ケアマネの八面六臂な日々
最近、東京消防庁から「救急車ひっ迫アラート」がメールで届くケースが多くなりました。救急要請が急増し、救急車の出動件数がひっ迫している時に発令される警報です。
新型コロナが蔓延していた頃は、119番に電話をしても「ツーツー」という音が聞こえるだけで、消防署につながらないことがありました。「電話が通じないから直接消防署へ行き、直談判をして患者を搬送してもらった」という、利用者家族もいました。
ケアマネジャーとして、救急隊員と接することがたびたびあります。隊員はいつも親切ですが、私は1回だけ、叱責されたことがあります。
要介護度4のAさん(91歳女性)は、姪と2人暮らし。50歳代の姪は「ため込み症」※のため、一軒家はゴミ屋敷のような状態です。衣類や食料品、漫画、靴、キャラクターグッズなどが空き缶や空き箱と一緒に、肩の高さまで山のように積まれています。
Aさんが使う介護用ベッドの脇には、まるで“獣道”のように細い通路があるだけ。天井の鴨居を太ったネズミのつがいが走るのを何度も見ことがあります。積まれた荷物の下で、ガサゴソと動く音もします。
ある日、Aさんの状態が悪化し救急車を要請しました。救急隊が搬送できるように、少しでも通路を広げようとAさんに声をかけながら荷物を動かしていました。救急隊員から私の携帯に電話がかかってきて、状況をお伝えした時のこと。何かにつまずき、持っていた携帯電話が飛んでいってしまいました。
放物線を描いて荷物の中に吸い込まれた携帯電話。「もしも~し!」と、何度も隊員の声が聞こえますが、ネズミがガサゴソ動く荷物の中に手を入れて探せません。呆然と見つめているうちに救急隊が到着。家に入って来るなり、隊員から「あなたね~石田さんでしょ? 急に電話に出なくなるとはどういうことですか?」と、強い口調で叱られました。
ひたすら謝るしかない私。事情を聴いた隊長さんが後日、「連続出動で隊員も疲れていました。申し訳ありません」と謝罪をしてくれました。隊長さんとはお互いの大変な状況を共有し、労をねぎらい合いました。
※ため込み症 2013年から新たに加わった病名で、大量にモノをため込む精神疾患
石田美恵
全日本民医連「ケアマネジメント委員会」委員長
いつでも元気 2025.5 No.402
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