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いつでも元気

いつでも元気

青の森 緑の海

2024年6月、鹿児島県・屋久島

2024年6月、鹿児島県・屋久島

 詩人、八木重吉の作品に、花について書いた短編詩がある(抜粋)。

花はなぜうつくしいか
ひとすじの気持ちで咲いているからだ

 結婚式の会場やお葬式の壇上に、赤ちゃんの誕生祝いに、花はいつも寄り添ってくれる。庭にも咲けば、日々口にする野菜も花があってこそ実を結ぶ。僕たちは花に生かされているようなものだ。
 屋久島では年に一度、5月から6月にかけてヤクシマシャクナゲが咲く。大学時代から何度も通っているけれど、多い年には全山が花で埋もれるような光景が広がる。
 シャクナゲは「石楠花」と書くように、石とつながりのある花だ。写真の岩は花崗岩といい、1300~1400万年前に地下でマグマが固まってできた。2000m近い島の山岳は花崗岩でできているが、これは地殻の変動で隆起したもの。隆起の速度は1000年でわずか1mというから、すごいスケールの話だ。
 山頂部では花崗岩に寄り添うようにシャクナゲが点在し、登山者を迎える。南にある屋久島だが、冬期の山頂は2~3mの積雪がある。
 冬は吹雪に包まれる稜線で生をつないできた花たち。今日は穏やかな天候のなか、遥かな時間を秘めた花崗岩とシャクナゲの楽園で、岩の上のヤクザルたちものんびりと過ごしている。


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。

いつでも元気 2025.5 No.402