いつでも元気

2009年6月1日

元気スペシャル 9条をもつ国として 目の前で両親を殺された 法ふみやぶるイスラエルのガザ攻撃

志葉 玲
ジャーナリスト

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目の前で両親を殺されたサモーニさん(13)と妹。鋭い目が胸に刺さった

 「これは第二のナクバよ」。かつては町だった瓦礫の山の中で、老婆は嘆く。
 “ナクバ”(大災厄)とは、一九四八年のイスラエル建国にともない、パレスチナ人が虐殺され、我が家を追われたことを指す言葉だ。
 昨年一二月二七日から今年一月一八日まで、イスラエル軍による猛攻撃を受けたパレスチナ自治区ガザ。私は一月下旬から二月にかけ、現地を取材した。

110人を集めて爆撃

 これまでイラクやレバノンなどの紛争地を取材してきたが、ここまで徹底した破壊は、そうは見ない。一〇万人もの人々が住居を失い、工場や農場、学校や病 院も破壊された。だが、最も酷く破壊されたのは、民間人の虐殺や非人道的兵器の使用を禁じるなどの、国際人道法の精神であるかもしれない。

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徹底的に破壊されたガザのまち

 ガザ市南部ザイトゥーン地区で会ったザイナブ・サモーニーさん(13)とその幼い妹は、両親を目の前で殺された。
 「イスラエル兵が投げ込んだ爆弾で、パパは首から上がふっ飛んで、ママはお腹が破け、内臓が飛び出たわ。あの恐ろしい光景が忘れられない…」と訴える。
 サモーニー家は親戚同士で集まり集団農場を経営していたが、イスラエル軍の襲撃を受け、一一〇人の人々の大半が一つの建物に集められた。そこに砲撃や空 爆が浴びせられた。人々は白旗を掲げ「女性や子どもがいる!」と訴えたが無駄だった。結局、わずか二日ほどの間に四八人が殺害されたのである。
 そしてイスラエル兵たちは、家の壁に「お前らは全員死ね」「お前らは逃げられるが、隠れきれない」といった落書きまで残していったのだ。

国連施設に白リン弾が

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白リン弾で両足に大やけどをしたアルマルナさん(16)

 イスラエル軍の攻撃はまさに無差別で、国連の施設にすら非人道的兵器が使われた。ガザ市中心部 のシファ病院で会ったサミール・アルマルナさん(16)は、UNRWA(国連パレスチナ難民救済機構)の運営する学校に避難していたにもかかわらず、空爆 で両足に大やけどを負った。
 彼女の体を焼いたのは、白リン弾。病院の医師らは「たとえ兵士が相手でも使うべきでない、残虐なもの」とその恐ろしさを、こう語る。
 「白リンは、人間の体の水分に反応して激しく燃え、皮膚はおろか、肉や骨まで焼きます。小さな破片が付着しただけでも大変です。

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「体内に食い込んでいた白リン弾です。兵士が相手でも使うべきではない」と医師

 ある患者は、最初、軽傷に見えたので、簡単に処置して帰したのですが、数時間後、死にかけて戻ってきました。傷口が大きく広がり、もうもうと白い煙を上げていたのです。体内に食い込んだ白リンの破片が患者の体を焼き続けていたのでした」

イスラエルの責任追及を

 読者のなかには、イスラエル軍の蛮行に怒りを覚える方も多いだろう。だが、イスラエルは建国以 来、ずっと国際人道法違反の常習犯であり、今後もガザへの攻撃のようなことは必ず起きる。だからこそ、一時的な「停戦」で終わりにするのではなく、一四〇 〇人以上もの命を奪い、約五四〇〇人の人々を負傷させた責任の追及をおこなうべきである。
 日本は今年から二年間、国連安保理の理事国だ。これ以上、イスラエルの暴走を許さない、国際的な動きをつくっていくことこそ、憲法九条をもつ国として本当にやるべき国際貢献であろう。

■『ガザ通信』サイード・アブデルワーヘド著/写真・志葉玲(青土社、一五〇〇円+税)が発行されました。

 

いつでも元気 2009.6 No.212

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