Dr.小池の世直し奮戦記

2013年4月1日

Dr.小池の世直し奮戦記 ちょっと待って「改憲のための改憲」

 国会の中で、「改憲」の動きが強まっています。
 安倍首相は衆院本会議で、憲法改定に関し「まずは多くの党派が主張している九六条の改正にとりくむ」と明言しました。現職の首相が、国会で憲法改定に具体的に言及するのは異例のことです。

なぜ改憲に高いハードルが

 憲法九六条では、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを 発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」と憲法を変える際のルールを定めています。自民党や維新の会、みんなの党などがこの「三分の二以 上」を過半数に変えようとしているのです。
 ふつうの法律は過半数の賛成で採択されるのですが、憲法だけは三分の二以上となっているのはなぜでしょう。それは、憲法の存在意義そのものに関わってきます。
 憲法以外の法律は、社会の秩序を守るために、国家が国民に対して権利や自由を制限するという性格を持っています。憲法はそれとは正反対で、国民の基本的 人権や自由を守るために、国家権力の行為を制限するためのものです。こういう特別な法律ですから、時の権力が自分に都合の良いように変えることができない よう、ハードルを高くしているのです。
 国際的に見ても、多くの国で憲法を変える手続きは厳格になっています。たとえばアメリカもドイツも韓国でも、議会の三分の二以上の賛成が必要です。

96条改定のねらいは“憲法9条”

 なぜ自民党や維新の会、みんなの党などは、改憲手続きのハードルを下げようとしているのでしょうか。
 維新の会幹事長・松井一郎大阪府知事は「まず憲法九六条を変えないと、九条は変えられない」(昨年一二月、記者団に)と言いました。ねらいは憲法九条なのです。
 世論調査では、「憲法九条を変えて自衛隊を『国防軍』に」という人は少数です。昨年一二月三日の「朝日」調査でも賛成は二六%で、反対(五一%)の半分 に過ぎません。九条の改憲には国民の反対が強いので、これとは切り離して、まずは憲法改定の発議要件を緩和し、改憲のハードルを下げてしまってから「本 命」の九条を変えて自衛隊を「国防軍」にしようというわけです。
 しかしこうしたやり方には、改憲を主張してきた人の中からも異論が寄せられています。慶応大学教授の小林節氏は言います。
 「国会議員の三分の二の賛成がないとダメだというのにいらだって、自民党はこれを二分の一にしちゃいましょうという案を出してますよね。憲法を改正する のなら国民を説得して賛成を得るべきで、それができないから手続きを変えるというのは邪道です」(JBpressホームページより)。
 改憲の本音を隠し、「手続きするだけ」と誘い込む「裏口入学みたいな改憲」(小林教授)など、決して許してはなりません。

憲法の本来の役割発揮させよう

 できてから六六年経つのに、憲法は本来の役割が発揮されてきませんでした。国際紛争の解決を武力でなく平和的手段に求めた前文と九条も、国に生存権の保障と社会保障の増進を求めた二五条も、もっとくらしや政治に生かされるべきです。
 「改憲のための改憲」──憲法九六条の改定を許さず、憲法を今こそ花開かせるときです。

いつでも元気 2013.4 No.258

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