いつでも元気

2008年8月1日

後期高齢者医療制度 “年齢で差別許せない”“年金天引きするな” 全国で2700人超す不服審査請求

75歳以上なら誰でも異議申し立てを

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6月2日、約230人が後期高齢者医療制度の不服審査請求書を提出(東京都庁で)

 後期高齢者医療制度に対し、当事者である高齢者の“反撃”が広がっています。
 その一つが不服審査請求です。四月~六月にかけて北海道、群馬、東京、滋賀、京都、大阪、福岡、長崎などで集団申請がとりくまれ、六月末までに合計二七 〇〇人分以上が各都道府県後期高齢者医療審査会に提出されています。
 辻岡テル子さん(77、札幌市)も不服審査請求をした一人。いちばん許せないのは「七五歳で線引きすること。意味がわかりません」。
 保険料も上がりました。辻岡さんの国民健康保険料は夫と二人で約一〇万円でしたが、後期高齢者医療制度では約一三万円に。辻岡さん自身は年一八万円の年金から三万円も保険料をとられることに。
 区役所に「保険料が高すぎる」と抗議したこともあるという辻岡さん。しかし「あなたよりも低い所得の人だっている」という返事だったといいます。
 「私より生活がたいへんな人がいるのは知っていますよ。でも、それが区役所のいうことなんですか?」とカンカン。「いまでも生活はぎりぎりなのに、保険 料は二年ごとに上がってしまう。それって『どうぞ死になさい』ってことでしょう?」
 同じく滋賀県で不服審査請求をした神原きくさん(85、大津市)も、「高齢者にわざわざ『後期』とつけたことに頭にきています。七五歳で保険制度を区切ったということがおかしい」と。
 「戦前は『戦争は勝たなあかん!』と思わされてきたけど、間違った戦争だった。だからこそ私は命の大切さが骨身にしみています。かけがえのない命を軽々しく扱ってほしくない」

不服審査1万人めざす

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6月4日~6日、厚労省前で全国老後保障地域団体連絡会などが座り込み。千葉県から参加した西垣洋一さん(79)は「国は財政難だというが、人も車も通らない道路、橋、トンネルを次々につくって何百兆円もの借金をつくったのは国の責任ではないか」と

 不服審査請求とは、行政処分に不服を申し立てること。今回の場合は、不服の理由などを書いて、後期高齢者不服申請審査会に提出します。提出は本人でも代理でもかまいません。
 不服審査請求の対象になるのは、▽「高齢者を差別するような医療保険制度に入った覚えはない」「事前に説明を受けていない」という加入手続きや、▽「天 引きするな」「高すぎる」など保険料や徴収方法に関するものなどです。
 また、この手続きには行政処分を知った日の翌日から六〇日以内という規定がありますが、「保険料の通知や天引きから六〇日を過ぎた」という人も、あきら めることはありません。住民税確定(六月)にともない、自治体が正式な保険料を計算しなおして通知するのは七月ごろだからです。東京の一四区など、まだ天 引きが始まっていない自治体もあります。“一〇月から天引き開始”などの自治体も少なくありません。
 全日本民医連と全日本民医連共同組織活動交流全国連絡会は、社会保障推進協議会(社保協)や年金者組合などと協力して一万人分の不服審査請求をやりきろうととりくんでいます。

一部手直しでは許されない

 野党四党が共同で提出した後期高齢者廃止法案は、六月六日、参議院本会議で可決され、衆議院にまわされました。
 ところが衆議院に法案がまわったとたん、民主・社民・国民新党は提出した法案の審議を自ら拒否。そのまま六月一九日、国会が終わり、継続審議になりまし た。全日本民医連は七月~八月、秋の国会に向けて衆議院での審議を求める署名にとりくみ、たたかいを強める方針です。
 不服審査請求の集団申請がテレビなどで報道されると、各県の社保協に「よくやった」「次はいつやるのか」との声が。不服審査請求が引き金となり、議員の 間に「こんなにヒドい制度だとは知らなかった」「やっていける自信がない」など、動揺が広がっている県広域連合もあります。
 「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とばかりに、部分的な見直しだけで制度への怒りをやりすごそうとする自公政権。審議拒否をした野党三党にも、廃止法案の審 議の席についてもらう必要があります。だからこそ、たたかいの手をゆるめるわけにはいきません。制度廃止のカギを握っているのは、国民世論と運動です。
 不服審査請求をさらに広げ、制度の問題点を広く知らせ、制度廃止に追い込む運動が必要です。中央社保協の相野谷安孝事務局次長(全日本民医連理事)は、 「制度に不満のある七五歳以上の人は誰でもできます。社保協や民医連の病院・診療所などに相談して、不服審査請求にとりくみましょう」と話しています。
文・多田重正記者/写真・五味明憲

いつでも元気 2008.8 No.202

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