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いつでも元気

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くすりの話 薬の供給不足について

執筆/川村 敦子(かがわ保健企画・栗林公園前薬局、薬剤師)
監修/野口 陽一(全日本民医連薬剤委員会、薬剤師)

読者のみなさんから寄せられた質問に
薬剤師がお答えします。
今回は、薬の供給不足が続いていることについて、現況の解説と薬局での取り組みをまとめました。

 近年、全国的に多くの医薬品が不足する状況が続いています。2025年11月時点での医薬品の通常出荷の状況は86%となっています(厚生労働省HPより)。薬局や病院で「いつもの薬が用意できない」「別の薬に変更になる」といった経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。こうした薬の供給不足は、一部の薬だけではなく、さまざまな種類の医薬品に広がっており、私たち薬剤師も日々対応に追われています。

◆なぜ薬が足りないの?

 薬が不足している主な理由はいくつかあります。まず大きいのは、製造や品質管理の問題です。2020年以降、複数の後発医薬品メーカーで品質管理の不備が発覚し、製造停止や出荷制限が相次ぎました。その結果、そのメーカーの薬だけでなく、同じ成分を扱う他社製品にも需要が集中し、全国的な品薄につながってしまいました。
 次に、原材料の入手が難しくなっていることも深刻です。多くの医薬品は、原薬や包装資材を海外から輸入しています。ところが、世界情勢の不安定化や物流の混乱、原材料価格の高騰の影響を受け、安定した調達が難しくなっています。海外で起きる出来事が、私たちの身近な医療にも大きな影響を与えているのです。
 さらに、医薬品業界の構造上の課題も背景にあります。薬価(国が定める薬の価格)の引き下げが続き、採算が取れなくなった製品について、一部企業が製造を中止する例が増えています。そうなると、少数のメーカーに製造が集中し、一社でトラブルが起きると代わりのメーカーの薬も不足してしまうというリスクが高まります。
 こうした状況を改善しようと、厚生労働省や業界団体ではさまざまな取り組みを進めています。他社による代替生産の支援、製造ラインの増強、必要な薬を優先して届けるための流通調整などです。しかし、医薬品は安全性を確保したうえで慎重に製造しなければならず、短期間で問題を解決するのは簡単ではありません。

◆薬局での取り組み

 薬局では、医師と連携しながら代替薬の提案や用法・用量の調整を行い、できる限り同じ効果が得られるよう努めています。もし普段と違う薬が処方された場合でも、違いについて説明しますので、ご安心ください。また、在庫を確保し必要な方へお届けできるように、一時的に処方日数を分けてお渡しする場合があります。ご不便をおかけすることもあるかと思いますが、できるだけ多くの患者さんに薬が行き渡るための対応ですので、ご理解いただければ幸いです。

◆皆様へのお願い

薬の供給不足は、製造・物流・経済といった多くの要因が複雑に絡み合った問題です。すぐには解決できませんが、私たち薬剤師は一人ひとりの患者さんに寄り添い、安全で確実な薬の提供を続けていきます。今後ともご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2026.3 No.412