青の森 緑の海

2024年9月、徳之島の天城町
徳之島(鹿児島県)のトンボ博士として知られる「岡ちゃん」こと岡崎幹人さんと森を歩いた。天城町役場に勤めながら、自然保護員として活動している島の有名人だ。
岡ちゃんは研究者やメディアを案内するだけでなく、学校観察会にも力を入れている。彼が虫網をひと振りすると、見たこともない虫が手品のように網の中から現れるのだから、子どもたちはもう夢中だ。
さて今回の目的は夏のクワガタ。徳之島にはトクノシマノコギリ、トクノシマヒラタ、トクノシマコクワなど、さまざまな固有のクワガタが住んでいる。隣島の奄美大島とよく似た環境なのに全然違う形態の昆虫もいて、興味は尽きない。岡ちゃんの眼はとても鋭く、次々と昆虫や植物を見つける。
南の島々には地元特化型の生きもの博士が必ずいて、毎回感動させられる。岡ちゃんの場合、トレッキングコースの管理などもしているため、ほぼ1年365日森を巡回する。
その定点観察が膨大なデータベースとなって、彼の頭の中に蓄積されているのだ。それをもとに、環境省のスタッフと連携して島の自然環境保全に奔走している。地域の自然は、こうした縁の下の力持ちのような人たちによって保たれているのだろう。
写真は夜に現れたヤマトサビクワガタ。脇腹についた蟻の大きさでわかるように、成虫でも体長15~20㎜と超小型のクワガタだ。体表には金色の細毛がびっしりと生えていて実に美しい。岡ちゃんとの出会いとともに、徳之島で忘れられない出会いのひとつとなった。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学生の時、顔見知りのホームレス男性が同世代の少年に殺害されたことから 「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。写真集に『神人の祝う森』『SEDI/ セヂ』など。
いつでも元気 2025.9 No.406
