いつでも元気

2008年12月1日

米は私たちの命 汚染米・悪のトライアングル それでもまだ輸入を続けますか?

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横山昭三さん

 「いま食べているお米は安全だろうか…」。この秋、発覚した「汚染米(事故米)問題」は世間を大きく騒がせました。危険で食用にできず、工業用として安く売られた汚染米が、いつの間にか食用に化けていた。なぜ、こんなことが…。そもそもの原因はどこにあるのでしょうか?
 農民運動全国連合会(農民連)はミニマムアクセス米(以下MA米)が始まって以来、輸入米の危険性などを指摘、警鐘を鳴らし続けてきました。前号に続 き、「汚染米問題」について、農民連の産直組織・農民連ふるさとネットワーク事務局次長・横山昭三さんに聞きました。

 

汚染米でも政府が輸入を許可

図1 事故米の75%は輸入米
(販売状況の公表資料をもとに農民連が作成)
1995~2007年度 合計34,185トン

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■輸入事故米のうち商社ルートは76.4%を占める。
商社ルートとは、輸入時に食品衛生法違反とわかり、商社が業者に流した事故米。政府ルートとは、保管時に発生した事故米で政府から業者に流れたもの

 一〇月八日、農民連による農水省との交渉や衆議院予算委員会での追及で、驚くべきデータが明らかになりました。汚染米の発生は、「事件発覚時に発表された量の四倍、三万四〇〇〇トン。その七五%が輸入米」だったのです(図1)。
 汚染米問題の全容解明と合わせ、MA米の抜本的見直しが、いま必要です。
 MA米の輸入がはじまったのは一九九五年から。日本政府は米農家には四割もの「減反」を押しつけながら、輸入機会の提供にすぎないMA米を義務だと称し て毎年七七万トンも輸入し続けました。農産物の輸出大国アメリカと農産物の輸入自由化を求める日本の財界の強い圧力が働いていたのです。
 農家や国民の反発を恐れ、政府は主に加工用に回しますが、限度があります。最近では一番の用途は家畜の飼料。政府が抱える輸入米の在庫は増え続け、いっとき二〇〇万トンを超え、国産米備蓄の二倍にも達していました。その保管のために巨額の税金が使われていました。(図2)。
 「需要もないコメを輸入し続けた」、ここにこそ事件の大本があったのです。輸入米、なかでも汚染米の在庫を減らそうと必死の政府は、「悪質な業者にまで汚染米を流す」仕組みをつくりあげたのです。
 MA米は政府の委託で輸入商社が買いつけ、国内に持ち込みます。しかし、汚染米の可能性があったら、輸入商社はすすんで買い入れるでしょうか? 買い入 れた裏には、汚染米であっても買うという約束が政府との間にあり、輸入商社への特別待遇、手厚い保護があったのです。
 なんと、汚染米の発生に備えた保険や残留農薬検査の費用まで、すべて政府が負担していました。さらに日本の港で食品衛生法違反で汚染米と判明した場合で も、工業用の名目で税関を通通させていたのです。「輸入商社はゼッタイ損をしない、政府は確実に七七万トンの輸入実績をあげられる」という、おたがいの利 害が一致していたのです。

図2 MA米の保管に2520億円も
(MA米保管にかかる管理経費の推移)
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■1995~2006年度は実績、2007年度は見込み、2008年度は予定
■管理経費とは、MA米にかかわる運賃、保管料、事務費など

 

規制緩和で汚染米の流通が加速

 二〇〇四年「食糧法」の「改正」も、米の流通に悪徳業者の参入を許すうえで大きな役割を果たしました。それまでの登録制から、「届け出」さえすれば、だ れでも自由に米を販売できるようにしてしまったのです。これは農業版「構造改革」です。規制緩和のうたい文句は「米ビジネスを発展させ、売れる米づくりを 流通面から促進する」でした。
 三笠フーズへのずさんな検査にみられるように、農水省は悪徳業者を取り締まるどころか、一緒になって汚染米の流通をすすめてきたのです。膨れ上がる輸入米在庫。引きとってくれる業者には一粒でも多く流したいと考えたのですね。
 また悪徳業者は、汚染米を食用に転売するなどして高利を得ていました。まさに、政府、商社、悪徳業者の「汚染米・悪のトライアングル」です。行き過ぎた規制緩和が安全・安心を置き去りにしたのです。

genki206_04_04あの時、政府の対応がまともなら

 早くから汚染米の安全性を疑問視していた農民連は、二〇〇三年「MA米の購入業者」を公表するよう政府に情報開示請求しましたが、「(MA米の)在庫処 理の対応に苦慮している」「開示した場合、購入とりやめが相次ぐことが予想される」という理由で請求は拒否されました。
 あのとき政府がまともな対応をしていれば、今回のような事件にはならなかったと思います。事件を契機に農水省は、「輸入米を購入した業者名をすべて公表 する」と決めました。大きな代償を払いようやく要求実現です。また、米を原料とする加工食品の原産地表示を義務づける検討が始まります。消費者に選択の機 会が保障され、輸入米が流れる余地は大幅に狭められます。ぜひ実現したいですね。

いい加減にアメリカいいなりやめ

 いま農民はもちろん、国民の間に政府の米政策に怒りの声が広がっています。 汚染米事件の解明はもちろんですが、米の流通に政府が責任をもち、国民に 「安全で安心できる米」を提供できるよう一定の規制をするべきです。現状は野放しで、何でもあり。食品偽装が相次ぎ、本当に「食の安全」が求められていま す。
 そしてこの際、必要のないMA米の輸入は、いますぐやめるべきです。金融危機で、あれだけ世界に迷惑をかけているアメリカ。もういい加減にアメリカいいなりはやめて、「MA米について」強くもの申すときでしょう。
 食糧確保が困難な時代、もし日本が率先してMA米の輸入をやめれば、飢えで苦しんでいる途上国や不公平な貿易を押しつけられている国々から大歓迎される でしょう。日本の米は世界に誇れる! 不要なコメは買わず、日本の田んぼをフルに活用すべきです。農業を再生すれば日本の景気、将来にもつながる…、いま がいい機会です。米粒ひとつから、いまの日本の農業の縮図が、そして将来がみえます。
聞き手・井ノ口創記者

いつでも元気 2008.12 No.206

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