青の森 緑の海

2023年12月、新基地建設が進む沖縄県名護市辺野古の埋め立て現場を民間機から撮影
大学時代、ゼミで沖縄戦の聞き取り調査をした。約30年前、まだ明治生まれの方を普通に見かけた頃だ。
ゼミは沖縄国際大学の石原昌家先生の指導で、当時各市町村が取り組んでいた戦災実態調査の一翼を担った。戦争体験者が高齢化し世を去っていくなかで、体験を埋もれさせてはならないと精力的に行われていた。
聞き取りは集落の公民館へ体験者の方々に集まってもらい、いつ、どこで、誰が、どのように亡くなったかを、ひたすら詳細に聞いていく。
僕らが担当した南部地域では、戦争末期に追い詰められた人々の間で手りゅう弾や鎌を使った強制集団死も起きていた。「どのように亡くなったか」までを記録として残す作業は壮絶だった。
「子どもには一度も話したことがない」という、初めて語られる数々の体験談をテープに記録し、夜中の教室でテープ起こしをする時、体験者の声は戦場をありありとその場によみがえらせた。
体験者のおばあさん、おじいさんは調査が終わると、「聞いてくれてありがとね」と笑顔で礼を残し、また背中を丸めて日常へ帰っていった。
証言は各市町村史にまとめられ、沖縄県平和祈念資料館などの展示に活用されている。ゼミ長はその後国連の人道支援局長になり、ひめゆり平和祈念資料館で働くゼミ生もいる。
日常がいつの間にか地獄に変わっていくのが戦争だ。平和は努力なくして維持することはできない。原稿を書いている3月、政府は「台湾有事」を念頭に、沖縄の離島住民を九州や山口県に避難させる計画を発表した。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。
いつでも元気 2025.6 No.403