ケアマネの八面六臂な日々
私の古里は、群馬県桐生市です。数年前まで父の介護で、週末に東京から往復200㎞の道のりを車で通いました。高速道路を降りて国道50号を走ると、目の前に〝裾野は長し赤城山〟(上毛かるたから)が見えてきて、古里に帰ってきたと感じます。
その桐生市で2023年、「生活保護違法事件」が発覚しました。ある男性の生活保護利用者が、「毎日ハローワークに求職活動に行く」という条件付きで1日1000円を窓口で手渡されていたそうです。1カ月の支給額はわずか3万円ほど。生活が苦しいと、男性が「反貧困ネットワークぐんま」に相談して発覚したそうです。
このことを契機に、桐生市の福祉事務所の犯罪まがいの実態が浮き彫りになりました。「職員が利用者のハンコを1948本も保管し無断で押印していた」「利用者に対する恫喝や罵声は日常茶飯事」など、市の実態を知れば知るほど心が痛くなりました。
自治体窓口で相談した際、職員が生活保護を申請させないようにする〝水際作戦〟が有名です。桐生市はこの水際作戦に加え〝硫黄島作戦〟を行っていました。
硫黄島作戦とは聞きなれない言葉ですが、旧日本軍が米軍を硫黄島に上陸させた上で迎撃した作戦にちなみ、生活保護を決定してから辞退届を出させたり、転居をさせて保護を打ち切ることを指します。
この結果、桐生市の利用者は2011年のピーク時のわずか半分程度まで落ち込みました。私もケアマネジャーとして、生活保護利用者と一緒に窓口に相談に行くことがあります。桐生市のケアマネは、きっと大変な思いをしてきたでしょう。
違法事件を調べた市の第三者委員会の報告書にも驚きました。職員が公文書偽造などの犯罪を犯しているのに、「驚き」とか「驚愕」とか、なぜこんな生ぬるい表現でしか報告書を書けないのかと怒りを覚えました。
寝る間も惜しんで利用者を支援してきた反貧困ネットワークぐんま代表の仲道宗弘さんは、昨年3月に急逝されました。その遺志を継いで頑張っている同ネットワークの方々や、地元の群馬民医連の奮闘にエールを送りたいと思います。
石田美恵
全日本民医連「ケアマネジメント委員会」委員長
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