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いつでも元気

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まちのチカラ 山口県田布施町 古墳といちじく心の古里を感じる旅

神秘的な竹藪の奥に後井古墳がたたずむ

神秘的な竹藪の奥に後井古墳がたたずむ

 山口県南東部に位置する田布施町。
 古代のロマン漂う古墳巡りや、瀬戸内海に浮かぶ小さな馬島が魅力です。
 特産のいちじくと郷土料理に舌鼓。
 歴史と自然豊かな瀬戸内のまちを訪ねました。

 山口県周南市の徳山駅から車で約50分、田布施町に到着しました。町の中央を田布施川が流れ、瀬戸内海に注いでいます。古くから大陸と日本列島を結ぶ海上交通の要所とされた地域で、弥生時代から古墳時代には「熊毛王国」と呼ばれる一大勢力が支配していました。
 そのため、町には古墳や史跡がたくさんあります。古墳の数は90基を超え、今も発見が相次いでいます。町の文化財調査室、荒蒔周平さんの案内で代表的な古墳のひとつ後井古墳を訪ねました。
 町中心部に近い城南地域の秋葉山。竹藪の中の鳥居をくぐり、石段の参道を上がるとすぐに後井古墳です。6世紀末から7世紀初頭につくられた、1号墳と2号墳からなる双円墳で、山口県最大級の横穴式石室があります。
 自由に見学できる1号墳では、玄室(棺を納める部屋)に入ることができます。真っ暗な玄室をライトで照らすと、火の神「秋葉様」が祀られた社があり、部屋全体が驚くほど大きな石で建造されています。「どんな人たちがどのようにして古墳をつくったのか、想像してみてください」と荒蒔さん。この地を支配した熊毛王国の力の強大さがうかがえます。
 他にも納蔵原古墳や国森古墳など、古墳巡りが楽しめる田布施町。町の郷土館には古墳からの出土品や文化遺産が展示されているので、詳しく学んでみるのもいいでしょう。

太陽の味 いちじく

 町を代表する農産物のいちじくは、県内一の出荷量を誇っています。旬は初夏から秋で、完熟の状態で収穫されたいちじくが市場や直売所に並びます。いちじく生産者、柴田功さんの畑を訪ねました。
 柴田さんは地域おこし協力隊として、7年前に兵庫県から田布施町に移住。もともと祖母の農作業を手伝っていたこともあり、着任1年目に町の「イチジク栽培大学」で学び、圃場を借りて栽培を始めました。
 「田布施の肥沃な土壌と温暖な気候が作物を良くしてくれる。おいしいよってお客さんに言われるのが嬉しいですね」と柴田さん。露地栽培で育てるいちじくは、自然の水と風、太陽をたっぷりと浴びて香り高く深い味わいに。糖度が高く、果実が大きいのも特徴です。
 いちじくはそのまま生で食べるのが一番ですが、ジャムやういろうなどの加工品もお勧め。新鮮でジューシーないちじくを、さまざまな形で味わってみてください。

郷土料理 おごうさん団子汁

 町の伝統的な郷土料理がおごうさん団子汁です。この地域では「お嫁さん」のことを「おごうさん」と呼び、お産をした女性に食べさせる料理として作られました。
 各家庭で伝承されてきた味で、飲食店で食べることはできません。今回は、農家のお母さんたちで結成されている「生活改善実行グループ」の皆さんに調理してもらいました。
 「昔は栄養を取れるものがなかったから、赤ちゃんを産んだ時に母が作ってくれましたよ。母乳が出るようにって願いを込めてね」と、木村恵子さんは懐かしそうに手を動かします。もち米粉を耳たぶの硬さになるまでこね、男の子は繭の形、女の子は丸の形というように、生まれた子どもの性別によって形を変える風習があります。
 日本各地にあるすいとんや団子汁との違いは、煮立てた汁に団子を入れて火を通すのではなく、団子を別に茹でて調理する点です。茹でて冷水にさらした団子を、季節の野菜がたくさん入った汁に合わせます。白味噌を使った優しい風味の汁をすすると、母のあたたかさを感じることのできる一品。地元の学校給食で提供されることもあり、次世代に伝えたい大切な味です。

冒険の島 馬島

 町の南西部、麻里府海岸から南へ約1㎞の瀬戸内海上には、馬島という小さな離島があります。面積0・7㎡、周囲5・8㎞、人口約30人の小島で、瀬戸内海国立公園の島々のひとつです。名前の由来は、平安時代に馬の牧場として利用されていたため「馬飼い島」と呼ばれたなど、諸説あります。
 麻里府港から公営渡船に乗り、約8分で島に到着。船上には釣りやキャンプを楽しみにきた観光客の姿や、通勤や通学で利用する住民の姿がありました。
 「馬島には観光地化されていない海や素朴な自然が残り、ゆったりとした時間に癒やされます」と語るのは、11年前に移住してきた藤田敬太郎さん。キャンプ場「のんびらんど・うましま」を管理運営しています。
 白い弧を描くビーチ、島で最も高い要害山からの瀬戸内の眺め、潮が引いた時だけ渡れる刎島など、探検心と冒険心がくすぐられます。ぜひのんびりとキャンプをして、夕焼けや星空を満喫してください。
 瀬戸内の温暖な気候に身を包まれて、五感が研ぎ澄まされる田布施町。心の古里を感じる旅に、ぜひお出かけください。

■次回は岩手県雫石町です。

まちのデータ

人口
1万4094人(9月末現在)
おすすめの特産品
いちじく、牡蠣、いちご、低硝酸野菜
アクセス
JR徳山駅から田布施駅まで山陽本線で約30分
問い合わせ
田布施町観光協会
0820-25-3527

いつでも元気 2024.12 No.397