青の森 緑の海

2025年3月、沖縄本島北部の国頭村
沖縄で最も有名な鳥、ヤンバルクイナ。彼らが〝発見〟されたのは1981年。存在は知られていたが、研究機関が調査して新種として発表した。日本に新種の鳥はもういないと思われていたなかで登場した〝飛べない鳥〟は、世紀の発見として報じられた。
昨年から環境省の依頼でヤンバルクイナの生態を撮っている。興味深いのは彼らの生活圏が森だけでなく、人間の生活圏にもかなり接していること。音もなく歩き回るため、例えばリゾートホテルの裏庭を横断していても気づく人は少ない。畑の隅、人家の裏手、海水浴場の林…。あらゆるエリアを彼らは使っている。つまり、人間生活の影響を強く受ける。
ヤンバルクイナは絶滅の危機にあった。地上生物を餌とした生活、かつ飛べないため、移入されたマングースの格好の餌になってしまったのだ。その後は野ネコ(捨て猫が野生化)による捕食が増え、危惧した「ヤンバルクイナたちを守る獣医師の会」や環境省などが、猫の飼い方指導など基本的なことから取り組み、ようやく個体数が回復してきた。
近年は、餌のミミズなどを通して蓄積されたと思われる車のタイヤ片などが体内から見つかっている。彼らを取り巻く問題は尽きない。今後も継続した保護研究が求められる。
写真は早朝のヤンバルクイナ。捕食者を避けて樹上で眠り、まだ暗いうちに地上へ降りる。今日も無事、朝を迎えた。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。
いつでも元気 2025.7 No.404