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いつでも元気

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共同組織活動交流集会in岡山

文・武田力(編集部) 写真・野田雅也

実行委員から拍手で迎えられる参加者

実行委員から拍手で迎えられる参加者

 9月29~30日、岡山市で第16回全日本民医連共同組織活動交流集会を開催。2018年の神奈川集会以来、6年ぶりの対面集会に約1700人が参加しました。

 1日目の全体会は、地元の岡山東商業高校書道部のパフォーマンスで開幕。次に岡山県民医連の歴史や友の会の取り組みを紹介する動画が放映されました。
 現地実行委員長の早川髙子さん(倉敷医療生協理事)が歓迎挨拶。集会のテーマ「平和・いのち・人権が大切にされる世界へ」を紹介しながら、「楽しく学んで、しっかり交流しましょう」と呼びかけました。
 岡山県民医連の山本明広会長は、同民医連と「朝日訴訟」の関わりを紹介。「“動く分科会”で現地に行かれる方は、当時の支援者の思いを感じてほしい」と語りました。
 能登半島地震の被災地からの特別報告と指定演題の発表に続き、“テレビで会えない芸人”松元ヒロさんの記念ライブ。平和や人権をテーマにしながら、風刺のきいた軽妙なトークで会場を沸かせました。松元さんが日本国憲法になりきって演じる「憲法くん」も参加者の胸を打ちました。
 2日目は25会場でテーマ別分科会を開き、各地の取り組みを活発に交流。特別分科会と4つの動く分科会もありました。


指定演題一覧

高齢者の通院手段の課題に対する地域連携と取り組みの拡充
群馬中央医療生協 中島 進
前橋市内を走るコミュニティーバスの事業者と連携して、前橋協立病院の利用者の交通手段を確保
西淀川公園ウォッチングのとりくみ
大阪・西淀川・淀川健康友の会 北山 良三
西淀川区の全63カ所の公園を調査し、ベンチや水飲み場の設置、段差の解消などの要望を行政に届ける
ヘルスチャレンジの小中学校への広がり
岡山・倉敷医療生協児島ブロック 中村 富代
生協のヘルスチャレンジを地域の全小中学校に広げ、若い世代とのつながりをつくる
東山ゴルフ場跡地における自衛隊訓練場建設阻止の闘い
沖縄医療生協石川支部 西仲 ゆかり
うるま市のゴルフ場跡地に計画された自衛隊訓練場の建設を超党派の住民運動で阻止


被災地で仲間を増やす

 元日に起きた能登半島地震とその後の支援活動について、石川県健康友の会連合会奥能登ブロックの佐渡麗子さんが報告。地域コミュニティーの再建が急がれる中、9月の豪雨で復興の歩みが止まり、「住み続けられるまちづくりはまさに正念場」と話しました。
 震災直後から避難所へ薬を配達した職員の奮闘や、地域訪問で被災者の要望を聴き取った友の会の取り組みを紹介。今回の豪雨災害でも、直後から泥出しや片付けの支援を始めました。
 佐渡さんは「震災前から群発地震が起きていたにもかかわらず、地域防災計画の見直しが遅れたのは自治体の責任が大きい」と指摘。「引き続き被災者の声を届けながら、いのちと健康を守る組織として友の会の仲間を増やしていく」と決意しました。

収容桟橋の涙
ハンセン病療養所 長島愛生園歴史館

 国がハンセン病患者を強制隔離した長島愛生園の歴史館(岡山県瀬戸内市)を訪問。1930年、瀬戸内海の孤島に開設された同園の入所者は一時2000人以上に。子どもの患者も多く、島内には学校もあった。現在も78人(平均年齢89歳)が暮らす。
 強制隔離の跡は、当時のまま島に。老朽化して崩れかけた桟橋の前で、歴史館学芸員の木下浩さんがこんな話をしてくれた。
 ハンセン病を患い、家から出ることもできなかった少女はある日、母親に「海を見に行こう」と誘われた。小船に乗り島に着いたところで、母から船を下りるよう促される。少女は先に桟橋に下り立つが、母は下りてこない。「母さん、どうして?」。船は静かに岸から離れて行った。少女は置いて行かれたことに気づき、収容後もこの桟橋に来ては涙した。
 患者が船で連れて来られた「収容桟橋」。桟橋から先は家族ですら入ることはできなかったため、別離の場所だった。患者は消毒風呂に入れられ所持品は没収。逃走防止のため、現金は同園でしか使用できない園内通貨に。強制隔離された患者は、死んでも島から出ることができない場合もあった。
 「この場に立ち、強制隔離の恐ろしさが想像でき深く心に響きました。学生たちを連れて来たい」と話すのは健和看護学院(福岡)職員の石迫みどりさん。
 長島愛生園には納骨堂があり、死んでもなお差別されて故郷の墓に入ることもできない3700体を安置。「家族に迷惑がかかるから」と入所時から園内名を名乗り、本名さえ知られることなく亡くなる方もいた。「感染による差別を生み出してはならない」。学芸員の木下さんの言葉が、コロナ禍の今だからこそ重く心に響いた。

野田雅也(フォトジャーナリスト)

戦中に戻った感覚が
戦争遺跡 亀島山地下工場跡

 戦争末期に亀島山(倉敷市)の地下に掘られた全長約2000mのトンネルを見学。トンネルは三菱重工水島航空機製作所(現・三菱自動車水島製作所)が、空襲の被害を避けるため工場を分散疎開、その一つが亀島山地下工場だ。
 「亀島山地下工場を語りつぐ会」の村田秀石さんと吉田弘實さんが案内し、強制労働させられた数千人の朝鮮人によって掘られたことや、2万5000人~3万人が飛行機や武器を作っていたと解説した。
 暗い坑道に入ると、戦中に戻ったような感覚が。参加者から「私の地元にも戦争遺跡があり、見学に行きたい」「戦争の悲惨さを実感した」などの感想があった。

(いつでも元気・福田夏野)

 第3分科会「安心して住み続けられるまちづくり」第4会場では、能登半島地震と防災をテーマに7演題を発表した。
 9月に豪雨災害に見舞われた奥能登の被災地では、家屋の泥出しなど民医連の全国支援が10月11日まで行われた。輪島市の友の会役員、佐渡麗子さんは「あれだけの震災があったにもかかわらず、今回の水害でも備蓄品がなかった。教訓が活かされていない」と話す。
 会場からは「南海トラフ地震など、いつ災害が起きるか分からない。地元に帰ってから、防災に関してできることは」との質問が。「毛布やトイレなど避難所の設備がどうなっているのか、調査してほしい」と佐渡さん。石川県健康友の会連合会の杉本満会長は「石川県の防災計画は1997年から見直されていなかった。皆さんの自治体はどうなっているのか。防災計画を点検することも、安心して住み続けられるまちづくりにつながる」と強調。
 広島、長野、大阪から防災をテーマにした班会の報告があり、分科会座長の眞木高之医師は「共同組織の活動を広げるうえで、防災が突破口になる」と呼びかけた。

(いつでも元気・新井健治)

高齢者の移動手段を確保

 第3分科会第5会場では、高齢者の移動手段確保の課題について多くの報告が。通院だけでなく、買い物や墓参りなどちょっとした移動を支援する活動を紹介した。
 ほかにも地域のまちなみチェックや、駅ホームの危険な設備の改善を要請する取り組みも。また、組合員の増やし方をテーマにした寸劇が注目を集めた。

(民医連医療・森克彦)

PFASへの関心高く

 第2分科会「いのちと人権を守り、環境・福祉を向上」第1会場では、PFAS(有機フッ素化合物)による環境汚染が大きなテーマに。西淀川・淀川健康友の会佃支部(大阪)はPFASの学習会後に血液検査を実施、全員から国際的な基準を超える値が検出された。ほかにも東京、京都が報告。全国で次々と汚染地域が発覚するPFASへの関心は高く、会場は参加者でいっぱいだった。

(いつでも元気・八田大輔)


分科会一覧

■テーマ別分科会
(7テーマで25会場に分かれ261演題を発表)
(1)憲法9条・平和を守る
(2)いのちと人権を守り、環境・福祉を向上
(3)安心して住み続けられるまちづくり
(4)通いの場・居場所づくり
(5)地域まるごと健康づくり
(6)共同組織の“わ”を強め、新たな担い手づくり
(7)民医連職員と共同組織が一緒に進める
■特別分科会
ハンセン病ドキュメンタリー映画
「NAGASHIMA~“かくり”の証言」上映会
映画鑑賞後、宮﨑賢監督の講演と感想交流会
■動く分科会
(バスで4カ所に分かれて見学)
(1)ハンセン病療養所「長島愛生園歴史館」
(2)朝日訴訟の歴史と人間裁判の碑
(3)戦争遺跡「亀島山地下工場跡」
(4)水島の公害と環境再生のまちづくり

いつでも元気 2024.12 No.397