くすりの話 高血圧の薬と副作用
執筆/岐浦 綾太(一般社団法人メディホープかながわ はまゆう薬局、薬剤師)
監修/野口 陽一(全日本民医連薬剤委員会、薬剤師)
読者のみなさんから寄せられた質問に
薬剤師がお答えします。
今回は高血圧の治療に使われる
代表的な4つの薬と副作用についてです。
高血圧の治療薬は、作用の違いによって使い分けられており、それぞれに特徴的な副作用があります。なお、副作用の現れ方には個人差があるため、気になることがあれば医師や薬剤師にご相談ください。
① カルシウム拮抗薬
(アムロジピン、ニフェジピンなど)
血管を拡げて血圧を下げます。心臓の血管を拡げる効果もあるため、狭心症の薬としても使われることがあります。副作用として、歯茎が腫れる「歯肉肥厚」が知られています。歯みがきやデンタルフロスで、口の中を清潔に保つことが大切です。
② β(ベータ)遮断薬
(アテノロール、ビソプロロールなど)
心臓から送り出す血液の量を減らして血圧を下げます。高血圧だけでなく、心臓の病気の治療にも使われています。副作用として、脈が遅くなる「徐脈」に注意が必要です。また、まれに息苦しさを感じることがあります。
③ ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬
(エナラプリル、リシノプリルなど)
血圧を上げる体内物質の働きを抑えて血管を拡げ、血圧を下げます。腎臓や心臓を保護する働きもあるため、幅広く使われています。主な副作用は、痰の絡まない「空咳」です。
④ 利尿薬
(トリクロルメチアジド、フロセミド、スピロノラクトンなど)
体の水分を尿として出すことで、体の中の血液の量を減らし、血圧を下げます。高血圧のほかに、心不全やむくみの治療にも使われています。血液中のナトリウムやカリウムの濃度に影響することがあるため、体調の変化に気をつけて定期的に検査を受けることが必要です。

夜間頻尿について
薬局では、夜に何度もトイレに行きたくなる「夜間頻尿」の相談をよく受けます。夜間頻尿の原因は、薬の副作用や病気、生活習慣などさまざまです。高血圧の薬と夜間頻尿は一見関係ないように思えるかもしれませんが、原因となっている場合があります。
利尿薬の例では、のどが渇いて水分を多く摂ってしまったり、お薬を飲む時間を守らなかったりすると、夜間に尿の量が増えてしまうことがあります。また、カルシウム拮抗薬の副作用で頻尿が起こることも知られています。
薬以外の例では、年齢による膀胱の機能の変化や前立腺肥大症、心不全などが原因になることもあります。お酒やカフェインの摂りすぎも影響します。
夜間頻尿でお困りの場合は、かかりつけの医師や薬剤師にご相談ください。
いつでも元気 2025.10 No.407
