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いつでも元気

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くすりの話 薬価の中間年改定

執筆/金田 早苗(宮城民医連事業協同組合、薬剤師)
監修/野口 陽一(全日本民医連薬剤委員会、薬剤師)

読者のみなさんから寄せられた質問に
薬剤師がお答えします。
今回は薬価の中間年改定についてです。

 「薬価改定」という言葉を聞いたことがありますか。薬価とは国が定める医療用医薬品(医師が処方する薬)の価格のことで、薬価改定は市場での実際の価格をもとに薬価を見直すことです。
 薬価改定の目的は、医薬品費の適正化(削減)と医療の質の向上(創薬イノベーション推進)とされていますが、医療費を抑制するために大半の薬は価格が引き下げられます。患者さんの負担軽減というメリットはあり、今年4月以降に薬代が安くなった方もいると思います。

中間年改定の〝副作用〟

 薬価改定は従来、診療報酬改定と同時に2年に1回行われていました。国はさらなる医療費抑制のため、2021年から診療報酬を改定しない中間年にも薬価を見直すことにしました。これが中間年改定です。
 2年に1回の薬価改定では、市場での実際の価格をもとに、一部の新薬などの特例を除いて大部分の薬価が見直されてきました。中間年改定は当初、市場価格との乖離が大きい品目の改定を目的としていましたが、現在はその本来の目的に反して大規模に改定が行われているのが実態です。
 毎年の薬価改定により、後発医薬品を中心に薬価が下がりすぎたために、製造販売が難しくなるものが出てきました。ここ数年、薬の製造・供給が間に合わず、必要な薬が患者さんに渡らないという状況があります。病院も薬局も、医薬品の確保や供給困難な薬品の対応に多大な労力を費やしています。
 また、病院や薬局では毎年の薬価改定によって、4月1日になった途端、備蓄医薬品の在庫金額が減少します。これが資産価値の減少による経営悪化を招いています。

引き続き深刻な供給状況

 2024年の薬価改定では、医薬品の安定供給の確保を名目に、「不採算品再算定」として製造販売が困難な医薬品の薬価を引き上げました。また、今年の中間年改定では、最低薬価の引き上げ(錠剤で10.1円から10.4円)を行いました。
 しかし、医薬品の供給状況は改善されず、多くの患者さんが必要な医薬品を使えない状況が続いています。中間年改定が医薬品供給問題をさらに深刻にしており、病院や薬局にも多大な負荷をかけています。
 患者さんの負担軽減のために薬価改定は必要ではありますが、いのちと健康を守り、必要な医薬品の安定供給のために、薬価の中間年改定を廃止することが求められます。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2025.8 No.405