まちのチカラ 海外編 インドネシア 活気あふれる東南アジアの楽園
文・写真 橋爪明日香(フォトライター)
スラウェシ島の透明度の高い海で、インドネシアの若者の笑顔が弾ける

若さと活気あふれるインドネシア。
宗教を重んじる心温かい人々と
バラエティー豊かな食文化や
伝統芸能が魅力です。
東南アジアの楽園をご紹介します。
スラマッシアン(インドネシア語でこんにちは)。海外編の第2回はインドネシア。東南アジアの南部にあり、世界で最も多い1万7000以上の島々からなる国です。
300以上の民族が暮らし、人口は2億8000万人と世界第4位。平均年齢は29歳と若く、経済成長著しい国です。渡航するたびに空港や鉄道が新しくなり、騒がしい通りにはお洒落なカフェが建ち、輝く目をした若者たちから発展の勢いを肌で感じます。
私がインドネシアを最初に訪れたのは19年前。2006年のジャワ島中部地震の被災地でした。10年のムラピ山噴火、14年のシナブン山噴火、18年のスラウェシ島地震など、被災地で災害ラジオを立ち上げる活動をしてきました。
インドネシアは日本と同じく地震や津波、噴火など災害が多い国。今年6月にもフローレス島で大規模噴火がありました。災害ラジオは、被災者に必要なきめ細かい情報を提供し、人々の命を守る手段として大きな役割を果たします。また、普段から地域の防災力を高めるためにも役立ちます。
ジャワの文化には「ゴトン・ロヨン」(ジャワ語で集まって持ち運ぶこと)という助け合いの心があります。宗教を大切にし、純粋で温厚な人々との出会いは心が洗われる思いです。
火山とともに生きる
ジャワ島中部、ムラピ山の麓にあるシドレジョ村には、住民自らの手で立ち上げたコミュニティラジオ局リンタスムラピFMがあります。大勢の村人が集うラジオ局は農家のスキマンさんの家にあり、スタジオは2階です。
約4年に一度は噴火するムラピ山の火口から4㎞の地点で、スタジオの窓からは火口付近の様子が一目瞭然。変化があればすぐに放送ができるようになっています。危ないから村ごと避難するようにと忠告されますが、スキマンさんは「火山の恵みと共にある暮らしが心地がよく、先祖代々から伝わってきた生きる知恵がある」と語ります。
ラジオ局では次の災害に備え、村の経済力を高める特産コーヒーの製品化や、ガムラン演奏などジャワ伝統芸能の振興も行われています。村人の楽しみであり、生活を良くするための場でもあり、火山と共に暮らしていくための知恵として親しまれているのです。
甘い、辛い、塩辛い料理
インドネシア料理は、ジャワ島の「ジャワ料理」やスマトラ島の「パダン料理」など民族ごとに個性豊かですが、主食は米でスパイス多めが特徴です。
日本でよく知られているのはナシゴレン。インドネシア語で「ナシ」は「ご飯」、「ゴレン」は「油であげる」という意味があり、チャーハンに似ています。一皿の中に甘い、辛い、塩辛いなど様々な味がして胃袋が南国になります。
旅をしていてよく見かけるのはテンペ。大豆から作る発酵食品で、見た目は平らにした豆腐のよう。栄養価が高く食感が肉に似ているので、宗教上、肉を食べない人もタンパク質がとれる食材です。
また、イスラム教の影響で豚肉やお酒は禁じられています。ラジオの事務所でカレーを振る舞おうとしたことがあるのですが、日本から持ち込んだカレールーには動物性原料が入っていて現地スタッフが食べられませんでした。ハラル食※の基本を知っておくとよいでしょう。
伝統芸能バリ舞踊
最後にご紹介するのは世界中から多くの観光客が訪れるバリ島。首都ジャカルタがあるジャワ島の東に位置します。サーフィンやダイビング、スパなどアクティビティーがたくさんありますが、伝統芸能のバリ舞踊をぜひご覧ください。
若い少女が優雅に踊る宮廷舞踊のレゴンダンス、男性の「チャッチャッ」という掛け声とともにラーマーヤナ※の物語を演じるケチャダンス、善と悪の戦いを表現したドラマチックなバロンダンスなどスタイルはさまざま。海岸や王宮の舞台で、主に夕方から夜に舞います。目を左右に大きく動かす独特の表現や、指先の細かい動きに心を奪われます。
ダンサーは子どもの頃から厳しい訓練を受けます。島北部のロビーナという町にある舞踊家ルースの自宅で、50人の少女が熱のこもったレッスンを受けていました。「バリ舞踊はヒンドゥー教の宗教儀式と深く結びつき、神々への奉納として踊る神聖な舞。あなたにも祝福がありますように」とルース。神々の島と言われるバリの神聖な世界に誘われます。
多様性、活気、可能性が凝縮されたインドネシア。みなぎる大地のエネルギーをあなたも受け取ってください。
◇
次回は兵庫や長野のコミュニティラジオを紹介します。テリマカシ!(インドネシア語でありがとう)
※ハラル食:イスラム教で食べることが許されている食品
※ラーマーヤナ:ヒンドゥー教の聖典の一つで、古代インドの大長編叙事詩
いつでも元気 2025.8 No.405
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