原水爆禁止2005年世界大会 核兵器廃絶へ 加速する世界の流れ フランスから160人、ドイツからも初参加
原水爆禁止二〇〇五年世界大会(八月二~九日、広島・長崎)には、海外から、過去最高の四カ国の政府代表、二六カ国八国際組織の二六四人が参加し ます。五月のNPT(核不拡散条約)再検討会議で米政権が見せた横暴に世界が怒り、核兵器廃絶への流れはいっそう強まっています。そのなかで開かれる世界 大会。フランスからのリポートと、初参加のドイツからのメッセージです。
広島・長崎をめざすフランスの若者たち
美帆シボ
フランス平和自治体協会顧問
核廃絶署名を集め、国連に届けた若者たち。世界大会にも参加するソフィー・ルフェーズさん(右端)は「憲法9条は紛争解決のモデルになります。9条を守り核兵器をなくす運動を進めている日本のみなさんに励まされています」(写真提供MLP) |
最近の若者は……、と愚痴るのはどの国でも同じようだ。とりわけ対独抵抗運動(レジスタンス)の世代や、日本で五月革命といわれる社会改革運動を行なった一九六八年世代にとっては、いまの若者たちの政治的な関心は低いという。
とはいえ日本人の私から見ると、フランスの若者たちの社会に関する意識は高く、行動力もある。政府が教育法改革案を出したときは、自発的に高校生たちが その問題点を討論しデモによって反対の意志を示した。イラク反戦デモのときも、若者たちが頼もしかった。が、こと反核集会となると若者が見当たらない。
そのフランスから広島と長崎を目指して八〇人の青年が出発する。フランス平和委員会が組織するこの青年代表団に「かつての若者」も五〇人加わり、さらに 第六回世界平和都市市長会議に参加するフランス平和自治体協会の代表三〇人を加えると、計一六〇人のフランス人が核兵器廃絶を訴えて日本に渡るわけだ。な ぜこのような計画が立てられたのだろうか。
フランス平和委員会の二人の会長の一人、ピエール・ヴィラールは数学と物理を教える高校の教師だ。彼は今回の青年派遣団の目的を次のように語った。
「フランスの平和活動家が高齢化する一方、世代が若くなるにつれて、活動家の数も減ってきました。そこで、四、五年前から、核兵器廃絶運動に若者たちが 関心を持つよう配慮してきたのです。
たとえば、国連でのNPT再検討会議でも若者を優先的にニューヨークに派遣し、国際交流の体験を豊かにする機会をつくりました。また、広島市長と長崎市 長の核兵器廃絶キャンペーンの呼びかけや、核兵器廃絶署名運動、さまざまな平和活動の展開が若者たちを育てる大きな力になっています。
私自身も以前、広島と長崎に行く機会を得て核兵器の惨状を知り、それまでの考え方が変わりました。だから、フランスの若者たちがヒロシマとナガサキの両 方を訪れて、自分の目で見たり聞いたりすることが大切だと思ったのです。
この夏、被爆六〇年に原水爆禁止日本協議会や日本のたくさんの方々の力により、核兵器をなくすための『世界青年のつどい』が開かれることになりました。 大会に参加する人々は、フランスから平和と連帯のメッセージを伝えるだけでなく、日本での貴重な体験をフランスに持ち帰り、たくさんの人々と共有するで しょう。それは未来に向けて反核・平和運動を広げてゆく準備となると思います」
ことしフランスの「核実験被害者の会」が国に対して起こした訴訟の一つが勝利した。「湾岸戦争被害者の会」のメンバーも劣化ウラン弾などの被害の認知を 国に求めて、ハンガーストライキをしている。核保有国フランスで地道な活動が広がり、若者たちが核廃絶署名を集め、ニューヨークの国連に代表者が持参し た。
今度は広島と長崎で、世界の若者たちと核兵器のない平和な未来を語り合う。フランスの若者たちにとって運動はスタートしたばかりだ。
「平和と協力」の歴史つくろう
ハンス・ペーター・リヒター
ドイツ平和評議会/ドイツ・日本平和フォーラム
原爆投下は人類の歴史上まれにみる残酷な経験でした。第二次世界大戦終結六〇周年は、私たちの歴史を正しく認識し、将来を見つめる機会です。
日本とドイツは似通った歴史を持っています。どちらも第二次世界大戦を始めた国であり、数百万人を死に至らしめ、戦争に敗れ過酷な爆撃を受けました。
どちらもアメリカに占領され、軍事基地にされ、その後共産主義諸国に対する戦いに利用されました。どちらも被害者であると同時に加害者です。日本は憲法 九条を持っており、ドイツも憲法二六条により侵略戦争は禁止されています。両国のこれらの条項は、どちらもアメリカ政府によって蹂躙されています。
核兵器はドイツで使われるはずでしたが、完成する前に戦争が終わり、アメリカはその「衝撃と畏怖」を見せつけるため日本に使ったのです。
私たちの展望は「新たな被爆者をつくるな! ノーモア戦争! 紛争解決は非軍事的手段で! ノーモア核兵器! ノーモア・アウシュビッツ!」です。世界 中で行なわれている努力を結集し、既存の軍事同盟よりも力強い人々のネットワークを作り上げねばなりません。すべての軍事基地を次々に閉鎖させましょう。
人類の歴史は「衝撃と畏怖」ではなく、「平和と協力」でなければなりません。
ドイツ・日本平和フォーラムが組織した代表団には、ドイツ平和評議会、ドイツIPPNW、ドイツATTAC、欧州廃絶2000、欧州平和フォーラム、ドイツ社会フォーラム、欧州社会フォーラム、世界平和評議会の代表が含まれています。
いつでも元気 2005.9 No.167