• メールロゴ
  • Xロゴ
  • フェイスブックロゴ
  • YouTube
  • TikTok

いつでも元気

いつでも元気

くすりの話 子どもの脱水症と経口補水液の使い方

執筆/藤竿 伊知郎(元・外苑企画商事、薬剤師)
監修/野口 陽一(全日本民医連薬剤委員会、薬剤師)

読者のみなさんから寄せられた質問に
薬剤師がお答えします。
今回は、子どもの脱水症と経口補水液の適切な使い方についてです。

◆経口補水液の開発と普及

 季節を問わず、子どもの脱水症対策で重要な役割を果たすのが経口補水液です。熱中症のイメージが強いかもしれませんが、経口補水液が最も適応されるのは、感染性腸炎や風邪に伴う下痢、嘔吐、発熱による脱水症です。
 子どもは体内の水分調整機能が未熟なため、下痢や嘔吐があるとすぐに脱水状態に陥ります。特に冬から春にかけてのロタウイルスやノロウイルスなどによる感染性胃腸炎、夏場の細菌性胃腸炎では注意が必要です。経口補水液は、治療の負担が少ない「飲む点滴液」として、効率よく水分と電解質(塩分など)を補給できるように開発されました。
 経口補水液のルーツは、1965年にフットボール選手の脱水死を防ぐ目的で作られたスポーツ飲料にあります。これは、体液に近い浸透圧で水分と電解質を速やかに補う配合です。日本では1980年に「ポカリスエット」が発売され、清涼飲料水として普及しました。
 一方、水分・電解質の経口補液療法は1970年代から世界保健機関(WHO)が激しい下痢の治療に推奨してきました。日本初の製品は2004年発売の「OS-1」で、消費者庁から「病者用食品」としての表示を許可されています。その後、各社から販売されるようになり、普及しています。

◆誤解されやすい「イオン飲料」の過剰摂取に注意

 スポーツ飲料の普及に伴い、「身体にいい飲み物」と誤解され、日常的に飲む清涼飲料水のように扱われる販売状況が見受けられ、心配なことがあります。
 乳幼児向け製品の名称である「イオン飲料」やスポーツ飲料には普通、100mLあたり5gほどの糖類を含んでいます。
 2017年、日本小児科学会は、乳幼児のイオン飲料過剰摂取による重症例を10年分調査し、警鐘を鳴らしました。報告には、下痢治療をきっかけにイオン飲料を1日1リットル以上飲んでいた子どもが、意識障害をともなう深刻な神経障害をおこした事例も紹介されています。過剰な糖分が、エネルギー変換に不可欠の栄養素ビタミンB1を枯渇させたためです。
 消費者の安全をはかるため、2025年6月から、経口補水液には「医師から脱水症の食事療法として指示された場合にお飲みください」という注意書きが追加されました。
 尿の色が濃い、尿量が減っているなど、脱水症の症状がある時に使うのが経口補水液の正しい使い方です。症状が治まれば、飲むのはやめましょう。多すぎる糖分は、食欲不振を招いて病気の回復を遅らせたり、ビタミン不足による体調不良(失調)の原因となるため、安易な飲み過ぎにはご注意ください。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2026.1 No.410