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いつでも元気

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まちのチカラ ネパール 多民族国家のコミュニティづくり

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

世界遺産のバクタプル周辺。迷路のような路地を多くのバイクが行き交う

世界遺産のバクタプル周辺。迷路のような路地を多くのバイクが行き交う

120以上の民族と言語が混在する
南アジアの山岳国ネパール。
世界遺産の古都バクタプルや、
多様な食文化が魅力です。
地域を支えるコミュニティラジオも紹介。
人々の笑顔が輝く国を訪ねました。

 私がこのコーナーを担当して約7年。今回は初の海外編です。まずは、ネパールとの関わりを少しだけお話しします。
 私はもともと、コミュニティラジオ(地域密着放送局)の活動をしていました。高校生の時から近くのFM局に顔を出し、20代で長野県東御市の「FMとうみ」設立に参加。東日本大震災では災害ラジオの立ち上げにも携わりました。
 ネパールにはAMARC(世界コミュニティラジオ放送連盟)のアジア太平洋事務局があるため、今回訪れました。ネパール全土で約380のラジオ局が、それぞれ個性豊かな放送をしています。
 ネパールはインドとチベットの間に位置し、世界最高峰のエベレストをはじめヒマラヤ山脈が広がる山岳国。首都カトマンズには、ヒンドゥー教と仏教の寺院が数多くあり、迷路のような市街には多様な文化や民族が共存しています。
 少なくとも120以上の民族と言語を有するネパールで、文化やアイデンティティーの継承に一役買っているのがコミュニティラジオです。
 それぞれの民族の言葉や音楽が、住民の手で放送されています。住民自らが〝まちのチカラ〟を発掘し、発信し、暮らしに役立つ情報で地域をつないでいるのです。ラジオは、民主的なコミュニティづくりの土台となっています。

世界遺産 バクタプル

「ネパール文化の守り手」と言われるネワール族の古都バクタプル。周辺地域一帯が世界遺産に登録され、外国人観光客はライオンゲートと呼ばれる門から入場料を払って入ります。レンガ造りの建物が建ち並び、王宮跡や寺院に施された精緻な彫刻が、異空間へと誘います。
 この土地は歴史的観光名所として貴重なだけでなく、伝統的な陶芸技術が今も息づく生活空間です。乾燥中の陶器がずらりと並び、多くの陶工たちがその腕を競い合っています。
 迷路のような狭い路地には、洗濯をする女性や、野菜や果物、カシミヤの手織物を売る人たちが。デザインも可愛らしくて目を引きます。
 「写真を撮ってもいいですか?」と声をかけると、はにかんだ笑顔でポーズをとってくれました。胸の前で両手を合わせて「ナマステ」と軽くお辞儀するのがネパール流の挨拶。ちなみに「こんにちは」も「さよなら」も「ナマステ」です。

ネパールの国民食

 ネパールの代表的な料理がダルバート・タルカリ。レンズ豆とスパイスのダル(スープ)とバート(ご飯)、そしてタルカリ(おかず)をバランス良く組み合わせた、定食のような料理です。
 ネパールではどこのレストランでも食べられますが、お店によって味に個性があるので食べ比べも楽しめます。
 写真は、世界中から登山家やバックパッカーが集まるタメル地区(カトマンズ)のレストランの一皿。インド料理にも似ていますが、香辛料がやや控えめで私たちにも食べやすく、具材の種類も豊富でとってもヘルシー。素材本来の味と多彩なスパイスの香りが、食べる人の身体も心も温めてくれます。

南アジア初 小さなラジオ局

 ネパールのみならず、南アジアで初めて開局したコミュニティラジオ局がラジオ・サガルマタ。1997年5月に設立され、地域の女性たちの自立を目的としています。ネパールでは伝統的な父権社会やカースト制、貧困や識字率の低さなどが要因となり、女性差別が根強く残っているのです。
 局に22人いるスタッフの半数以上が女性。放送では女性や子どもや高齢者などの問題を取り上げます。ネワリ語、タマン語、マイスリー語、ネパール語の4言語で放送され、英語は使用しません。
 「女性たちが地域を駆け回って人々の声を拾い、それを自分たちの言葉で放送することが彼女たちの自信につながっています」と、マネジャーのウルバシさんは語ります。
 コミュニティラジオ活動には「10%が放送、90%がコミュニティづくり」という有名なスローガンがあります。ラジオ局は地域の多様な声を集める基盤です。世界中のまちにある小さなラジオ局を訪ねることで、そのまちの文化や歴史、人々の思いを知ることができます。

次回は、私が20年間通い続けるインドネシアの島々で生まれた災害ラジオ局と、まちの魅力をお伝えします。ナマステ!