いつでも元気

2010年1月1日

「民医連綱領」ここに力の秘密あり6 今回のキーワード■人類の生命と健康を破壊する一切の戦争政策に反対 美ら海、いのち 守りたい 沖縄 辺野古支援・連帯行動

 民医連の事業所は現在一七五八カ所、八万人近い職員が全国で医療・介護をおこなっています。地域や規模は違っても、同じ「心」で つながって…それを表すのが「民医連綱領」です。一九六一年に決定されてから半世紀近く経て、さらなるバージョンアップを計画中。読者に知らせたい民医連 の姿を綱領のキーワードから追う連載。六回目は「人類の生命と健康を破壊する一切の戦争政策に反対」を。

 透き通る碧い海と白い砂浜が続く、沖縄・名護市辺野古。ボートで沖に出た私たちが目にしたのは、沖縄の光と影を映すかのような光景でした。穏やかな波間の向こうに見えたのは、広大な敷地にそびえ立つ米軍基地キャンプ・シュワブ。
ガイドをしてくれた船長は、ボートの下の珊瑚礁や藻場を指し、「滑走路はまさにこの場所につくられる。もし基地ができたら、ジュゴンの棲む豊かな海は消えてなくなるだろう」と、語気を強めます。
「こんなきれいな海にどうして?」と、佐藤麻紀さん(山梨・甲府共立病院=作業療法士)は何度もつぶやきます。

鋭く尖った鉄条網の先をみつめ

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先には一歩も入れない。基地との境界線には平和を願う連帯旗が結ばれている

 全日本民医連は一一月一三~一五日、辺野古支援・連帯行動をおこないました。青年職員を中心に全国から六〇人が集い、辺野古の現状を目の当たりにしました。
 辺野古の浜を無情に切り裂く米軍基地との境界線に向かい、鋭く尖った鉄条網の先をまっすぐ見つめる参加者たち。
 「すべて日本の思いやり予算でつくられたものです」ヘリ基地反対協議会代表委員の安次富浩さんが、次々につくられていく豪華な米軍施設を指さしました。
 日本政府から支払われる米軍への「思いやり予算」は、年間二二〇〇億円にもおよんでいます。新基地建設にも三五〇〇億円がかかる見込み。実際はそれ以上ともいわれています。
 「思いやり? 私の税金を使って、誰のための思いやりなの?」と驚く、黒井恵さん(岐阜・みどり病院=看護師)。九鬼裕史さん(岡山医療生協=事務) は、「広大な基地に米軍住宅や娯楽施設まで。国民の税金がこんなモノに使われているなんて…もっと医療や福祉に使ってほしい」

 

医療従事者、だからこそ

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市街地の真ん中にある「普天間基地」

 全日本民医連は、二〇〇四年からこれまで、一八回にわたって新基地建設反対への支援・連帯行動にとりくみ、のべ約一二〇〇人の職員が足をはこびました。
 なぜこの行動を続けてきたのか? 「『いのち』を守る仕事をしている私たち医療従事者にとって、多くのいのちを一瞬にして奪う『戦争』はまさに逆行する、決して許されないものだからです」と、沖縄民医連事務局の新垣潔さん。
 辺野古への新基地建設問題は、一九九六年の日米間の合意(SACO合意)に遡ります。九五年の米兵による少女暴行事件をきっかけに爆発した県民の怒りを受け、日米両政府は普天間基地返還と引き替えに、辺野古に新たに米軍基地をつくることで合意したのです。
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九七年に名護市の住民投票で海上ヘリ基地建設反対の意志が示されたにもかかわらず、二〇〇四年、那覇防衛施設局が一方的に辺野古海域の着工前調査(ボーリ ング調査)を強行しようとしました。この日以来、「宝の海を戦争基地にはさせない」と地元住民らが立ち上がり、一日も休まず座り込みを続けています。二〇 〇〇日を超えたいまも着工を許さず、一本の杭も打たせていません。

基地との平和的共存はありえない

 座り込みを続ける思いは、どこから生まれているのか?
 安次富さんはこう語ります。「よく考えてほしい。もともと沖縄には基地がなかったのだということを…」
 一九四五年、沖縄は激しい地上戦に巻き込まれました。多くの民間人が戦渦の中を逃げまどい、尊い命が奪われました。そして戦後、米軍は銃剣とブルドーザーで強制的に県民を立ち退かせ、土地を取りあげたのが、米軍基地のはじまりです。
 いまや、在日米軍基地の七五%が集中している沖縄。戦闘機による騒音や墜落事故。米兵によるひき逃げや暴行事件もあとを絶ちません。基地と隣り合わせの 住民は常に危険にさらされ、「平和」とはほど遠い生活です。「基地との平和的共存(共生)なんてありえないのだ」と、安次富さん。
 新垣さんも「沖縄民医連の歴史は基地とのたたかいの歴史。基地撤廃のとりくみを抜きに沖縄民医連は語れません」。
 一方で、三年前から座り込みに加わったという大城博さんは、「この基地から出ていった軍隊が、イラクやアフガンなど海外で戦争をし、罪もない人のいのち まで奪っているのはまぎれもない事実。私たちは基地による被害者であると同時に、戦争に加担している『加害者』なんだという思いも強いのです」と、複雑な 胸の内を明かしてくれました。

基地建設は最大の環境破壊

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沖縄戦の爪跡が残る「アブチラガマ」で

 「『平和』と『環境』を守り抜けば、必ず『戦争』はなくせる。何としても新基地建設を撤回させ たい」と、力を込める安次富さん。「戦争は『地球規模の犯罪』、基地建設は『最大の環境破壊』だ」と。「辺野古のたたかいは、まさに憲法で保障されている 『平和的生存権』を守るため。私たち国民には恐怖に脅かされることなく、平和に暮らすことができる権利がある。それなのに、これまでの自公政権は日米安保 条約の名のもとに、沖縄に大きな犠牲を強いてきた」とも強調します。
 新垣さんも「新しい時代に、私たち民医連は地球環境を守ることや核兵器廃絶を含めて、いのちや健康を脅かす『一切の』戦争政策に反対という理念を新綱領 に掲げようとしています。この支援・連帯行動や原水禁世界大会などの『平和活動』に職員を派遣し、自分の目で感じてもらう意義はココにある」と。

肌で感じた思い、全国各地へ

 支援・連帯行動を通じ、「戦争は人の生命を奪うだけでなく、環境を破壊し、人権を侵害するという言葉が印象的でした」と鹿児島・国分生協病院の作業療法士、東郷花さん。
 「基地を容認することは、世界平和を脅かすことであると知った。新基地の移転を許してはいけない。米軍の沖縄からの撤退を強く願う気持ちが高まった」と大阪・耳原総合病院の理学療法士、椿和人さん。
 「こんなにも米軍基地があり、『思いやり予算』で日本国民より米兵が優遇されていて驚いた。沖縄はいまだ米軍に支配されているようだった…」と話すの は、富山協立病院の検査技師、大野嘉奈子さんです。「暴力で平和は生まれないと知っているおじぃやおばぁは、絶えず笑顔で、非暴力でたたかい続けているこ とに感銘を受けました」とも。

 「辺野古の問題は日本の問題。多くの人にこの現状を知ってもらいたい」と、参加者は語りあいました。職場での報告会はもちろん、さっそく平和署名にとりくみたい、「反核自転車平和リレー」(ピーチャリ)を成功させたい…と、今後の平和活動への期待が膨らみます。
 これまでも支援・連帯行動に参加した青年職員たちが報告会を各地でおこない、感じたことを伝え広げてきました。
 テレビの前で見ていた基地問題を、自分の肌で感じた参加者たち。若い世代のまっすぐな感性、平和への願いに大きな可能性を感じました。
文・井ノ口創記者/写真・酒井猛

いつでも元気 2010.1 No.219

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