いつでも元気

2024年4月30日

ケアマネの八面六臂な日々

キャベツの千切り

4月から訪問介護の基本報酬が引き下げられました。ヘルパーが自宅を訪問し掃除をしたり買い物をしたりという生活援助も、体を拭いたりという身体介護も1回の単位数が減らされ、訪問介護事業所の経営が深刻な状況になりそうです。
 特に経営悪化が懸念されるのが、地域に密着した小さな訪問介護事業所。顔なじみのヘルパーさんが長く利用者さんを支援してくれる事業所もあり、ケアマネジャーは随分と助けられてきました。
 生活援助は掃除や料理をするだけではありません。生活習慣や趣味、こだわり、家族の意向も含めた、その人がその人らしく生きていくための支援です。
 ある日、認知症のAさん(90歳代)の義歯が抜けたことに気づいたヘルパーさんが、私に連絡をくれました。ご本人は歯科の往診を受け入れてくれるのかどうか。懸念した私は「もしかしたら、患者さんから心ない言葉をかけられるかもしれません」と歯科医師に先に謝り、往診に同席しました。
 ご自宅に着くなり、Aさんは「帰れー」と怒鳴ります。「ばか」と叫ぶAさんに、「呼びました?」と歯科医師は平然と対応しながら、毎週往診を続けてくれました。
 ヘルパーさんに歯科治療の途中経過を報告すると、「今日は肉が食べられました」「先にキャベツの千切りを出すと、次の料理もスムーズに食べてくれます」など、Aさんの食事の様子を事細かに教えてくれます。自転車ですれ違いざまに「今日は歌をうたってくれましたよ~」と声をかけてくれたヘルパーさんもいました。
 なぜ、キャベツの千切りなのか不思議ですが、これが生活に寄り添った工夫、ご本人の嗜好に合わせたケアでしょう。ケアマネは毎日ケアに入っているヘルパーと情報を共有することで、その人に合ったケアプランを立てることができます。
 介護報酬改定のたび、ヘルパーがケアにかけられる時間もどんどん短くなっています。常に時間に追われ、それでもなんとかご本人が快適に過ごせるよう懸命に知恵を絞る、そんな厳しい現実があります。
 訪問介護の基本報酬引き下げは、人が生きていくための生活支援を軽視しているとしか思えません。


石田美恵 
東京民医連のケアサポート千住(足立区)所長
全日本民医連「ケアマネジメント委員会」委員長

いつでも元気 2024.5 No.390

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