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いつでも元気

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くすりの話 長期収載品に対する選定療養

執筆/髙宮 栄佑(群馬保健企画 あおば薬局渋川店、薬剤師)
監修/野口 陽一(全日本民医連薬剤委員会、薬剤師)

読者のみなさんから寄せられた質問に
薬剤師がお答えします。
今回は長期収載品(後発医薬品のある
先発医薬品)に対する選定療養についてです。

 昨年10月から長期収載品を患者が希望する場合、選定療養の対象として保険外費用の「特別の料金」を徴収する制度が導入されました。
 導入の背景には、超高齢社会により医療費の負担が年々増加しており、その抑制のためと政府は説明しています。保険制度を維持するために、より安価な後発医薬品の使用を推し進める一環として、医療上の必要性がある場合を除き、選定療養としての追加料金を設けた制度です。 結果として、国で負担するべき医療費を個人に押し付ける形となっています。制度が始まり、さまざまな問題点が出ています。

新たな料金が発生

 薬の使用感(薬の味など、直接薬の効果に影響がないもの)で先発医薬品を使用していた方は、後発医薬品へ変更するか、特別の料金を支払い先発医薬品の使用を継続するかを選ばなければなりません。
 選定療養の特別の料金は、後発医薬品と先発医薬品の薬価の差額の4分の1の金額になります。負担額の計算が複雑で、金額をすぐに計算できません。

薬の供給が不安定に

 この制度によって後発医薬品の需要が急激に高まったことで、医薬品の供給不足が悪化する問題も出ています。さらに、先発医薬品を製造・供給する企業が撤退し、安定供給品目が失われる事態も出ています。製造中止や供給停止となった医薬品も少なくありません。

「特別の料金」がかからないケース

 以下の4つのケースでは「医療上の必要性」として先発医薬品を使用しても、特別の料金が発生しません(厚労省HPより)
①先発医薬品と後発医薬品で、薬事上承認された効能・効果に差異があり、疾病の治療のために先発医薬品を処方する必要がある場合。
②患者さんが後発医薬品を使用された場合に、副作用やほかの薬との飲み合わせによる相互作用が生じたり、先発医薬品との間で治療効果に違いが出るなど、安全性の観点から先発医薬品を処方する必要がある場合。
③各学会などが作成しているガイドラインにおいて、先発医薬品を使用している患者さんについては後発医薬品へ切り替えないことを推奨しているような場合。
④剤形上の違いにより、後発医薬品の調剤が難しく、先発医薬品を処方する必要がある場合。
 「特別の料金」がかからないケースには処方箋にその旨の記載が必要になるので、まずは医療機関に相談をしましょう。制度が変わっても安心して治療を受けられるよう、私たち薬剤師がしっかりサポートします。

◎「いつでも元気」連載〔くすりの話〕一覧

いつでも元気 2025.9 No.406