満たされており、胎児の頃には90%が水分といわれている。しかし、体液内の塩分濃度が約1%なのに対し、海水は3~4%もある。人は海水を飲んで生きることはできない。どうあがいても、魚と同じように水中で暮らすことはできないのだ。ここに陸に上がった動物としての人間と、海とのやるせないような距離を感じる。
 写真はイワヅタの一種でウミブドウの親戚だ。イワヅタは何十種類もあり、見た目も食感も千差万別。全部まとめてウミブドウと呼ぶ漁師もいる。沖縄旅行で皆さんがよく口にするクビレヅタ(ウミブドウ)は柔らかく、写真のセンナリヅタは味は濃厚なものの硬く、食用としては流通していない。
 背後の石は「魚垣」と呼ばれ、魚を捕るために昔の人々が積んだもの。干潮になると陸地側に取り残された魚は石垣に沿って沖へと戻るため、狭い水路に網を仕掛けておけば難なく魚を捕らえることができる。
 今はもうこの魚垣は使われなくなった。街のスーパーに立ち寄れば、山のような食材が迎えてくれる。ありがたいことだが、所狭しと並ぶ食材がどこで生まれ、どうやってここへ来たのか。その距離を考えることも必要なことだと思う。


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然の
いのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。写真集の購入はホームページまで。
http://www.shinyaimaizumi.com/

いつでも元気 2023.6 No.379

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