• メールロゴ
  • Xロゴ
  • フェイスブックロゴ
  • YouTube
  • TikTok

いつでも元気

いつでも元気

くすりの話 片頭痛の薬と副作用

執筆/中澤 千寿(一般社団法人ファルマネットぎふしいのみセンター薬局、薬剤師)
監修/野口 陽一(全日本民医連薬剤委員会、薬剤師)

読者のみなさんから寄せられた質問に
薬剤師がお答えします。
今回は片頭痛の薬と副作用についてです。

 日常生活にも支障をきたす片頭痛。音や光などが刺激となり、頭痛がひどくなると勉強や仕事に集中できなくなることもあります。
 今回は、従来から使われているトリプタン製剤と、最近発売された注射剤のCGRP関連抗体薬について、それぞれの特徴を紹介します。

◆トリプタン製剤

 トリプタン製剤は片頭痛の発作時に用いられる代表的な薬です。使用後30分〜1時間ほどで効果を感じ、頭痛のピークを抑えやすい点が特徴です。日本で発売されてから20年以上が経ち、現在では5種類の製剤が開発され、内服以外に点鼻や皮下注射があります。片頭痛が起きたらできるだけ早く服用することが大切です。
 副作用として、胸や首の圧迫感、動悸、めまい、吐き気が現れる場合があります。血管への影響によって心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす可能性もあるため、心臓病や脳血管障害を持つ方は使用できません。また、妊婦や授乳中の方にも注意が必要です。
 価格は薬の種類や用量によって異なりますが、ジェネリック医薬品であれば一番安価なもので、1割負担で1錠12円、3割負担で36円程度です。

◆CGRP関連抗体薬

 CGRP関連抗体薬は、頭痛の原因に関わる物質(CGRP)の働きを阻害することで、片頭痛の発症を抑制したり症状を軽減したりします。これまでの薬とは違い、頭痛の原因そのものに働き、片頭痛を予防します。
 日本では2021年にエムガルティ®(ガルカネズマブ)、アジョビ®(フレマネズマブ)、アイモビーグ®(エレヌマブ)の3剤が承認され販売を開始しました。1カ月ないしは4週間に1回皮下注射します。アジョビ®は12週間に1回の投与も可能です。
 副作用は比較的少ないですが、注射部位の赤みや腫れ、かゆみがよく見られます。ペン型の注射を自宅で自己注射する方法もあります。
 効果が期待される製剤ですが、難点はその価格です。保険適用で自己負担が3割の場合、エムガルティ®は初回が約25,000円、その後の継続投与では約13,000円程度かかります。アジョビ®とアイモビーグ®は初回で約12,000円、アジョビ®を12週ごとに投与する場合は約37,000円(3本分)となります。
 費用面で大きなハードルがありますが、予防薬としての選択肢が増えたことは患者にとっても朗報です。処方できるのは専門医が在籍する医療機関に限られるので、受診前にご相談ください。

◆自分にあった治療法を

 片頭痛患者は「発作時の対処」だけでなく、「日常的な予防」もできるようになりました。トリプタン製剤とCGRP関連抗体薬は役割が異なるため、症状の頻度や生活スタイル、費用などを踏まえて、自分に合った治療法を医師と相談しながら選ぶことが大切です。

参考:日本神経学会「頭痛の診療ガイドライン 2021」
   頭痛学会「CGRP 関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版)」

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2025.11 No.408