いつでも元気

2023年8月31日

まちのチカラ 岐阜県御嵩町 鬼もほほえむ華やかな宿場町

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

鬼岩公園の巨石

鬼岩公園の巨石

 岐阜県の中南部に位置する御嵩町。
 山々に囲まれ、中山道を中心に栄えました。
 新しい郷土食のみたけ華ずしや、鬼のような花こう岩が織りなす景勝地・鬼岩温泉など、今も旅人の心をつかむ町の魅力を探しに行きました。

 名鉄名古屋駅から電車を乗り継ぎ約1時間。木曽川南岸に位置する御嵩町は、東西に中山道が横断し、日本の古道の歴史文化が今も脈々と残っています。
 御嵩駅を降りると、そこは中山道49番目の宿場「御嶽宿」です。江戸時代の1602年に中山道の宿場の中でもいち早く整備され、人や物、情報や文化が往来し、大きなにぎわいをみせました。
 まずは駅のすぐ目の前に境内を構える古刹大寺山願興寺へ。天台宗の開祖、最澄によって約1200年前に創建され、本堂と薬師如来像ほか23体が国の重要文化財に指定されています。
 続いての見どころは、郷土館と図書館を併設した中山道みたけ館。さまざまな時代の遺物が展示され、原始から近現代までの町の歴史を学ぶことができます。
 「私の小さい頃は道に人が絶えることはなかったね。みんな買い物に来てとても賑わっていたんですよ」と語るのは、中山道案内人「偲歴会」の須田宏さん。御嶽宿の変化を見つめてきました。
 昔ながらの八百屋、古民家をおしゃれに改装したカフェや案内所。どこに行っても笑顔で迎えてくれて会話に花が咲きます。ここで暮らす人々が、宿場の風情を大切にしていることがうかがえます。

新たな郷土食

 町は新たな郷土食で町おこしをしようと、2007年にみたけ華ずしが誕生しました。地元の自然・歴史・文化を花形に表現した漬物のお寿司です。その作り方を体験できると聞き、「みたけ華ずしの会」を訪ねました。
 活動拠点は中山道沿いの改装した古民家。エプロン姿の会長・堀田照子さんが指南してくれました。
 材料は岐阜県産の米、酢、しょうゆをはじめ、数種類の漬物など。日本のほぼ真ん中にある岐阜県は昔から東西の文化交流地点でした。それにちなんで東西の食文化を取り入れようと、京都の柴漬けや東京のべったら漬け、岐阜の赤かぶのきざみ漬けなどをバランス良く使います。
 絵柄には町や中山道、隣接する可児市にまつわるボタンやササユリ、菊、バラといった花を、巻きずしと押しずしで表現していきます。
 「外国人のお客様にも好評なんですよ。自国に帰っても作れるように、簡単な作り方にしています」と、優しくコツを教えてくれる堀田さん。岐阜県の観光PRでフランス、タイ、中国に出展。世界の食卓にも届けようとしています。
 食べるのはもったいないほどの華やかさですが、郷土愛を感じる懐かしくて優しい味が口の中に広がります。ぜひ作るところから体験してみてください。

鬼滅の刃の世界 鬼岩公園

 続いて町東部にたたずむ鬼岩温泉をご紹介します。鬼岩温泉は、木曽川に注ぐ可児川の源にある飛騨木曽川国定公園内に湧き出る天然温泉です。
 その昔、傷ついたシラサギの湯あみを見て発見されたと伝えられ、平安中期の歌人・和泉式部も湯治をしたとか。1960年代には県内3位の集客数を誇った歴史ある温泉地で、今は2軒の温泉宿が静かに並んでいます。切り傷や高血圧症などに効能があるラジウム鉱泉で湧出量も豊富です。
 温泉を通り過ぎると鬼岩公園の入り口です。ツツジやアジサイなど季節の花とともに鬼のトーテムポールがお出迎え。手作りのぬくもりあふれる鬼のお面に和みます。
 小さな橋を渡って公園に入っていくと、文字通り鬼のように大きな花こう岩が織りなす景勝地です。園内には鬼人が住んでいたという鬼の岩屋をはじめ、太郎岩、まな板岩など、鬼伝説と共にユニークな巨岩怪石が続きます。
 最近では人気アニメ「鬼滅の刃」で、主人公が一刀両断にした巨岩によく似ている鬼の一刀岩が全国から注目を集めました。一枚岩の巨岩の上から望む360度の大パノラマは、大自然の一部になった気分にさせてくれます。

異空間の岩穴くぐり

 鬼岩公園の話題をもう一つ。普段は入ることのできない「岩穴くぐり」のガイドツアーが定期開催され、人気を呼んでいます。全長110mほど続く岩穴を約20分かけてくぐり抜ける珍しい体験です。
 まずは公園入り口で、専属ガイドの説明を受けてヘルメットと軍手をレンタル。コース入り口から降りていくと、岩穴は徐々に狭く暗くなっていきます。岩の隙間のところどころから差し込む光と、足元を流れる清流が冒険心をくすぐり、まさに異空間が新鮮です。
 何百年も崩れることなく、岩と岩が支え合ってできている岩穴を四つんばいになってよじ登ります。途中2カ所の中間出口から抜けられるようになっていますが、通りにくさがおもしろくて、あっという間にゴールへ。ぜひ、スリルを感じるアドベンチャー体験に出かけてみてください。
 今も昔も旅人に新たな発見がある御嵩町。一度訪れれば、心に巣食う小さな鬼も消え去り幸せを運んでくれることでしょう。

■次回は北海道浜中町です。

まちのデータ

人口
1万7726人(7月1日現在)
おすすめの特産品
みたけ華ずし、元祖みたけとんちゃん
栗すだれ(和菓子)、舳五山茶など
アクセス
東京駅から御嵩町役場まで電車で約3時間半。車で約5時間
問い合わせ先
御嵩町観光協会
(御嵩町役場まちづくり課内)
0574-67-2111(内線2244)

いつでも元気 2023.9 No.382

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